教育常任委員会(2019年10月18日) 内海公仁府議の知事質問
◆(内海公仁君) 日本共産党大阪府議会議員団の内海です。
冒頭、教育長より発言がありましたけれども、私は、委員会の冒頭で、神戸の事案について、これは決して他人事ではないという思いを持って指摘もさせていただきました。今回、こういう形で報告をされたことを、本当に憂慮を持って考えているところでございます。いずれにしても、子どもたちの現場でさまざまな教師間のトラブル、こういったことがある背景というのは、それぞれお互いに人と人がゆとりと余裕を持って、お互いにリスペクトする精神を持って取り組みを進めていくということがいかに大事かということを改めて思っておりますので、よろしくお願いいたします。
・チャレンジテストについて
◆(内海公仁君) では、知事に質問させていただきます。
チャレンジテストの問題点を委員会の中で幾つか指摘させていただきました。特にチャレンジテストをもって府の評定平均を示して、学校ごとのチャレンジテストの平均点と比較して各校の評定平均を算出し、そのプラスマイナス〇・三以内の範囲に生徒の五教科の評定平均をおさめる、それをパソコンソフトを用いて、現場では事実上機械的な数字合わせのようなことが行われているという実態もあります。しかも、テストのない他の教科についても、府の評定平均を用いて内申点を操作する。これはほかの県では見られないものであり、公平性の担保といいながら、実際には学校ごとの不公正を拡大するものであること、そしてそのことによって子どもたちの間で分断が起こり、教育の現場で苦労されている教員の権限に介入し、教員の意欲を失墜させるという弊害が出ております。
私は、委員会の中で、行政が行うテストが教育の権限を侵すものという過去の判例なども紹介して、チャレンジテストを内申の評価に関連づける行為は、教育基本法や地教行法で示された行政施策としての教育への介入になる危険があると指摘をさせていただきました。
知事は、こうした過去の司法の判断などについてどのように受けとめているか、その認識についてお伺いいたします。
◎高等学校課長(大久保宣明君) 先般の教育常任委員会で委員にお示しいただきました昭和四十四年二月十九日の仙台高裁の判決には、生徒個人の成績評価は、まさに具体的教育活動に属し、担当教師のみがなし得る事項であり、教育行政機関に許されるところではないといった言及があるといったことは承知しております。これは、当時の全国一斉学力調査を、文部省が地方教育行政の組織及び運営に関する法律に基づいて行う行政調査とした点については疑問がある、こういったことを説明する中で触れられたものであり、全国一斉学力調査の実施が教育の権限を侵す違法なものと判断したものではないと認識しております。
一方、昭和五十一年五月二十一日の最高裁における旭川学力テスト妨害事件の判決におきましては、教育行政機関が、法令に基づき、教育の内容及び方法に関して、許容される目的のために必要かつ合理的と認められる規制を施すことは、教育基本法第十条、これは現行の法律では十六条に当たりますけれども、この第十条一項にいう教育に対する不当な支配には当たらないというふうにされております。
大阪府において実施しておりますチャレンジテストを、公立高等学校入学者選抜における調査書評定の公平性の担保に活用することについては、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第二十一条第四号に規定される府教育委員会の権限に基づき行っております。具体的には、選抜に用いる調査書の評定について、府域の中学校における評価の基準自体のぶれによる極端な絶対評価を是正するものであり、中学校の評価活動を制限するものとは考えておりません。また、チャレンジテストへ参加するか否かについての判断を市町村教育委員会へ確認して実施しておりまして、実施手法としても必要かつ合理的な範囲を逸脱するものではないというふうに考えています。
これらのことにより、チャレンジテストの実施及び入学者選抜における活用は、委員お示しの教育への介入には当たらず、府教育委員会に許容された権限の範囲であると考えております。
◆(内海公仁君) 今の話はそれでいいと思うんですけど、知事の認識を伺いたいと思います。
◎知事(吉村洋文君) 先ほど課長からも説明があったとおり、法の解釈はそのとおりだと思います。チャレンジテストについては、法の解釈においても、もちろん府教育委員会に許容された権限の範囲内で実施されているものだというふうに認識もしていますし、そのチャレンジテストが果たしている目的においても有意義なものだと僕は思っています。
◆(内海公仁君) 先ほどの答弁にも、極端な絶対評価の問題というのが言われておりますけれども、果たして何が極端なのかということを実際に立証している、あるいはこのことが極端な事例ですということも示されていない中で、私は、まさに学力テストを使って教員の評価を変更させるという、極めて教育の現場に介入するおそれのある行為であるというふうに思っております。
そこで、現場の声をひとつ紹介させていただきたいと思います。大阪市の校長会が昨年実施したチャレンジテストに関するアンケートに記載された内容です。
