大阪の“医療崩壊”危機打開を 共産党府議団長 石川多枝さんに聞く
石川多枝府議 |
“医療崩壊”の危機にひんする大阪。府民と医療の現状は、そして打開の方向は-石川多枝・党大阪府議団長に聞きました。
-大阪は連日1千人を超える新たな陽性者が発生しています。
石川 依然として極めて広範な感染が続いています。感染者急増から医療体制が逼迫(ひっぱく)し、まさに大災害級の緊急事態です。
-亡くなる人が増えています。
石川 重症者の増加はこれからです。何よりも命を守る対策が急がれます。
しかし、救急搬送の受け入れ病院も極めて不足していて、救急車の中で最長47時間待機した例もあります。出動できる救急車がないという事態まで起こっています。
-重症患者数が重症病床数を大きく上回っています。
石川 27日時点で69人の重症患者が重症病床に入れていません。本来は重症患者に対応していない中等症用病床に入ったままです。
「重症患者1名受け入れは中軽症10床の減につながる」といわれ、中軽症病床も逼迫しています。介護施設では感染者が出ても施設で対応せざるをえず、医療行為も十分にできないままみとるしかないという状況さえ起こっています。
医療機関は疲弊
-深刻ですね。大阪府はコロナ病床を増やそうとしているのですか。
石川 吉村知事は、病床逼迫を医療機関が受け入れないせいにし、「急がない手術はやめろ」「他の病棟を閉鎖してコロナ患者を受け入れろ」と迫るばかりです。
「受け入れたくてもスタッフが足りない」と言う医療機関の悲鳴には耳を閉ざしたまま、「あなたの病院は○床受け入れを」と指定し、応じなければ「勧告」をちらつかせ、強制的に病床確保を迫るありさまです。
感染者受け入れ医療機関への支援も十分ではなく、国が出す補助金も滞っています。
-それではますます医療機関は疲弊しますね。打開策はあるのでしょうか。
石川 何よりも重症患者に対応する医療スタッフが数千人規模で緊急に必要です。そのためには府だけでなく国の役割がカギです。東日本大震災時に全国から340隊1500名が派遣され救命に当たったDMAT(災害派遣医療チーム)や自衛隊なども大規模に活用すべきです。
さらに、近畿圏外へも含めた重症者の搬送・受け入れ体制をとること、休眠・休止病床の活用や仮設施設で中軽症病床を確保することなどが急がれます。
-自宅療養の方が死亡されたと聞きました。
石川 すでに何人も亡くなっています。自宅療養者は全療養者の8割を占め、本来は入院すべき方が多いと思われます。医師会にも要請し24時間往診できる体制を急いで構築するべきです。
府は自宅療養者にパルスオキシメーター(動脈血酸素飽和度測定器)を配布していますが、高齢者などが数値の悪化に気づかず重症化するケースもあります。
業者からは悲鳴
-“医療崩壊”を防ぐためには、感染そのものを抑えることが必要では。
石川 その通りです。府の対策は、緊急事態宣言に基づく自粛呼びかけ、休業・時短要請が中心です。時短に従わない飲食店は「見回り隊」が摘発し、法令罰則を適用するなどの追い込みをかけます。「マンボウ(まん延防止)やなくて辛抱や」「頑張ってきたけれどもう無理」と業者からは悲鳴が上がっています。
感染拡大すれば緊急事態や自粛、収束に向かえば解除の繰り返しです。これではいつまでたっても感染拡大は抑えられません。
-どうすれば感染を抑え込めますか。
石川 ワクチンは有効ですが、普及まではかなりの期間がかかる見込みです。抑え込みのカギを握るのは戦略的な大規模検査の実施です。
クラスターが多発し重症化や死亡につながっている高齢者・障がい者施設で、入所者も含めた全員・定期検査が必要です。保育所や学校でも行わなくてはいけません。併せて、市中感染を抑える「いつでも誰でも何度でも検査を受けられる」体制を整えることが必要です。
出かける前に検査する、陰性の人だけ出かける、感染していない人は自由に行動できるようにする。これで経済活動を再開させることができたのが北九州市の経験です。
-大阪でなかなか検査拡大が進まないのはなぜでしょうか。
石川 「PCR検査は不正確で、むやみに広げると医療崩壊につながる」という誤った意見に知事自身がとらわれていると思います。
この意見を発信した厚労省は現在では検査拡大にかじを切りつつあり、大阪府もその指示の範囲では増やしつつありますが、まだ全く不十分です。
-これからの決意を。
石川 私たちは、昨年以来12回にわたり府に対策を求め、宿泊療養施設の設置や高齢者等施設での定期検査、自宅療養者への食事配達などを実現しました。
今、党派や立場の違いを超えて知恵を結集し、連帯して危機打開に当たる時です。1人でも多くの命を守るために引き続き頑張ります。
|