環境産業労働常任委員会(2024年3月18日) 石川たえ府議の知事質問
・賃上げ支援について
◆(石川たえ委員) 日本共産党の石川たえです。
まず、賃上げ支援についてお聞きをいたします。
委員会で、直接賃上げの支援となる制度の創設を求めましたが、大阪府の支援策として挙げられたのは、中小企業に対し、テイクオフ支援事業による新事業展開、デジタル化の推進など生産性の向上に資する支援、下請取引の改善、新たな取引先の開拓などでした。生産性の向上や販路拡大支援はあるものの、賃上げそのものへの直接支援を大阪府は行っていない、このことが明らかになったと思います。
大阪商工会議所と関西経済連合会が今年の二月に行った調査結果を見ていますと、中小企業では六割強が、事業改善はないが賃上げを実施する、こう回答されています。名目賃金は上がっていますが、実質賃金が下がり続ける中で、中小企業はそれでも、業績がマイナスであっても賃上げの努力を今続けておられると思います。だからこそ、ここへの大阪府の支援が必要です。下がり続ける実質賃金を上げていくためにも、大阪府として賃上げへの直接支援制度を創設すべきだと思いますが、知事の見解を求めます。
◎知事(吉村洋文) 従業員の賃金は、会社の経営の中で使用者が支払うものでありますことから、賃金の引上げに対する直接の支援制度の創設は考えておりません。
ただ、賃金の引上げに向けては必要だと私も思っていまして、先月、大阪政労使の意見交換会に出席もいたしまして、その中で経済団体に対して賃上げの要請も直接お願いをしたところです。
物価と賃金双方が持続可能なものとして好循環で上がっていくということを実現していくためには、府において、生産性の向上、それから販路拡大の支援、そして下請取引の改善等を通じて、中小企業自らが稼ぐ力をつけて、そして継続的で持続的な賃金引上げが可能になるような支援に引き続き取り組んでまいります。
◆(石川たえ委員) 中小企業が稼ぐ力をつける、そのための支援をするということは大事なことだと私は思っているんです。ただ、賃金は使用者が払うものというのは当然私も分かっていますけれども、賃金を上げてあげたいけれども上げられへんというふうに悲鳴を上げている事業所もいっぱいあるわけですよね。なので、賃上げは必要やというふうにおっしゃるんでしたら、やはり販路拡大や生産性の向上という稼ぐ力の支援だけではなくて、直接賃金が上がる仕組みを大阪府として取らなあかんというふうに思うんですけれども、直接支援は必要ないというふうに知事はお考えなんでしょうか、教えてください。
◎知事(吉村洋文) 補助金等で直接賃金を上げるということは、多分、持続可能ではないというふうに思います。やはり企業自身が生産性を向上したり、あるいは、そういった持続可能な賃金の引上げができるという体制を支援していくことが重要だと思っています。ですので、生産性向上、販路拡大、下請取引の改善等々、様々な施策を投じながら、中小企業も含めて賃金が持続的に上がっていく社会ということの支援をしてまいりたいと思います。
◆(石川たえ委員) みずほリサーチ&テクノロジーズが公表した試算の中では、二〇二二年度から二〇二四年度の三年間の物価高騰により、二〇二一年度と比べた二〇二四年度の年間家計負担が二人以上世帯で一世帯当たり約二十八万円増える、こういうふうに記されておりました。負担額は当然年収によって異なってまいりますが、物価高騰が家計を直撃していることは明らかです。だからこそ、今、賃上げは欠かせません。なぜ、直接的に賃上げにつながる支援に取り組まないのか不思議でなりません。
持続可能な賃上げというのは必要だとは思いますけれども、今、最賃も上がっていますので、業務業績が悪くても賃上げしようと頑張っておられるところを一時的にでも救ってあげるというのは、やはり持続可能という意味では必要なことだというふうに私は思います。お願いばっかりを繰り返していても賃金が上がっていくわけではありませんし、賃上げの効果もありません。実際、実質賃金は下がり続けているわけです。今度の春闘で軒並み増額、こういう報道もされていますけれども、中小企業での賃上げ、他県に比べて多いと言われる非正規労働者の賃上げが、やはり今、大阪独自の課題だというふうに私は思います。
中小・小規模事業者からも、人材確保・定着を進める上では賃上げが必要だというふうに声も上がっていますが、同時に、自社の努力だけでは賃上げは困難という声もあるわけです。なので、岩手県や山形県のように、一時的にであったとしても、賃上げを進めようと頑張る事業所に対して直接の賃上げ支援はやっぱりやるべきだと私は思うんですが、再度聞きます。これはやってもらうことはできないでしょうか。
