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維新府政の7年で、子どもたちや府民のくらし、中小企業は深刻に/くらしと営業を守る府政改革こそ必要 日本共産党大阪府議会議員団幹事長 くち原亮 大阪府の2014年度決算を審査する大阪府議会決算特別委員会が12月10日に閉会しました。審査を通じて、維新府政の7年間で全国や近隣府県と比べても、子どもたちや府民のくらしと営業をめぐって、厳しく困難な状況が広がっていることが明らかになりました。今回の決算特別委員会で取り上げた問題を通じて、真に必要な府政の改革の方向と具体的施策について考えていきたいと思います。維新の教育行政で大阪の子どもの状況が困難に〜一人ひとりを大切にした教育を (1)暴力行為は全国最多、不登校も増大 維新府政の7年間で、小中学校・高校での暴力行為発生件数が増大し、2014年度では全国最多となり、1千人あたりで全国平均の2.7倍となっています。 不登校の児童生徒数でも、小中学校では、全国的には横ばいか減少傾向にあるにも拘らず、大阪では増大しており、2007年度の全国18位から2014年度は6位に悪化しています。また、高校に入ると全国的には、中学校と比べて6割程度に減少しているのに、大阪ではほぼ同程度で推移しています(表1参照)。 高校中退率が全国一高いのが大阪で、全国学力・学習状況調査で、自己肯定感が低いのが大阪の子どもたちです。 (2)少人数学級拡充や正規教員確保、自由で風通しの良い教育現場こそ 子どもたちの現状が厳しく困難になった要因には、全国に比べても深刻な貧困の拡がりなどとともに、中学1年になったとたんに実施される高校進学のための「チャレンジテスト」や高校学区の撤廃、府立高校つぶしなど、北野・天王寺など「グローバルリーダーズハイスクール」10校に予算を重点配分するなど、競争をあおって序列化し、学び場を奪うという維新府政の教育行政があります。 小学1・2年の少人数学級は、学力向上や欠席者数の大幅減少など様々な効果が検証されており、いじめの早期発見にもつながります。都道府県で独自に拡充していないのは、大阪府を含め3府県だけです。経済格差が学力格差につながるとされ、「貧困の連鎖」がいわれるもとで、貧困の拡がりが深刻な大阪でこそ、少人数学級の拡充が必要です。 また、教員採用をめぐっても、近隣府県に比べ、志願倍率が落ち込み、合格者の辞退率が高いのが大阪です(大阪府から他府県へ転職する教員も多い)。この点では、維新府政のもとで強行された「教育行政基本条例」や「国旗・国歌強制条例」などの影響も現れているのではないでしょうか(表2参照)。 教育行政のゆがみが増大するもとで、「教育に穴が空く(教員不足のため授業ができず自習になる等)」事態も増大しており、正規教員をしっかりと確保していくことが求められています。学校現場での知恵と力を合わせた共同の取り組みを前進させるためにも、自由で風通しの良い教育現場にしなければなりません。教員同士を評価で競わせる「教育行政基本条例」などは直ちに廃止すべきです。 (3)重大犯罪や薬物事件から子どもたちを守れ 昨年8月寝屋川市の中学1年生2人が連れ去られ殺害されるという痛ましい事件が起こりました。こうした重大事件に発展する可能性のある「子どもに対する声かけ等」の認知件数は、2015年10月末時点で671件と2014年同期と比べ140件も増大しています。にもかかわらず維新府政(橋下知事当時)は、小学校への警備員を配置するための市町村への補助を廃止しました。子どもたちの命を脅かす、このような補助廃止は断固として許せるものではありません。この事業については、殆んどの市町村で独自に予算をつけ事業を継続実施しており、市町村からも補助復元の要望が寄せられています。 また、京都府で小学生が大麻を吸引した事件が起こりました。大阪府で覚せい剤及び大麻の取締法違反で2014年中に検挙・補導された少年は合計で26人と前年よりも7人増えています。実際には、検挙・補導された以外にも多くの少年が薬物に蝕まれている可能性が高く、現状把握と薬物を入手できないようにもとを断つ取組みが必要です。暴力団等の犯罪組織の取り締まりを強めるとともにその資金源となりかねないギャンブルを促進するカジノの誘致などは行なうべきではありません。 「二重行政」解消の名目で病院つぶしと医療後退〜医療・福祉の充実こそ 維新府政・市政は、大阪市立住吉市民病院を廃止、その病床の一部を移管し、大阪府市共同住吉母子医療センターが整備する計画を進めています。住吉母子医療センターには、小児科79床、産科46床の計125床が整備されることとなっていますが、大阪市が誘致を予定している民間病院が整備する予定の小児科病床は、わずか10床です。