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大阪でのコロナ「第4波」 府民の命を守るたたかい

日本共産党大阪府会議員 石川多枝(吹田市選出)

 「今からでも国へ医師、看護師の追加派遣要請を」「『第5波』に備え重症病床500床確保を」「高齢者施設等の集中的検査、モニタリング検査、変異株スクリーニングの抜本拡大を」¦5月31日、大阪府議会本会議で私は吉村洋文知事に要求しました。
 ところが知事は、医師と看護師の追加派遣要請は「国も無尽蔵に派遣できるわけではない」と菅政権を擁護、病床確保は「検討する」と述べるにとどまり、検査に至っては現在の能力で十分という消極的な答弁に終始しました。
 新型コロナ「第4波」は、大阪において全国的にも突出した感染急拡大を引き起こしました。今なお“医療崩壊”と命の危機が続いています。事態を招いた大きな原因が、感染者を保護し治療する医療体制、そして感染を早期に発見し保護する検査体制の不十分さにあることは明白です。
 大阪府に今求められていることは、「第4波」を防ぎきれなかった教訓を科学的知見に立脚して導き出し、さらなる感染から命を守る具体策を策定、ただちに実行することです。


1 大阪の「第4波」感染急拡大と“医療崩壊”

■全国でも突出した感染拡大
 府内の新型コロナ陽性者は昨年からの累計で10万人を超え、府民の88人に1人がすでに感染したことになります。死者は2、382人にのぼり、全国の2割近くを占めます(6月3日現在)。
 とりわけ「第4波」の拡大は、「第3波」までとは比較にならない速さと激しさで、甚大な被害をもたらしました。主に大阪市内と中河内地域(東大阪市、八尾市など)から広がり始めた「第4波」は、瞬く間に府内全域、関西へと拡大しました。
 療養者はピーク時で2万1千人を超え、「第3波」の3・4倍です(図1)。人口当たりの死者数は「第3波」を超え、全国の3倍以上にのぼっています(図2)。
 クラスターが多発し、門真市の老人ホームでは入所者と職員61人が感染、施設定員の3分の1に当たる14人の入所者が死亡しました。豊中市の新田(しんでん)小学校では児童13人、教職員22人が感染しました。



■“医療崩壊”
 病床はたちまちひっ迫しました。とりわけ人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)による治療をおこなう重症患者が急増し、4月13日には実運用(すぐに入院できる)病床数を超え、あふれた重症患者を中軽症患者病床で治療せざるを得ないという異常事態となりました。重症患者は最大時449人にのぼりましたが、さらに、人工呼吸器などの治療が必要にもかかわらず病床不足で受けられなかったため重症患者に数えられない“隠れ重症患者”が多数いたとも報告されています。
 自宅で療養している人が最大時には療養者の9割以上、1万8千人以上にのぼり、そのまま自宅で重症化し亡くなる例も相次ぎました。老人ホームなどの高齢者施設でも、感染者が出た場合はその施設内で療養することを余儀なくされ、感染拡大と死者の増加につながりました。救急車を呼んでも搬送先が見つからず、大阪市内で患者を乗せたまま丸2日間待機し続けた例さえあります。
 コロナ病床のひっ迫は通常医療も大きく後退させました。府内で3次救急を担う16医療機関のうち3医療機関は、3次救急の受け入れを停止せざるを得ませんでした。
 「患者を適切な治療の場で治療できない状態が大阪中で発生しており、すでに『医療崩壊』」(4月15日・大阪民主医療機関連合会緊急声明)-これが4月から5月にかけての大阪の紛れもない姿でした。


2 維新府政のコロナ対策

■少なすぎる医師・看護師派遣要請
 “医療崩壊”が現実のものとなりつつあった4月22日、私たちは緊急に、重症患者に対応する医師や看護師などの数千人規模での派遣を政府に要請するよう、府に申し入れました。国会でも山下よしき、清水ただし議員をはじめ、大阪支援が繰り返し要請されました。
 ところが、「第4波」を通じて府が国に派遣要請したのは看護師75人、医師に至っては1人だったことが明らかになりました。この理由を吉村知事に質問したところ、「病院から派遣してほしいという要望がなかったから」という驚くべき答弁が返ってきました。
 入院できずに重症化、死亡に至る例が後を絶たない状況下で、1人でも多くの命を救うためには、国と府が自ら医師や看護師を確保し病床を増やすことこそが必要です。維新府政がその主体性を持たず、府民の命を守る立場に立っていないことが明白となりました。

