出口の見えないコロナ禍の下、生命と暮らしを守る大阪府の広域的役割が切実に求められています。しかし、示されている新年度の施策と予算案は極めて不十分です。
感染防止、医療・福祉の強化
■ 全国で最も深刻なコロナ禍
クラスターの発生件数(2月8日までの累計)
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陽性者の死亡率(2月8日まで)
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府内の感染者は累計5万人に近づき、死者は1千人を超えています。クラスター発生件数に占める医療機関と福祉施設の割合は68%を占め、全国と比較しても極めて高く、深刻な犠牲につながっています(図表)。学校でもクラスターが頻発しています。
病床逼迫(ひっぱく)率(使用数/確保数)は、最高で重症79・2%、中軽症75・3%、宿泊施設も60・7%まで達しました。
府民への自粛がほぼ1年間呼び掛けられ続け、緊急事態による営業時間短縮が繰り返され、府民も事業者も疲弊しています。
吉村洋文知事は「経済を守る」と緊急事態宣言解除に積極的姿勢を示していますが、解除後に感染拡大を防止する対策はなく、府民個人の責任に押し付けられているのが実状です。
新年度の予算と施策では、大幅に強化するべきコロナ対策が、ほとんど前年度からの事業の継続にとどまっています。重症化する前に早期発見・早期保護を行うための検査体制の大幅拡充、医療機関の減収を補填し経営を支える財政支援、介護施設など福祉施設の従事者確保のための施策が緊急に必要ですが、新年度の予算措置は図られていません。
■ 検査の抜本拡充を
検査体制は、地域外来・検査センター、診療・検査医療機関、ドライブスルーやスマホ検査センターなどを合わせ、1日約1万6千のキャパシティとしています。しかし検査対象を症状がある人に事実上限定し続けてきたため、実際の検査数は最多でも1日8千~1万件にとどまっています。
2月末から3月末まで、高齢者施設などの無症状者を含む検査が実施されます。この間、共産党が求め続けてきたものですが、対象が従事者と新規入所者に限定されていること、政令市と中核市は除外されていることなど、改善を求める必要があります。
2次医療圏ごとの地域外来・検査センター数、
保健所管区ごとの診療・検査医療機関数
2月9日現在。地域外来・検査センターは受診調整機能付きのもの。検体採取特化型の地域外来・検査センターは府内に21か所。
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また、感染拡大地域などで幅広く無症状者を発見、保護するための検査は全く進められていません。
変異種の遺伝子解析を行う体制整備を急ぐべきですが、大阪健康安全基盤研究所の運営費交付金はほぼ前年度並みです。
■ 医療機関の減収補填を
既存の支援策では「コロナ患者を受け入れるほど経営が悪化する」という現場の声に応えるものになっていません。にもかかわらず、新年度の新たな事業は、重症病床の追加整備(15億円)のみです。コロナ受け入れ医療機関への経営支援と併せ、後方支援として協力している医療機関を始め一般クリニックや歯科医院への減収補填、経営支援策が求められます。ワクチン接種が始まりますが、医療機関へのさらなる負担が懸念されています。
一方、公立公的病院は計画通り病床削減の方向で予算化されています。
病棟を閉鎖しコロナ患者を受け入れている府立病院の運営費負担金は増額しません。しかも、同病院機構の第4期中期目標案では、さらに「経営改善」として「効率化」を推進する方向が示されています。
医療機関を支える看護師確保の施策はほとんどない上、看護師養成所運営補助金は前年度比マイナスです。
コロナと災害による避難所や医療体制確保が問題視されている中、災害医療体制整備の予算を約2億円減らします。
■ 保健所の体制強化を
NHKの全国都道府県知事アンケートでは、「保健所の体制は十分か」の問いに、47都道府県中29知事が「十分ではない」と答えています。しかし吉村知事は「専門職の人員には限りがあり、保健所業務の一元化や重点化、効率化により適切に対応を行っている」と答えており、府として保健所数を減らしてきたことへの反省は全くありません。
新年度は、保健師の退職者補充に合わせ多少の増員が行われますが、向こう2年の前倒し採用であり、職員基本条例に基づき3年後には削減する方向です。感染者の保護や検査の調整、感染経路の後追いなど、必要な体制強化には不十分です。
■ 国民健康保険、福祉医療費助成制度
国保料の大幅値上げとなりかねない「府内一本化」を、3年後を目指しコロナ禍の元でも引き続き推進します。新年度は国の“コロナ減免”がなくなり、2020年度に減免を利用した世帯は大幅値上げとなりますが、府としての支援策はありません。
政府が75歳以上の医療費窓口負担2倍化を22年度後半にも強行しようとする中、府は老人医療費助成制度を20年度限りで全廃します。一方、この間府民と共産党が求めてきた精神病床入院への補助が新年度から再開されます。
■ 介護・高齢者福祉
在宅医療への移行を進める予算が新年度増額され、家族に介護の負担を押しつける傾向に歯止めがかかっていません。
介護人材確保・定着の予算は全体として約1億円増ですが、研修や環境整備がほとんどで、人材確保、定着のための賃上げなど、直接確保につながる施策はありません。
コロナの濃厚接触となった在宅要介護者の受け入れや、そのための職員増が必要ですが、実施する計画はありません。
認知症対策を謳うものの高齢者福祉全体の予算は前年比でほぼ変わりません。要介護認定「適正化」の名目で、介護認定を受けにくい方向が一層進められる危険があります。
■ 障がい者福祉
障がい者療育、難聴児補聴器交付、重度障がい者在宅応援など、障がい者施策の予算は昨年比で同じかマイナスです。
