リニア中央新幹線建設の大規模で深刻な環境破壊問題を置き去りにしたJR東海の工事実施計画を認可しないよう求める意見書(案)
JR東海は8月26日、リニア中央新幹線に関する環境影響評価書を一部修正し、最終的な評価書を公表したが、環境保全について十全の取組等を求めた環境大臣意見や、国土交通大臣意見を反映しているとは、到底言えないものである。
環境大臣意見は、「その事業規模の大きさから、本事業の工事及び供用時に生じる環境影響を、最大限、回避、低減するとしても、なお、相当な環境負荷が生じることは否めない」「本事業の実施に伴う環境影響は枚挙に遑(いとま)がない」と指摘している。リニア中央新幹線建設は、大規模で深刻な環境破壊を引き起こすことは明らかである。
環境大臣意見は、多くの地下水脈を寸断することについて「地下水位の低下、河川流量の減少及び枯渇を招き、ひいては河川の生態系に不可逆的な影響を与える可能性が高い」と指摘し、東海道新幹線の3倍超となる電力消費量について「これほどのエネルギー需要が増加することは看過できない」と指摘しているが、これらに対してまったく不十分な対応のままである。
また、大地震が発生した場合の地殻変動や土砂崩れによる危険性、超電導により発生する電磁波の健康への影響などに対し、納得のいく対策は何ら講じられていない。
さらに、周辺住民の生活環境への影響について「地域住民等への丁寧な説明」(国土交通大臣意見)、「住民関与についても十全を期す」(環境大臣意見)との指摘に対しても、信頼できる対応を示しているとは言い難い。長野県が求めた地元自治体との環境保全協定の締結などの要望に対しては「ゼロ回答」である。
リニア建設工事がもつ特有の問題は、膨大なトンネル残土、水枯れや異常出水、電磁波の周辺住民への影響など、環境への深刻な打撃は、どれも"リニア"という、これまでに経験したことのない工事に由来している。
都市部の大深度地下、南アルプスの貫通など、東京〜名古屋間の86%が地下トンネルという、これまでの鉄道建設や道路建設でも前例のない大規模な地下工事でありながら、必然的に出る膨大な残土の処理場所・方法が、ほとんど決まっていない。
9兆円もの巨費を投じてリニア中央新幹線を建設する必要はなく、東海道新幹線や在来線の地震・津波対策の強化こそ急務である。
よって政府及び国会は、環境問題を置き去りにしたままリニア建設工事を認可しないよう強く求める。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 |