住吉母子医療センターと合わせても89床と、現行の住吉市民病院と府立急性期・総合医療センターの小児科病床の合計数111床から約2割も減少してしまいます。 しかも、誘致予定の民間病院では小児救急の受け入れは行われず、産科及び小児科医療の継続が担保されているのは10年間だけです。大阪市南部地域の小児医療が後退することは確実です。 松井知事は、このような病院再編計画の厚生労働省への申請を強行しました(12月21日申請)が、地元医師会や地域住民が反対し、大阪府医療審議会でも反対意見がほとんどを占めました(賛成は維新府議1名のみ)。今からでも申請を取り下げるべきです。 府民の健康増進の面では、大阪府におけるがん検診受診率は全国最低(胃・大腸・肺・乳がん検診は全国最下位、子宮がん検診は全国下から2番目)となっています。 がん検診を受診する際の自己負担額は、府内市町村によってばらばらで、例えば、胃がん検診では、無料実施の市がある一方、4000円の自己負担のところがあるなど格差が生じています。がん検診の受診率向上に向け、周知する内容や手法も改善しながら、さらなる普及啓発を図るとともに、受診費用の負担軽減を図るための府独自の支援などが必要です。 また、大阪府の後期高齢者医療制度の平均保険料は月6,998円と全国で3番目に高くなっています。これまで、後期高齢者医療財政安定化基金からの拠出によって保険料の上昇が抑制されてきましたが、2014年度の保険料改定にあたっては、松井知事の判断で、基金からの繰入は行われませんでした。府内市町村や議会からも要望され、当初、府の担当部局からも要望されていた繰入を行わなかった松井知事の責任が厳しく問われます。今年度は、後期高齢者医療の次期保険料の改定が行われる年度です。保険料負担の軽減に、大阪府としての役割発揮が求められます。 維新府政で大幅カットの商工業予算〜くらしと雇用を守り、中小商工業への支援強化こそ (1)ものづくり中小企業や商店街などへの支援が大幅減 「維新府政」のもとで、府民のくらしや大阪経済は全国や近隣府県に比べても落ち込んでいます(表3参照〜2007年度と2012年度の比較:「県民経済計算」より)。 府内製造業の事業所数は、2008年には53,417事業所あったものが、2013年には43,797事業所へと、5年間で1万カ所近く、18%も減少しています(総務省「経済センサス基礎調査・活動調査」より)。 大阪府商店街連合会や府・大阪市小売市場連合会に加盟する商店街数は847(2007年)から667(2013年)へと減少、小売市場数も143(2007年)から36(2013年)へと激減です。大阪府が2013年から調べた独自の全数調査でも、2013年5月調査で1,191(商店街1,029、小売市場162)だったものが、2014年4月調査では1,135(商店街1,007、小売市場128)と減少しています。 こうした厳しい状況におかれている中小商工業者を応援していくことが求められているにもかかわらず、維新府政のもとでは、ものづくり中小企業や商店街などを支援するための予算や人的体制が大幅に削減され、その施策は貧弱なものとなっています(表4参照)。
(2)ものづくりの高い技術力と集積を守り発展へ〜支援強化を ものづくり中小企業のまち・東大阪市では、日本共産党市議団や民主団体が協力して取り組んだ独自の実態調査(2013年に実施し、市内1,163事業所から回答)の結果、事業主の高齢化が進んでいる実態が明らかとなりました。5年後、10年後には廃業するという事業所が多く、ものづくりの高い技術力や集積が失われることが懸念されています。一方、多くの事業所が「何らかの支援があれば事業を継続したい」と答えており、必要な支援策を実施することによって高い技術力や集積を維持・発展させることも可能です。 ものづくりの高い技術力や集積は大阪の強みであり、それを守り発展させることが必要です。技術や製品開発、後継者の育成や金融支援など、実効ある施策を実施するためにも、中小企業家や様々なジャンル(医療や介護、その他)の専門家なども交えた検討会などを設け、具体的支援策を検討・実施することが求められます。 (3)各地域・商店街のニーズに応じた支援策を 各地域・商店街によって、それぞれおかれている状況が違います。商店街の振興を図るためには、それぞれの商店街に応じた施策が必要であり、市町村との連携を強め、実態を把握した上での支援策の具体化が求められます。 そのためにも人的体制や予算を拡充し、支援メニューも豊富にすることが必要です。 安心・安全の福祉と防災のまちづくり〜予算と施策の復元・強化を (1)浸水対策や土砂災害対策、住宅耐震化などのさらなる推進を 大阪府内で時間雨量50ミリを超える豪雨回数が増えています(表5参照)。 