新規事業は、重度知的障がい者グループホーム拡大のために知識や技術を身につける取り組み(343万円)、障がい者のひきこもりを支援するSNSやリモートを行う市町村への補助(375万円)、「障がい児等の生活のしづらさに関する調査」(厚労省実施)費用(943万円)のみです。
■ 子どもの貧困対策
コロナ禍による“子どもの貧困”の深刻化が指摘されているにもかかわらず、前年度3億円だった「子どもの貧困緊急対策補助金」を2・5億円に削減します。
子ども医療費助成制度の府としての拡充は新年度もなく、小学生以上は市町村まかせです。
保育士確保等の保育対策に、コロナ対策として“かかり増し経費”を盛り込みながら、全体は削減となっています。
学童保育は施設整備、指導員の研修費は若干増額されますが、コロナ禍における“密にならない”クラス編成や、指導員への慰労金はありません。
コロナ禍で児童虐待がさらに増える中、現在2カ所の一時保護施設を1カ所新設します。一方で、子ども家庭センターの児童福祉司が国基準まで増員されるのは7年後です。
堺市が用地取得まで済ませていた児童自立支援施設建設を維新市政の元で白紙にし、代わりに府が受け入れるとして修徳学院を拡張、受託を延長します。
雇用と営業を守る
■ 中小業者と雇用、大阪経済の落ち込み
コロナ禍の影響が長期化し、今年に入っての緊急事態宣言も重なり、経営困難に陥る事業所が増加しています。民間調査機関によると、20年度の負債1千万円未満の企業倒産は、1月までの10カ月で累計529件(前年同期比24・1%増)と、最多だった09年を上回る可能性が出ています。
2020年の売上の状況
対前年比。大商連「新型コロナ感染拡大による経営実態アンケート」より作成 |
大阪商工団体連合会(大商蓮)のアンケートでは、対前年比2割以上売り上げ減少したと答えている事業所は72・6%にのぼり(図表)、小規模事業所を中心とした深刻な状況が明らかです。
ところが、コロナ禍で打撃を受けている中小企業や失業者・非正規労働者の雇用不安に対するきめ細かい支援策はほとんどありません。
■ 不十分な雇用対策
コロナ禍による雇い止めや自宅待機が後を絶たず、とりわけ非正規労働者を直撃しています。府として実態をつかみ、減収となった非正規労働者への一定期間継続した給付金制度、国や市町村とも協力した再就業への効果的な支援策などが求められています。
府は、民間人材サービス会社と連携した緊急雇用対策(新年度予算25・9億円)を打ち出していますが、人材サービス会社だけが有利になるのではという問題もあります。真に就業をめざしている府民の期待に応えるものになるか心配されます。
「住宅付き就職氷河期世代就職支援」(1千700万円)として、府営住宅(四條畷・清滝住宅)を活用し、就職と住宅入居をセットで、その後の社会人基礎力養成と就職定着をサポートする(20年度からの継続事業)としています。しかし、1カ所の住宅だけであり、福祉分野のサポートの必要性も含めた事業規模や内容の拡充が必要です。
■ 中小企業支援、産業政策は後退も
緊急事態宣言による営業時間短縮要請に応えた飲食店等に支給される「営業時間短縮協力金」は、1店舗につき一律1日6万円です。規模や従業員が多い店舗は「到底間尺に合わない」と悲鳴を上げています。事業規模や雇用者数に応じて増額するとともに、納入業者や生産者など関連事業者を含めた、雇用と事業を維持できる補償が必要です。
一方で、府は新年度から本格的に、ものづくり支援事業も含めて中小企業振興の機能を(公財)大阪産業局に事業移管します(2・2億円)。お金も人材も丸投げし、府が行ってきた中小企業支援がさらに後退する危険があります。
また、府商工労働部の主要施策が、①「大阪関西万博を視野に新産業の創出、企業支援、投資促進」として、燃料電池バス導入、バイオプラスチックビジネス推進、「空飛ぶクルマ」、企業立地促進補助金などを予算化、また②「健康医療関連産業のクラスター形成・育成」として、彩都(国際文化公園都市)、健都(北大阪健康医療都市)の推進など、実体経済とかけ離れた施策が中心になっていることは問題です。
中小企業向け制度融資では、新型コロナ関連の無利子融資を3月末で終了し、代わって有利子(年利1・2%保証料年0・2%)の融資を行うとしています。しかし、返済のための体力がない事業所にとっては返済猶予の延長などが必要です。
■ 農林水産業振興を
コロナ禍の影響で生鮮野菜、花き、観光農園などで大きな影響を受けている大阪農業の支援が必要です。しかし、新年度の主要な対策は、副業・マルチワーカーによる「新たな担い手」づくり、スマート農業展開などです。ベースとなる既存の農業者の支援、新たに就農をめざす青年層への支援や食と農を結びつけ「地域内循環」を促進する観点が必要ですが、予算規模が不十分です。
■ 文化・芸術応援を
多くの文化団体や芸術家がコロナ禍で活動中止を余儀なくされていますが、府の支援は極めて貧弱です。府内の芸術文化団体が行う活動を補助する「芸術文化振興補助金」は、補助上限100万円・採択予定10件程度です。文化団体や芸術家へのコロナ禍による休業・減収への補償など、活動を継続できる支援が必要です。
一方で、オリンピックの聖火リレーや事前キャンプなどに新年度予算で2億円が盛り込まれる予定です。
■ 「GO TO」大阪版
コロナ感染拡大を招いた「GO TO」事業が政府20年度3次補正予算に盛り込まれ、国民の批判を受けています。ところが府も連携し、「いらっしゃいキャンペーン」をグレードアップした宿泊を伴うツアーへの特典付与、「ツーリズムEXPOジャパン」レセプションイベント開催などに新年度予算を投じます。大阪市の天保山クルーズ船母港化に補助を行います。
学校教育の充実
■ 少人数学級-国が動いても府は動かず
コロナ禍での一律休校要請の影響を受けて、授業の詰め込みや学校行事の中止、感染の不安など、子どもたちは心身ともに大きな影響を受けています。その中で、教育関係者の長年の悲願だった少人数学級(35人)実現へ、義務教育標準法改正案が2月2日閣議決定されました。
