被災者の安全・安心確保早く/大阪 台風21号直撃から1年
近畿地方に大きな被害をもたらした台風21号直撃から4日で1年がたちます。死者8人、住宅の一部損壊6万6000件などの被害とともに、北部山間部の倒木や南部を中心とした農業に甚大な被害がありました。台風シーズンを迎え、記録的豪雨が多発する中、被災者の立場に立った支援の強化や安全・安心の確保が急がれます。
(写真は今年2月)
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大阪府高槻市では、樫田(かしだ)や川久保など北部山間部で613ヘクタールにわたって倒木が発生。樫田地区の出灰(いずりは)地域は昨年の被害発生以来ずっと、集落に入る市道が通行止めとされ、ことし8月15日の台風10号では、倒木した箇所に土砂崩れが起こりました。住民から二次被害への不安の声が上がっています。
倒木処理いまだ
「この1年、精神的にも大変でした」と話すのは出灰に住む伏見能成さん(45)。自宅の敷地内の木が倒れ、車庫が壊れました。消防団の活動や仕事をしながら少しずつ自分で処理をしてきました。1年間続く通行止めについて「どうなっているのか、いつまで続くのか説明がない。私たちは見捨てられているのかとさえ感じる」と言います。
倒木の処理は、渓流の中にあるものは今年2月に終わっていますが、その他は激甚災害の指定に伴う国の災害復旧事業などを活用し、当面の5年間、危険箇所に優先順位をつけて森林組合が事業を実施。復旧は緒に就いたばかりです。
伏見さんは「住民や通行者の安全・安心確保、住環境の回復・保全、倒木の資源活用、二次被害を出さないために早い倒木処理が必要」と強調。
日本共産党の出町ゆかり市議は「住民との十分な相談の上、進めていくことが必要」と指摘します。
農業再建迅速に
府内の農業ではハウス面積の約3分の1が被災しました。農民組合や日本共産党国会議員団の調査と政府への要望で、すべての被災農家を対象に国と自治体で最大9割のハウス再建補助が実現し、農家の農業への意欲を引き出しています。
水ナスが特産品の泉佐野市で農業を営む新(しん)悟さん(49)は、被災した農業用ハウス21棟のうち13棟が大破。現在10棟を再建しています。「補助金で元通りの農業をしていく決断ができた。新たなスタートにしたい」と意気込みます。
一方、再建も農業もあきらめる高齢の農家もあり、農民組合大阪府連合会阪南支部協議会の下村晴道事務局長は「4年前に制定された『都市農業振興基本法』に基づき、大阪農業をどう育成していくのか、大阪府や各自治体の姿勢が問われている」と指摘します。
住宅の一部損壊は6万6000棟に上り、ブルーシートがかかった住宅がまだ多く残っています。日本共産党府議団は8月30日、吉村洋文知事に2020年度予算に対する重点要望を提出。府として半壊と一部損壊も含めた恒常的な住宅被災者支援制度を設けるよう求めています。
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