大阪府では、浸水対策のための下水道増補幹線整備を進めていますが、2014年度末までの進捗状況は、全体計画60キロbの約7割、40キロbが完成。総事業費1600億円のうち1200億円の事業を実施し、残事業は400億円となっています。 大阪府の中期整備計画案では、下水道増補幹線整備を2023年から2030年の間に完成させることとなっていますが、2014年度の執行額(約19億円)程度では20年以上かかってしまい、府の整備計画からも遅れてしまいます(表6参照)。 流域下水道建設費(2007年度と比べ2014年度は3割程度に大幅減)を確保しながら増補幹線整備などを進めていくことが必要であり、増補幹線とつなぐ地下河川整備も促進していかなければなりません。 また、大阪府の山地災害危険地区(住宅や道路といった保全対象となる施設があるなど、林野庁の調査要綱に基づいて定められ明示された災害危険地区)は1,355カ所ありますが、対策が講じられているのは451カ所(33.3%)にとどまっています。例年、治山事業の取り組みは復旧対策が主であり、事前の予防策にはほとんど取り組めていないのが現状です。 住民の命と安全を守るためにも対策が未着手となっている山地災害危険地区での事前の防止策・予防策に、より積極的に取り組むべきです。 住宅耐震化の問題では、大阪府の「住宅・建築物耐震10カ年戦略プラン」で、2015年度末での住宅耐震化目標は90%となっていますが、その到達は住宅全体戸数393万戸のうち65万戸が耐震性不十分となっており、全体で83.5%の到達見込みです。木造戸建住宅については、135万戸中39万戸の耐震性が不十分で、その到達見込みは71.4%とさらに低い耐震化率となっています。 今後、大阪府として、新たな耐震改修促進計画を策定していくことになりますが、耐震化を促進するための支援策についても、各種耐震補助(耐震診断、耐震設計、耐震改修、除去)に加え、住み替えへの支援を含め、住まい手のニーズや種別に沿った支援策の検討とその具体化が求められます。
(2)府営住宅戸数削減の中止、空地・跡地の有効活用による戸数維持と福祉施設の建設を 大阪府では、「維新府政」のもと、府営住宅(管理戸数13万4千戸)の1万戸削減が方針化され、住宅建替え時には戸数削減が行われています。 2014年度に建替え事業最終期の本体工事を実施した7つの住宅における管理戸数でみても、近隣団地を集約した1住宅を除いた6住宅の合計管理戸数は、建替え前の3,004戸から2,397戸へと79.8%に減少しています。 府営住宅の応募倍率は、2014年度では平均13.4倍、最高倍率は187倍に達しているなどきわめて高い状況です。平均以上の応募倍率となっている住宅が148住宅、50倍以上の住宅が36住宅、100倍を超える住宅が6住宅あるなど、多くの府民が府営住宅への入居を希望しています。 低所得の方々が低廉な家賃で入居できる府営住宅をしっかりと確保していくことが必要です。府営住宅の建替えにあたっては、高層化等によって生じる空地・跡地を有効に活用し、住宅の戸数増や特養ホームをはじめとした福祉施設の建設などを図るべきです。 大型開発推進、カジノ誘致ではなく、くらしと営業の応援を強めることこそ 2014年度だけで、特別区設置協定書策定など「大阪都構想」のために5億5千万円がつぎ込まれました。 松井知事は、「都構想」が実現すれば2700億円の財政効果があるかのように盛んに宣伝していましたが、決算委員会審査の中で、それが全くのでたらめであることが明らかになりました。 「都構想」の狙いは、大阪府と大阪市の財源を一本化して、一人の指揮官によって、ムダな開発にドンとつぎ込むことです。しかし、府民と大阪経済にとって必要なのは、関西国際空港に行く時間をほんの数分縮めるための高速鉄道・なにわ筋線の建設やカジノの誘致などではありません。 大阪府がやるべきことは、府民生活と雇用を守り、中小商工業者の経営をしっかりと応援していくことです。公共事業についても、浸水対策や土砂災害対策、住宅耐震化や福祉施設の建設など、安心・安全の福祉・防災型、くらし密着型への転換こそが必要です。 日本共産党大阪府会議員団は、そのための具体的提案もしっかりと行っていきながら、実現に向けて大いに奮闘する決意です。 |
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「大阪民主新報」2016年1月17日付・24日付より |
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