しかし実施は1学年ずつ5年かけてで、中学校については取り残されました。これでは余りにも遅すぎます。しかも、財政負担を増やしたくないという思惑で、これまでの加配定数の一部を振り替えることで35人学級化を進めるとされ、教育条件の改善につながらないことが懸念されています。
府では、小2は国加配教員を活用して35人学級を実施していることから、具体的対応は22年度以降という状況です。
コロナ禍での子どもの感染予防と行き届いた教育実現のために、府独自に先行して小学校全学年で少人数学級化を実施する必要があります。さらに中学校も含め、早急に30~20人学級へ進むべきです。
府内公立小中学校 少人数学級化に必要な教員数と人件費 (20年5月1日ベース)
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小1
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小2
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小3
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小4
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小5
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小6
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中1
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中2
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中3
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35人学級
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必要教員数(人)
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- |
- |
140
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153
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130
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150
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142
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141
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135
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必要人件費(億円)
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- |
- |
11.0
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12.0
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10.2
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11.8
|
11.2
|
11.1
|
10.6
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30人学級
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必要教員数(人)
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180
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323
|
320
|
343
|
328
|
351
|
335
|
344
|
327
|
必要人件費(億円)
|
14.2
|
25.4
|
25.1
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26.9
|
25.8
|
27.6
|
26.3
|
27.0
|
25.7
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20人学級
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必要教員数(人)
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830
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986
|
993
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1,045
|
1,046
|
1,071
|
1,002
|
1,009
|
1,002
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必要人件費(億円)
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65.1