■重症病床削減を指示
 さかのぼって、「第3波」による緊急事態宣言解除の要請を決めた2月19日の府対策本部会議では、すでに専門家会議委員から変異種の危険が指摘されています。実際にその3日後には府内で英国からの変異株が確認されました。
 ところが府は、3月1日の緊急事態宣言解除と同時に、感染者受け入れ病床を減らすよう各病院に指示を出していたのです。近畿大学病院の東田有智院長は「これで戻したら次増やせませんよ」と指摘したにもかかわらず、減床を指示されたといいます。
 その結果、223床あった実運用(すぐに入院できる)重症病床は、すでに「第4波」が拡大していた4月1日まで減らされ続け、156床にまで減少しました(図3)。府はあわてて増床を指示しましたが到底間に合いませんでした。
 増床のやり方も、十分な財政補償もせず、中軽症受け入れ病院へ「重症化した場合も貴院において入院を継続」するよう指示し、「正当な理由なしに協力に応じなかったときは勧告」と脅すなど、極めて高圧的でした。

■無症状者への大規模検査を否定
 「無症状者検査を拡大して感染を抑える戦略は完全に破綻してる」-吉村知事のツイート(3月20日)です。この間、吉村知事は一貫してこの立場に固執し、検査拡大に背を向け続けてきました。私たちの追及や国の一定の変化などを受け、最多で1日2万件程度まで府内の検査件数は増えたものの、この検査への消極姿勢こそが「第4波」急拡大を許したポイントです。
 吉村知事のこの姿勢の背景にあるのが、「PCR検査は不正確」「大規模にやれば偽陽性を増やし医療崩壊」「感染抑制にはならない」などとした厚労省の意見です。実際、検査拡大を求めた私の質問に対し、吉村知事は「無症状で患者との接触歴がないという感染リスクが低い方に対して一律に検査を行うということについては、国の分科会でも推奨はされていない」(府議会健康福祉常任委員会・20年12月15日)などと、厚労省流の意見を検査抑制の根拠にしていました。
 府は最近、新型コロナ「検査体制整備計画」改訂版を公表しました(5月11日)。しかし、今後の検査需要をこれまでの最⼤件数の1割増程度までしか見込まず、すでに「需要を満たす検査能力を有している」として、抜本的な検査体制拡充はしない方向です。高齢者施設等の集中的検査で見つかった陽性者は全国の半分以上を占めているにもかかわらず(図4)、「7月以降も続けるかどうかはワクチン接種の進捗(しんちょく)状況などを踏まえて判断する」などとしています。繁華街などでのモニタリング検査は「感染兆候を掴(つか)むことが困難」、変異株スクリーニングも、府内ではほぼ英国からの変異株に置き換わっているので今後は一部に限定して実施する、としています。
 「第4波」の犠牲を繰り返さないためには、このような検査計画では全く不十分です。

■遅れに遅れる「営業時間短縮協力金」
 繰り返す自粛要請で、府民生活も大阪経済も疲弊しきっています。とりわけ中小業者の経営危機は深刻です。
 府は、昨年4月の緊急事態宣言の際、補償を求める府民の声に押され、休業要請を行った事業者への「休業要請支援金」と、休業要請の対象ではないが大幅減収となった事業者への「休業要請外支援金」を設けました。しかしいずれも対象は府内事業者の4~5軒に1軒に過ぎませんでした。
 今年の2度の緊急事態宣言でも、「営業時間短縮協力金」1期~6期が設けられています。しかし、1期分(今年1月中旬~2月上旬の分)でさえ、申請した5万7千件のうち1万2千件はまだ支給されておらず(6月2日時点)、「支給される前につぶれてしまう」と業者から悲鳴が上がっています。ちなみに審査業務を委託されているのは(株)パソナです。
 一方で、4月から府は飲食店の感染対策をチェックする「見回り隊」を発足させています。2億円の予算をかけ民間委託していますが、飲食店からは「そんなカネがあるなら協力金支給に人手と予算を回して」と不満の声が上がっています。


3 党府議団の取り組みと成果

■12回166項目の申し入れと成果
 党府議団(私と内海公仁府議)は昨年初頭以来、国会議員団や市町村議団、党府委員会コロナ対策本部と連携しながら対策に全力を挙げてきました。
 昨年1月、初めて府内在住者への2次感染が確認されるや、私たちはただちに吉村知事へ最初の申し入れを行いました。
 以後12回に渡り、医療体制や保健所体制の強化、検査の拡大、くらし・雇用・営業への支援、子どもと教育現場へのケアなど、のべ166項目の申し入れを行ってきました。昨年4月の申し入れでは、検査センター設置や医療機関への減収補填をはじめとした計2千億円の緊急対策を、財源も示し提案しました。また「第4波」が急拡大していた今年4月7日には、重症病床400床確保などの緊急対策を求めました。
 これらを通じてかちとった成果は極めて重要です。
 昨年3月時点では1日当たりわずか180件程度に過ぎなかった府内の検査能力は、現在約4万件まで拡充されています。当初は感染症指定医療機関の78床のみだったコロナ受け入れ病床は、ようやく重症・中軽症合わせ2千床を超えました。十分ではないものの保健所の保健師など職員増員、検査機器導入がおこなわれました。「休業要請支援金」「休業要請外支援金」が設けられ、事業者への直接給付に道を開きました。現在受け付け中の、飲食店のアクリル板パーテーションやCO2センサー設置の補助制度も、党府議団が要望して実現したものです。
 国会でも問題になった、感染者を受け入れた病院への国の交付金は、大阪では2020年度分が3月末時点で6割しか府から病院に支払われていないことが明らかになりました。私が再三議会で追及した結果、5月末にようやく全額支払われました。