我々が携わっている学校の教育そのものが信用されていないようで不快でなりません。教育とは、本来、広範囲で子どもを育てるという視点が必要であるのに、学力ばかり、五教科の点数を上げることばかり重視されているように感じます。また、別な意見では、根本的に義務教育の場に競争の原理を働かせようとする新自由主義的な考え方は誤りである。また、別な答えは、所属した学校で割合が決められるなど、教育の根幹を揺るがすような愚策がなぜ市議会や国会などで取り上げられないのか、噴飯物である。このような声を吉村知事はどう受けとめておりますか。
さらに、生徒の間では、ふだん成績のよくない子どもが、団体戦としての学校平均点が下がるのを恐れてみずからテストを受けない、欠席をする。あるいは、周りから、おまえはテストの日休め、こう言われる。テストの後で、自分のテストのできが悪かったことを友達にわびる。支援学級に通う子どもたちも、テストを受けない子どもが出たりする。こうした現場の実態や声を知事はどう受けとめますか。
◎知事(吉村洋文君) チャレンジテストについて、僕の市長時代の話もありました。僕自身は、学力というのをそれぞれの個性に合わせて伸ばしていくというのは重要なことだというふうに思っています。家庭環境であったりさまざまな環境があって、学力も違うし個性も違う中で、全員が百点を目指すというのはできないと思いますが、それは目指すべき必要もないと思いますが、例えば三十点の子は三十五点を目指していく、八十点の子は八十五点を目指していく。自分の学力を少しでも高めていく努力をするというのは僕は非常に重要なことだと思います。
その中で、こういったチャレンジテストはやっぱり経年で見ていくことが大事だと思います。単発じゃなくて経年で見ていく。どのぐらい伸びたか、自分の弱いところはどこなのか、そして全体の中で自分はどのぐらいの位置にいるんだろうか、そういうようなことを知りながら、次への努力にも変えていく。僕はそういったことが必要だと思っています。
そして、これは教員のほうにも、何が強くて何が弱いのかというのを客観的に把握をし、例えば教員自体も、ここの教え方は伸ばす力があるけども、ここはこの教員は弱いよね、そういったことも僕はきっちり分析すべきじゃないのかなというふうに思っています。僕は、さらにそこにこの伸びを教員の評価、校長の評価に入れると言って大激論をして、今もこれは松井市長が後を引き継いでくれていると思いますが、恐らくそういった中で、委員の御紹介のあった校長先生の意見なんかも出てくるんだろうというふうに思っています。
ここでは教員評価の点はちょっと置いておきますけども、いずれにしても、チャレンジテストというのは、それぞれの子どもが、自分がどれぐらいの位置にい、そして経年でどうなっているのか、弱点はどこなのか、そして少しでもできる体験をできるだけ積み重ねていく、そういうこともこれから社会に出たら必要な力になってくると思います。知識だけじゃなくて、そういう経験というのが、これから大人になったら全く知らない世界に飛び込んでいって、そこには競争もあったりするわけですから、そういったところで生き抜く力を身につかせるというのも、学校での重要な役割なんじゃないのかなというふうに思っています。その意味でも、チャレンジテストというのは必要だと思っています。
◆(内海公仁君) 今の知事の発言の中でも、三十点が三十五点を目指すとかいう話がありましたけれども、結局、点数で物事をはかろうという感覚自身だけが先行してしまうということが危険だと思います。大阪府下の全部の小学校や中学校の校長先生や、あるいは現場の先生に、このチャレンジテストの問題についてアンケートをとるように教育委員会にもぜひ指示をしていただけたらと思うんですが、いかがでしょうか。
◎知事(吉村洋文君) 学校の現場にも僕も行きまして、話をしました。学校の先生としては、やっぱり学力を上げたいという思いが一定程度共通しているんじゃないのかなというふうに思っています。もちろんそうじゃない考え方の先生方もいらっしゃるかもしれませんけども、多くの先生は、子どもたちの学力を上げたい、そのための環境を整えてほしい、そして自分たちも努力していきたいというのが大半の先生方の考え方なんじゃないのかなと思っています。そういったときにも、やはり指標となるものというのは必要になると思いますので、このチャレンジテストというのを実施していきたいと思います。
アンケートというのが適切なのかどうかわかりません。先ほど委員の御指摘があったとおり、これはアンケートをして多数決で決めていくようなものなのかなというふうにも思いますし、全体で見れば、みんなで仲よく何もしないというような勢力が強くなれば、それは努力をしないということにもなってくると思います。アンケートをするかしないかは教育委員会が判断することで、僕の範疇ではないとは思いますが、僕自身は、このチャレンジテストというのは必要だと思っていますし、今後も維持継続していくべきだと思います。一部の声の大きな校長先生がいるのも事実だと思いますが、子どもたちの学力を上げる、生き抜く力を身につけるということ、子どもたちのほうを向いた行政をやりたいと思っています。
◆(内海公仁君) 問題点がいろいろ指摘されて批判の多いチャレンジテストを、今後さらに小学校五年生や六年生にも拡大するという問題が今言われております。しかも、それによって新たな全体費用の枠組みが拡大されることになります。今年度までのチャレンジテストの経費は大体年間三億程度だったんですが、これが今後見直しの後の全体像でいうと、委員会の中では教育庁は想定額は示されませんけれども、議論の中では五億円かかるというような議論があったやに聞いております。こういう状況が、財政の使い方として果たして必要なのかどうか。五億円ですよ、知事。どう考えていますか。