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77.3
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77.9
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81.9
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82.0
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84.0
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78.7
|
79.2
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78.7
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■ 小学生から“テスト漬け”
教育現場から「学力向上に繋がらない」「子どもと学校を差別・選別する」など批判が噴出しているにもかかわらず、コロナ禍により20年度は中止した「中学校チャレンジテスト」を21年度は実施する方針です。
しかも新たに小5、6年生を対象に「すくすくテスト」を行います。答案の返却もせず、学習の“振り返り”もできないものを、学力向上に資するという理由で行おうとしています。「全国学テ」対策に利用され、子どもたちに過度な負担を押しつけるもので、学校現場からは批判の声が出ています。
これら小・中のテストの新年度実施に6・2億円を費やします。
■ 公立高校のさらなる統廃合
大阪市立高校を22年4月に府に移管します。移管に向けた準備経費として新年度3・6億円を予算化します。移管までに、工業系高校の統廃合(泉尾工業・東淀工業・生野工業)を進めるとともに、商業系は学科・魅力を検討するとしています。普通校は府の「3年連続定員割れは再編整備の対象」とする条例に基づいて対応する方向です。
府立高校については、13年以降開催のなかった「学校教育審議会」を開催するとしています。その諮問内容は、①今後の府立学校のあり方②新しい時代における個別最適な学び③人口減少下の府立学校の全体像、とされていますが、一層の統廃合や分校化、民営化も心配されます。審議会委員(10人)には企業関係分野として(株)パソナの役員が入っています。
■ スクールカウンセラー、スクールサポートスタッフ
この間、共産党府議団が繰り返し求めてきたスクールカウンセラー配置が一部拡充されます。
府下全中学校(政令市除く)へ配置(3・4億円)、さらに小学校でのカウンセラー時間の確保(1万5567時間で8千万円)の予算が計上されます。また市町村で学習支援員を配置する場合に府が一部補助する予算も提案されます(4・5億円)。
■ 支援学校の整備
府が20年に発表した、知的障がいのある児童生徒数の26年推計値は5年前の1400人よりもさらに約200人増えています。にもかかわらず、旧西淀川高校の施設活用での新校整備の他はまともな対策に踏みだしていません。
国が24年までを「整備集中取組期間」と位置づけ、整備の国庫補助率を3分の1から2分の1に引き上げていることからも、新校整備は急務です。
■ 府大・市大の統合
コロナ禍で府内各大学の授業や研究、学生生活に大きな困難が生じています。各地でフードバンクなどが取り組まれていますが、学費半減や補助金の抜本増など行政の支援が必要です。
ところが府大・市大の22年4月統合を前提に、新年度は新キャンパス整備やPRなどに24億円が投じられます(大阪市も同額負担)。
府大・市大などの学生に、国の学費補助に上乗せする形で補助する制度が始まっています。しかし、保護者と本人が入学前3年以上府内に居住していることが必要なため、20年度に補助を受けられた学生は府内在住生の3人に1人程度にとどまっています。要件を撤廃し、コロナによる減収を考慮した特例を設けるなどが必要です。
「広域一元化」
副首都推進本部を条例で位置づけ、大阪市の権限を府に一本化する「広域一元化条例」が、2月府市議会に提案される予定です。
「府市連携により、二重行政の解消や成長戦略、まちづくりを一体で進める」といいますが、昨年の住民投票で示された民意は、「二重行政」の解消ではなく、政令指定都市としての大阪市を存続させることです。「二重行政の解消を求める民意に応える責任がある」というのは詭弁でしかありません。「一元化条例」案は、民意を否定し、大阪市を形骸化し権限を奪うものです。
「一元化」で、府も、府域全体の発展をどうつくりだすかという本来の広域行政の役割から、都心中心型の行政に変質されてしまいます。大阪市以外の自治体が意見を言う場があるのかも不明なまま、「都市魅力戦略」などが府市で議論され各自治体に押し付けられることになりかねません。
必要なことは、住民投票の結果を踏まえ、指定都市の権限、財源を市民生活の向上にどう活かすかです。大阪の成長発展を図るには、府と市の新しい連携と大阪市以外の市町村との協同が必要です。府は本来の広域行政の立場に立ち返り、とりわけコロナ禍のもと広域的役割を発揮し、市町村との協同をすすめるべき時です。
カジノ・万博誘致
コロナ禍でカジノ産業が世界的に行き詰まり、25年大阪万博前としていた大阪IR開業はめどが立っていません。にもかかわらず、府はカジノを「大阪・関西の持続的な経済成長のエンジン」として推進する姿勢を変えていません。新年度も事業者選定や国への区域認定申請、府民への宣伝などに1・3億円の予算をつける予定です。一方で依存症対策の予算は前年度の3割減です。
大阪・関西万博の会場建設費が、当初の1250億円から5割増加し、最大1850億円にのぼることが明らかになりました。夢洲の追加埋め立てや地下鉄中央線整備などを含め、万博開催のための府の負担は新年度だけで32億円です。今後の負担を合わせると400億円近くとなり、さらに増える可能性もあります。
