コロナ 第4波の大阪どうする 大規模検査今こそ
大阪は今、深刻なコロナ「第4波」危機のさなかにあります。現状を招いた大きな要因の一つが、大阪府が検査に消極的な姿勢を取り続けてきたことです。日本共産党大阪府議団事務局長の大西哲氏に寄せてもらいました。
厚労省内部文書と分科会「提言」
背景には、日本共産党の志位和夫委員長が公開した厚労省内部文書(2020年5月)があります。
「PCR検査は多くの偽陽性・偽陰性が生じる」「感染抑制に役立たず、かえって医療体制を圧迫する」など誤った議論が日本で行われ、換査拡大への重大な足かせとなっています。この誤りが厚労省によって発信されていたことが、内部文書によって明らかになりました。
この内部文書に沿う内容で、政府コロナ対策分科会は提言「検査体制の基本的な考え・戦略」を出しました(20年7月16日)。そこでは、PCR検査で実際に感染している人のうち陽性と判定される確率を「70%程度」とし、無症状者への検査拡大は「偽陰性者が無自覚に感染を広げる」「不要な措置入院等を行うことになる」などとしています。また「膨大な検査を実施しても陽性者は僅(わず)か」「感染防止に対する効果も低い」「検査に係るコズトが膨大」などと、検査拡大の「デメリット」が強調されています。
「提言」根拠に検査拡大拒否
大阪府が、検査拡大を拒み続ける最大の根拠としたのがこの政府分科会の「提言」です。
高齢者・障がい者施設従事者への定期検査を求めた日本共産党の石川多枝府議に対し、吉村洋文知事は「無症状で患者との接触歴がないという感染リスクが低い方に対して一律に検査を行うということについては、国の分科会でも推奨はされていない」と答弁しました(府議会健康福祉常任委員会、20年12月15日)。また府幹部職員も、「国の分科会では、一斉検査が検査の効率性、偽陽性の問題等があって、感染対策として必ずしもベストの方策ではないという御意見も出ている」(同12月9日)、「(医療や検査の)資源には限りがあるので誰でも彼でも検査するわけにはいかない」(共産党府議団の予算要望の場、21年1月22日)と口をそろえて発言しています。
政府分科会「提言」が念頭にあることは明らかです。
今年に入り、国がようやく検査拡大の方針を示し、大阪府も国に従う形で高齢者・障がい者施設従事者への定期候査を始めています。しかしその後も吉村知事は、広島での無症状者検査で陽性率が0.06%と「少ない」ことを理由に無症状者への検査を否定するなど、検査拡大自体に消極的な立場をとり続けています。
吉村知事のこの立場の大本には、橋下徹・元維新の会代表の主張があります。
世界的なコロナ感染紘大が始まった昨年初頭から橋下氏は「検査の感度、特異度、偽陽性率、偽陰性率などをしっかり前提に置かないと空騒ぎになりますね」(橋下氏のツイッター、20年2月27日)などと「PCR不正確」論を声高に唱えてきました。最近でも「任意の大規模調査や有病率の低いところへの大規模検査は感染拡大抑止の効果が低いことがわかる。前者は無症状感染者を捕捉できない。後者は検査で有病者を見つける以上に偽陽性者を作り出してしまう」(同21年2月9日)などと、厚労省流の検査抑制論を振りまき続けています。
否定されている「PCR不正確」論
今年2月に政府専門家の会議に提出された報告書には、PCR検査を行う国内施設を調査した結果、陽性検体を陽性と判定する確率は96.4〜99.8%だったと述べられています。「70%程度」とはかけ離れた精度です。
日本医師会の有識者会議特別チームなどでは、感染していない人を陰性と判定する確率は99.99%以上とされています。
感染抑制という点でも、昨春の「第1波」でクラスターが多発した東京・歌舞伎町で、大規模集中検査を実施したことで陽性者数が減少したと政府対策本部会議で報告されています。「提言」の第2版を決定した政府分科会でも、アメリカで高齢者施設に週1回全員検査をすると感染抑制につながるというデータが発表されたことに触れ、「『(無症状者への検査拡大で)感染制御に成功したエビデンス(根拠)はない』と言い切っていいのか」と疑問が呈されています(20年10月29日)。
「PCRは不正確」「大規模にやれば偽陽性を増やし医療崩壊」「感染抑制にはならない」などという議論は今や完全に否定されています。いまだにこの立場に固執し、大規模検査に背を向け続ける吉村知事の姿勢は極めて特異かつ重大です。
今こそ大阪府は、重症患者の命を守ることに全力を挙げると同時に、「第4波」を抑え込む戦略的な検査拡大に打って出るべきです。
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