■光る党府議団の値打ち
 今年の2月府議会で共産党から本会議一般質問に立った内海公仁議員(東大阪市選出)は、クラスター発生件数に占める医療・福祉施設の割合が大阪では極めて高いことを示し、高齢者施設等の集中的検査を4月以降も継続し、入所施設従事者に加え利用者や通所施設、医療従事者へも拡大することを要求しました。吉村知事は消極的な答弁しかしませんでしたが、その後、高齢者施設等の集中的検査は国の動向なども踏まえて4月以降も継続されることになりました。
 この2月議会は、1月からの緊急事態宣言が解除されたものの、英国株が大阪でも検出され「第4波」拡大も囁かれるもとでの議会でした。17人の議員が本会議一般質問を行いましたが、内海議員を除くほとんどの議員は、万博誘致や道路建設などコロナそっちのけの質問に終始しました。
 維新、自民、公明が議席の9割以上を占める府議会で、2人の党府議の奮闘が、コロナ禍にある府民の命綱となっています。


4 「第5波」食い止めるために

■医療体制立て直しを
 感染力が英国株の1.5倍といわれるインドからの変異株が大阪でも発見され、今夏にも「第5波」の感染が拡大するといわれています。安全・迅速なワクチン接種が重要ですが、それだけでは到底間に合いません。
 確保した重症病床をはるかに上回る重症患者が発生した「第4波」の失敗を繰り返さないためには、重症病床を現在より減らさず上乗せし、少なくとも500床を確保することが必要です。府専門家会議委員の倭(やまと)正也・りんくう総合医療センター感染症センター長もそう提言しています。
 十分な財政支援とセットで、中軽症病床や宿泊施設の確保、自宅療養者への24時間往診体制を医師会などと協力して構築することも不可欠です。保健所の強化も欠かせません。

■大規模検査戦略こそ
 「第4波」が峠を越えた今こそ、検査への消極姿勢を改め、次の感染兆候をいち早くつかみ、感染者を発見・保護するための大規模検査戦略を立て推進することが必要です。
 高齢者施設等の集中的検査を7月以降も継続することはもちろん、通所施設や利用者、医療従事者、教職員、保育士に拡大することが必要です。
 モニタリング検査は府内で1日500件程度のキット配布にとどまっています。感染の兆候をいち早くつかむために、府内各地の繁華街や駅頭などで最低1日2万件程度は実施すべきです。
 新たな変異株の感染状況を把握するために、インドからの変異株のスクリーニング検査をただちに引き上げ、陽性者の全件に実施することも急がれます。英国株は民間検査機関の協力も得て陽性者の6割程度まで実施しており、全件実施は可能です。

■十分な補償と生活支援を
 「見回り隊」による監視や過料による脅しで飲食店などに休業を押しつけるやり方は、感染対策としてもマイナスです。「営業時間短縮協力金」を事後審査制にするなどですみやかに支給し、飲食店以外でも減収となっている全ての業者への支援制度を、国にも要請し大幅に拡充すべきです。
 リストラや雇い止め、非正規労働者の休業手当不支給などの実態調査や、収入が減少した非正規労働者への返済不要の給付金支給なども求められます。

■子どもと教育現場のケアを
 子どもを感染から守るために、1人でも感染者が出た場合の児童生徒を含む全員検査の実施や、清掃・消毒を徹底するスタッフの増員などが必要です。
 国立生育医療研究センターなどが昨年11~12月に実施した「第4回コロナ×こどもアンケート」によると、小学4年生以上の15~30%に中等度以上のうつ症状があったとされています。大阪は独自の少人数学級を実施していない数少ない県ですが、コロナ禍で学びと成長を保障するためには、国に先駆けてせめて小学校全学年でただちに実施することが急務です。

 昨年以来、自らのコロナ対策への反省も検証も拒み続ける菅政権と維新府政の責任は重大です。
 「これ以上誰一人、コロナに命を奪わせない」、この決意を胸に、国と府の姿勢を転換し対策を強化するため頑張ります。



「議会と自治体」2021年7月号より



   


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