カジノ誘致は中止し、大阪万博は開催地変更を含め計画を根本的に見直すべきです。
まちづくり・開発・環境
■ 大型開発とまちづくり
コロナ禍以前から需要がないと指摘されていた、高速鉄道なにわ筋線、阪神高速道路淀川左岸線延伸部、大阪モノレール、北大阪急行の建設・延伸を新年度も進めます(図表)。うめきた2期、新大阪周辺・大阪城東部周辺の開発なども引き続き予算をつけ推進します。国3次補正で「国土強靭化」などを名目に不要不急の事業を増額したため、20年度のなにわ筋線や安威川ダム建設の予算も増額されます。
政府の「スーパーシティ」構想は、企業などが個人情報を一元管理し国民の権利を侵害する危険があると指摘されていますが、うめきた2期地区と夢洲の「スーパーシティ化」を新年度も推進します。
海外の金融機関や人材を呼び寄せ国際的な金融センターをつくるとした政府の「国際金融都市構想」に応えて大阪を国際金融都市とするために、新たに新年度5千万円の予算を付けます。
災害時に危険な密集市街地の解消は急務ですが、20年度末までとしていた解消目標が実際は半分程度しか進んでいないため、目標を30年度末までに先延ばします。新年度予算は20年度の3分の2に減らします。
府内518鉄道駅のうち一部でもホーム柵が設置されている駅は83駅しかなく設置が急がれますが、新年度の設置補助は12駅にとどまります。
おもな大型開発の総事業費と府の負担分
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総事業費(うち府負担)
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府21年度予算
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なにわ筋線
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3,300億円(590億円)
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17.8億円
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淀川左岸線延伸部
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4,000億円(300億円)
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2.0億円
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大阪モノレール延伸
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1,050億円(300億円)
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42.0億円
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北大阪急行延伸
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600億円(100億円上限)
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17.9億円
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■ 府営住宅の充実を
コロナ離職などで住まいを失った方への府営住宅一時提供が実施されていますが、提供戸数は100戸程度、入居期間は最長1年にとどまっており、大幅拡充が必要です。
コロナ禍で減収となった入居者への家賃減免制度がありますが、認定月収10万4千円以下の世帯のみが対象です。減収となった全入居者へ対象を拡げるべきです。
14年度末は13・7万戸あった府営住宅の管理戸数は、大阪市などへの移管に加え、建替え時の戸数は空き戸数分を除外するなどで、現在は11・8万戸まで削減されています。府は削減計画を新年度に改定する予定で、府営住宅つぶしが一層加速する危険があります。
一方、長年の要望が実り、昨年10月から入居者の地位承継が配偶者だけでなく「子」と「孫」にも拡大されました。
■ 地球規模の環境破壊ストップ
20年度末に、「地球温暖化対策実行計画」や「スマートエネルギープラン」などを改定・策定し、一体的な「2030大阪府環境総合計画」を策定する予定です。再生可能エネルギーの大量普及など実効ある対策を講じるための財政措置が必要ですが、新年度の府の環境予算は、コロナ禍による税収減などを理由に大きく削減される見込みです。
森林環境税の4年延長にともなって、45億円の財源を森林保全と猛暑対策に使う計画が示されていますが、そもそも森林保全に目的税を充てることも含めて問題です。
府の財政-暮らし守る財源確保は可能
府は、コロナ対策の財政支出などで20年度は1470億円の支出超過となるとしていましたが、実際はコロナ対策の大半が「地方創生臨時交付金」(国20年度1次~3次補正分合計で973億円)などで補填されるため、支出超過は260億円にとどまります。19年度末1562億円だった、自治体が自由に使える「財政調整基金」の残高は、20年度末見込み1442億円とさほど減りません。
21年度は税収減などで935億円の支出超過になるとしています。しかし、大型開発やカジノ万博への支出の凍結、借金返済のための基金への積み立て(新年度予算228億円)の先延ばし、税収減を補う借金の75%を国が補填する制度の活用などで、コロナ禍から府民を守る財源を確保することは可能です。
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