◎知事(吉村洋文君) 非常に大きな負担だと思います。でも、その大きな負担をしてでも子どもたちのためにやってやりたいと思っています。
これは小中学校なので、僕の基本的な考え方は、やっぱり基礎自治体の首長であったりその教育委員会が一生懸命やるべき事項だと思います。府は公立高校を持っていますから、公立高校であったり大学であったりに力を入れていくべきだというふうに思いますが、もちろんバックアップをしていく必要がある。その中でどの範囲をバックアップするかという議論の中で、やはりこのチャレンジテストについても一定、大阪府全域でどのレベルにあるのか、どういった状況にあるのか、どこが強いのか弱いのか、あるいはどこを改善すべきなのかというのがわかるように、その指標となるものを府が率先してやっていくということは重要だと思うし、五年、六年とやるのは、さっき申し上げたように経年で見ていく。それぞれ子どもは個性がありますので、その子どもがどう伸びているのか、そうじゃないのかというのが把握できるように、学力の絶対の上限じゃなくて、学力の伸び、ここを僕はぜひ注目をして、そして注力をしていきたい部分です。
なので、五年生のチャレンジテスト、六年生は学テも活用しながらということで、予算は必要となりますけども、大阪の子どもたちの学力全体の引き上げ、生き抜く力を身につける、そういった視点からぜひこれをやっていきたいというふうに思います。
◆(内海公仁君) 知事、市町村の問題をそういうふうに言うんでしたら、なおさら小学校にチャレンジテストを導入することは、まさに市町村に押しつけるような話ですから、やるべきじゃないということを改めて指摘しておきたいと思います。
・支援学校の教育環境について
◆(内海公仁君) 次に、支援学校の過密問題についてです。
支援学校の施設は、委員会で紹介したように、今現在も過密状態が続いています。ところが、これに対して昨年三月に教育庁が策定した基本方針では、四つの項目に沿って、今後ふえると見込まれる児童生徒、千四百から千五百の対応としていますけれども、特にその項目の中の特別教室の転用や通学区割りの変更で四百人、あるいは知肢併設などによって三百人の増加に対応する、このこと自身が、まさに今の過密状態をさらに悪化させるものだと思っております。
今対応すべきことは、新設校の数を大幅にふやすなど、抜本的な方針の見直しが大切ではないかと私は考えておりますが、知事の考えをお聞かせください。
◎知事(吉村洋文君) 知的障がいのある児童生徒の増加への対応については、府立支援学校における知的障がい児童生徒の教育環境の充実に向けた基本方針を定めておりますので、それに沿って教育庁において昨年度以降、順次検討、実施をしているところです。
知的障がい支援学校の新校整備を含めて、同基本方針に盛り込んだ対応策について、スピード感を持って取り組んでいきたいと思います。
◆(内海公仁君) ですから、今の基本方針では、このままでは今現在の過密問題を解消することにはならないということをぜひ改めて認識していただきたいなと思っております。
しかも、この新校の設置に当たっては、府教育庁は、数値基準などの示されていない文科省の示す特別支援学校施設整備指針や、これまでの学校を設置した経験値などで対応すると言われておりますけれども、ぜひこの際、特別支援学校の設置基準、数値なども示された設置基準を、これは国が持ってないんです。国に対してそういうものを持たせることを知事として要望されてはどうかなと思うんですが、いかがでしょうか。
◎知事(吉村洋文君) 国が設置基準を持っていないということですけど、持っていない理由も重要でして、国においては、この支援学校において、児童生徒の障がいの状況等によって必要な環境が大きく異なるだろう、だから施設の設置基準を一律に設定することは困難という考え方を示しているところです。
府においては、こうした国が策定した特別支援学校の施設整備指針等、こういったことも踏まえた上で、児童生徒の障がいの状況に応じて必要な環境を整備しているところです。
◆(内海公仁君) 結局この設置基準をきちんと持たれてないことが、現実に今の深刻な特別教室の転用の問題とか、廊下を改造してそこを教室とかいろんな施設として使うとか、こういう状況になっているんですね。ですから、その問題の背景を正していくということが私はぜひ必要だというふうに思っております。
新校の設置が、今の方針では二校程度、六百人程度の対応でしかないという状況を見るにつけて、これでは本当に支援を必要としている子どもたちの教育環境を整えていくことの府の責任は果たされないというふうに思っております。ぜひとも今後の伸びの状況を、今後また見直しの段階もありますけれども、それをうまく活用して、本当に子どもたちに最善の施設、教育環境を提供するという立場で取り組みを進めていただきたいということを切に要望して、私からの質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
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