「府議会個人情報保護条例」及び「『人生会議』推進条例」への態度について
2022年12月20日
日本共産党大阪府議会議員団
政調会長 うち海 公仁
12月20日の大阪府議会本会議で、「大阪府議会の保有する個人情報の保護に関する条例」(以下「府議会個人情報保護条例」)と「いのち輝く人生のため『人生会議』を推進する条例」(以下「『人生会議』推進条例」)が採決され、わが党は反対しましたが賛成多数で可決されました。
「府議会個人情報保護条例」は、プライバシーの侵害や基本的人権尊重の後退、住民生活への悪影響など多くの重大な問題があります。
同条例は、昨年国会でデジタル関連法が成立し個人情報保護法が改定(以下「改定法」)されたことに従って、府議会で提案されたものです。改定法は、各自治体が持つ子育てや教育、介護や健康などの住民の個人情報を、個人を識別できないように加工さえすれば本人同意なしに民間企業など第三者に提供できるとしています。そのために、各自治体が設けてきた個人情報保護の規制を「データ流通の支障」だとし、個人情報の外部提供やオンライン結合禁止除外などを「共通ルール」として自治体に強制するものとなっています。
同条例は、「共通ルール」の適用対象から議会が外されているにもかかわらず、改定法の内容に則る内容となっています。請願署名や傍聴者名簿など、府議会も住民の個人情報を保有しており、これらの外部提供を可能とすることは大きな問題です。
府議会には現在、「大阪府議会個人情報の取扱い及び管理に関する要綱」があり、個人情報の収集の制限、目的外利用などの制限、マイナンバーを含んだ個人情報の利用の制限などが盛り込まれています。これらの原則を踏まえた、府議会として個人情報を保護する条例の策定こそ必要です。
「『人生会議』推進条例」で述べられている「人生会議」とは、望む医療やケアについて前もって考え、家族等や医療・ケアチームと話し合い共有する取り組みとされています。家庭や家族、個人の生き方そのものに関わる重大かつ繊細な問題で、また認識や考え方については社会全体でまだ定まっていない部分もあり、慎重な議論と合意形成が必要です。現時点で「推進条例」として制定することは性急です。
同条例は、附則第2条で普及啓発の目標や達成時期を定めるとしていますが、目標の具体的内容が明確でなく、設定の仕方によっては行政による家庭や個人の生き方への介入となってしまう懸念があります。また、第3条3項で学校やPTAと連携し児童生徒への普及啓発を行うとしていますが、教育内容への介入、教育現場の自主性の侵害につながる恐れがあります。
医療や介護を巡っては、現在、いくら望んでも必要最低限の医療や介護さえ受けられない状況が広がっています。これらの抜本改善と住民負担軽減こそ政治にとって急務です。
今回の2つの条例制定に当たっては、府民へのパブリックコメントも議会での質疑も行われていません。「府議会個人情報保護条例」と同様の条例制定を進めている他自治体の多くがパブリックコメントを実施しており、また「『人生会議』普及啓発条例」を制定した大分県議会もパブリックコメントを実施しています。
府民生活に関わる条例制定に当たっては、議員提案条例であっても、少なくともパブリックコメントの実施、議会の開かれた場での少数会派も加えた議論を行うべきです。
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