長野県の「脱ダム」宣言、中小企業支援と健康福祉施策
"伝わる県政改革の意気込み"
日本共産党府議団視察記 小林隆義
日本共産党大阪府議会議員団は7月23日から2日間、長野県の中小企業施策、ダム建設問題、福祉保健制度などについて調査しました。
建設が中止になった浅川ダム予定地や天井川部分などを視察し、説明を受ける日本共産党府会の視察団
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23日は、「中小企業支援センター」で県の経済政策、県庁で「脱ダム」宣言の経過や公共事業の入札適正化などの説明を受けました。建設が中止された浅川ダム予定地や天井川になっている部分などを視察しました。
「中小企業支援センター」で感じた特徴は、県単独事業として新規事業を多く取り組んでいることです。専門家(民間)のコーディネーターを多く配置し、建設業者などの新分野への事業展開、創業支援などをすすめています。商品化・販路開拓の支援でも、昨年からアドバイザーを配置して地域企業が連携して提案型企業グループの育成を支援しています。中小企業の経営再建支援でも専門家による再生計画や事業継承への支援がおこなわれています。
公共事業では、入札契約の適正化を促し、公共事業への県民の信頼を確保するため「入札適正化委員会」を設置。談合しにくい入札方式として「受注希望型競争入札(事後審査・郵送方式)」を試行、過去3年間に比べ落札率が8%減ったそうです。同時に低入札問題があり、その「調査基準価格」「失格基準価格」を設定しています。「納税者が求める透明度・競争性・客観的・公正公平な入札制度」「いい仕事をする業者が報われる入札制度」を改革理念としてすすめているとのことで、意気込みが感じられました。
ダム建設中止については、「脱ダム」宣言が01年に表明され、長野県治水・利水ダム検討委員会が開かれ、答申ではほとんどの河川がダムによらない治水・利水総合対策をとっています。ダム中止となった浅川についても、「ダムによらない河川改修」として、天井川部分の河川改修もすすめられています。
「脱ダム」宣言には、「河川改修費用がダム建設より多額になろうとも、100年、200年先の我々の子孫に残す資産としての河川・湖沼の価値を重視したい。日本の背骨に位置し、数多い水源を擁する長野県では出来る限り、コンクリートのダムを造るべきはない」と宣言されており、その理念が伝わってきました。
森林事業では、担い手を養成する事業とともに、今まで活用されていなかった木材も一流デザイナーにより家具としてブランド化し、学校施設の机・いすに導入するなど県産材の活用を促進。自然をどう生かし、活用していくのかということを考えさせられました。
24日は健康づくり計画について説明を受け、県ぐるみでの活発な保健活動に驚きました。日本初の組織とされる保健指導員が各地で養成され、保健師と協力して保健指導などを展開しています。こうした取り組みが、健康にたいする住民の意識向上に大きく役立っているようです。
「保健・医療・福祉の連携、生涯学習を通じて地域社会が連携し、住み慣れた家庭や地域で安心して暮らせるまちづくり」をめざす保健活動が、1人当たりの老人医療費を日本で最も低く抑え、「健康長寿」の長野県をつくりあげていると感じました。
今回の視察で、長野県政がダム中止など大型公共事業の見直しで大きな借金を新たにつくらず財政再建をすすめ、少人数学級や健康福祉、中小企業支援に力を入れていることがわかりました。
松代地下壕へ
最後に戦争遺跡「松代大本営地下壕群」を視察。本土決戦のために秘密裏につくられたこの地下壕は、総延長10`b余あり、まずその大きさに驚きました。建設のために強制連行された約7千人の朝鮮人が動員され、非人間的な飯場生活のために栄養失調で多くの方が死亡しましたが、軍の機密として資料も消されているとのこと。平和な社会を伝えるためにも、埋もれた真実を明らかにすることの重要性も感じました。
(府会議員)