◎知事(吉村洋文) 賃上げは必要だと思っておりまして、いろんな場面でも私からも直接の賃上げの要請も当然していますし、また今後もしてまいります。また、要請するだけじゃなくて、企業自身が結局は最後は払うものになりますので、その企業が賃上げできる体制を整えていくということが非常に重要だと思っていますから、生産性の向上であったり販路拡大であったり様々な支援策を今後も取ってまいりたいというふうに思います。
補助金で賃金を支援するというのは持続可能ではないというふうに僕は思っていますし、企業自身がやっぱり稼ぐ力を身につけて、そして賃上げは必要なんだという認識の下で賃上げをしていくという社会にしないと、なかなか持続可能にはならないんじゃないかと。持続可能にしていかなければ、最後はやっぱり行き詰まってしまいますので、きちんと持続可能な賃上げができるような社会、そっちを支援していきたいと思います。
◆(石川たえ委員) 持続可能と繰り返されていますけど、そこは私は別に異論は全然ないわけで、持続可能な賃上げにつなげていかないといけないと思いますけど、今のお話を聞いていると、じゃ、岩手県や山形県は持続可能というふうに考えてないのかというふうに疑問も持ってしまいますので、それはちょっと失礼な話かなというふうに思います。新事業や技術革新、また、新たなイベントやインフラ整備を行えば府民所得が上がるというこのやり方は、バブルの以前に既に通用しなくなっております。中小・小規模事業所の営業への支援をもっと強める必要があると私も思いますけれども、併せて賃上げへの直接支援は今や政治の仕事だというふうに思いますので、ぜひ直接賃金が上がる仕組みについても御検討いただきたいと思います。
・奨学金返還支援制度について
◆(石川たえ委員) 次に、奨学金返還支援制度についてお聞きをいたします。
中小企業庁発表の中小企業白書二〇二三には、物価高により中小企業は収益減少等の影響を受けている、エネルギー・原材料価格の高騰による企業業績への影響は、二〇二〇年比で、大いにマイナス、マイナスを合わせて六五・二%と二五・六ポイントも増えていることが書かれておりました。
委員会でも申し上げましたが、長引く物価高騰の中で業績低迷と苦しむ小規模事業所が、それでも人材確保にと、今年度、一千社登録していただいたというのは、まさに奨学金返還支援制度が多くの皆さんに待たれていたということで、非常に重要なというか、大事なことだなというふうに思っていますし、評価もしております。
二〇二四年度の登録企業の目標が倍の二千社としていることも非常に大事だなというふうに思っていますが、ただ、最大五十万円のイニシャルコスト支援だけでは奨学金本体の返済にまでは進みません。収益減少の影響を受けている中小企業をはじめ小規模事業所が本体返済をし続けるのは、やはり困難が伴ってまいります。せっかく継続していただいたんですから、さらに拡充をすることが必要だと思います。本体返済に届くよう上限額の拡充を行うべきではないでしょうか、教えてください。
◎知事(吉村洋文) 奨学金の返還支援制度を導入する促進事業についてですが、まさに企業の制度導入を促進するために、そのインセンティブとして導入時に係る負担軽減を図るものであります。令和五年度、実施をいたしまして、目標としていた千社に近い企業から申請がございました。来年度、新年度においては、予算を倍増いたしまして二千社を目標に取り組むこととしています。
企業は、奨学金の本体についても自ら従業員の支援をしていこうというところが手を挙げてくれています。奨学金の返還支援を持続可能なものとしていくためには、やはり企業自身が継続的かつ自主的な取組として実施していただくということが重要だと思います。ですので、府としては、奨学金そのものに対する支援ではなくて、奨学金返済を支援する企業を支援して増やしていこうというふうに考えています。
◆(石川たえ委員) 委員会でも申し上げましたけど、やはり一千社の登録の中で多かったのは、従業員五人以下の事業所だったというふうにお聞きをしました。従業員五人以下の事業所さんなので、やっぱり本体の支援をしていくという意味では、ちょっと苦しいねんというお話も私も当然聞かせていただいているところです。
企業さんを応援するということを別に否定もしませんし、企業さんがその応援で奨学金の返済をしていけるようになるというのは大事なことですけれども、今、大学生の約半分が奨学金を借りると言われているときに、本体の返済につながっていかなかったら、そもそも奨学金返還支援制度の目的として人材確保と若者応援というふうに掲げているんですから、若者の応援につながっていかないというふうに思いますので、引き続き返還支援制度の拡充は求めておきたいと思います。
・PFOA問題について
◆(石川たえ委員) 次に、PFOAについてお聞きをいたします。
委員会でも申し上げましたが、PFOAは、昨年、WHOのがん専門機関である国際がん研究機関で、最も発がん性のあるランクグループ一に指定をされました。ヒトでの疫学調査で、PFOS・PFOA製造使用施設労働者に前立腺がん、膀胱がんの可能性が今示唆されております。健康被害が不安という住民の声に応えて、全国どこよりも基準値以上のPFOAが検出された大阪府こそが、血液検査を行い、被害状況をつかむべきだと思いますし、それが国の指針を確立することにもつながってまいります。希望する住民全てを対象に、健康医療部との連携の下に血液検査を行うべきだと思いますが、知事はいかがお考えでしょうか。
◎知事(吉村洋文) PFOAについては、現在、国において、水環境、そして飲料水の暫定指針値の見直し作業中であります。府としてもその議論を注視していますが、それとともに、国に対しまして早期に指針値を設定すべきだということを要望しているところであります。これは引き続き要望してまいります。
委員御指摘の血液検査に関してですけれども、これは国でも専門家会議で議論されておりまして、現時点において、どの程度の血中濃度でどのような健康影響が生じるかについては明らかになってはいない、そのために、血中濃度に関する基準を定めることも、血液検査の結果のみをもって健康影響を把握するのが困難だということが国の専門家会議でも指摘もされているところでもあります。まずは、PFOAの指針値がまだ決定されていませんから、早期にこれを決定してもらいたいというふうに思っています。
◆(石川たえ委員) PFOAを含むPFASは、自然環境の中で分解することがほとんどないと言われており、永遠の環境汚染化学物質とも呼ばれております。メカニズムが解明されていないからこそ、解明するために生体検査というのが必要になってまいります。血中濃度でどのような健康影響が生じるかについては明らかになってない、こういうふうにおっしゃいますけれども、アメリカ十万人規模での研究では、腎臓がんと血液中のPFOA濃度が関係していることも報告をされています。明らかになっていないというふうに国が言うのであれば、なおのことPFAS汚染による健康調査を進めるべきではないでしょうか。
現在、一般社団法人農民連食品分析センターでは、水・土壌汚染は農地と人体に影響すると、全米アカデミーズが健康に影響のおそれと評価した七成分を対象に検査を開始しています。この中にPFOA、PFASも入っています。
大阪PFAS汚染と健康を考える会は、現在、健康被害を明らかにしていくために一千人のモニタリング調査を行っています。どの会場にも健康不安を抱える住民が血液検査に訪れておられます。これは市民や民間団体がやるべきことなんでしょうか。本来は国や大阪府が率先してやるからこそ知見が確立されていくわけです。国や行政が動かないから、不安を抱える市民や団体が自主的に行っている、これでは行政の責任を果たしているとは言えません。住民の健康不安に大阪府は一体どう応えていくつもりなのか、教えてください。
◎知事(吉村洋文) 大阪府は、これまで、地下水の水質調査を実施する等をしてきたり、あるいは、企業に対して連絡会議を設置して情報公開を求めたり、様々な対策を取ってきているところですが、府民の健康を守ることは最も大切なことだと思っています。その中で、これはまだ指針値がありませんので、国が、健康との影響、因果関係を早く解明して、そして指針値を早期に設定すべきだというふうに思っています。その要望も行っているところです。ここは引き続き国に対して強く働きかけをしていきます。また、府民に対して正確な情報の発信をしてまいりたいと思います。
◆(石川たえ委員) 国の専門家会議の議事録は、私も読ませていただきましたけれども、健康被害についてはまだ明らかでないということが繰り返されるばっかりで、どうやって明らかにするかという議論はほとんどされてないんですよね。そんな中で、やっぱり不安やという方が現におられるわけですし、大阪府内のPFOAが大量に検出された地下水で農作物を作っておられた方のPFOA血中濃度は非常に高かったわけですよ。だから、国待ちにならないで、国に要望するだけではなくて、やはり大阪府が率先して知見を確立するための調査に乗り出すべきだというふうに思いますし、企業にも言っておられるというふうに言われますけれども、ダイキン工業は、結局、遮水壁は作りましたけれども、敷地内の調査結果も明らかにしていませんし、敷地外の住民に対する調査もやるとは言わないわけですから、やっぱりこれも関係の会議をやっているだけでは進んでいかないというふうに思っています。
PFASは全部で四千七百種類以上あるというふうに言われています。熱に強く、水や油をはじく性質から、フライパンや化粧品にも使われています。府民を健康被害から守っていくためにも、知見を確立するためにも、ぜひ大阪府が積極的調査をすることを求めて終わりたいと思います。ありがとうございました。
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