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児童虐待 一時保護所増設を/山本府議が一般質問

 日本共産党の山本陽子大阪府議は7日の府議会一般質問で、子どもの虐待問題を取り上げ、橋下徹知事に虐待対応の体制の強化を求めました。
 大阪では今年に入り、虐待による死亡事件が7件、虐待相談件数は今年度、全国2番目に多い5436件で昨年より1082件も増えています。山本府譲が大阪の子どもの虐待の大きな要因として「貧困」と「社会的孤立」を指摘したのに対し、知事もそれを認めました。
 山本府議は、府がテレビなどで通報を奨励したこともあり、通報が急増している一方、一時保護所は1カ所(50人定員)のままで、7月には29人が入所できなかったことを指摘し、一時保護所の増設と定員増を要求。知事は、一時保護を委託している民間の児童養護施設の負担軽減などで「一時保護機能の充実を図っていく」と述べました。
 府子ども家庭センター(6カ所)の虐待対応の専門職は、2008年度と09年度で9人増員されたものの、1人当たりの平均対応件数は約80件にのぼっています。
 山本府議は、虐待対応は非行や心身障害相談の何倍もの時間と労力を要し、特別体制のない24時間対応のため、夜間でも連絡があれば出勤し、休むまもなく翌日から業務している実態を紹介。「各センターに2人ずつ増員を」と要求しました。
 知事は、「体制は十分とは考えていない」としましたが、「行政職の活用などで体制の強化を図る」と述べました。
 山本府議はまた、虐待発見に重要な役割を担っている保育所の増設を要求。知事は「市町村に働きかけていく」と述べました。


「しんぶん赤旗」2010年10月9日付より



質問の大要は以下の通りです。


2009年9月定例会 日本共産党 山本議員の一般質問(大要)

2010年10月7日
日本共産党大阪府議会議員 山本陽子


1 子どもへの虐待対策について


 子どもへの虐待についてお聞きします。
 子どもへの虐待が後をたちません。
 59年前に定められた「児童憲章」に、「児童は、人として尊ばれる。児童は、社会の一員として重んぜられる。児童は、よい環境のなかで育てられる」と謳ってあるのに(パネル1)、今年、虐待により命を奪われる事件が大阪では7件、子どもにとってあまりにも残酷な社会と言わねばなりません。
 大阪は、全国の児童相談所における虐待相談対応件数、4万4,210件のうち、全国で2番目の5,436件で、昨年より1,082件も増加している県は他にありません。

 ここに昨年公表の全国児童相談所長会の調査結果があります(パネル2)。
 全体の3分の1の家庭において、「経済的困難」が虐待につながる要因と判断されています。大阪の生活保護率、就学援助率、失業率などが高い事実と重ねますと、虐待の背景には、大阪の「貧困」問題が浮かび上がってきます。さらに「社会的な孤立」も要因です。西区のマンションでの幼い姉弟死亡事件でも、近隣住民は「相談してくれていれば」と悔やんだと報道されました。
 パネル3は所得が低いほど頼れる相談相手がいないことを示しています。
 知事は、大阪の子どもの虐待の大きな要因として、「貧困」と「社会的孤立」を認められますか。

 府はテレビCMなどで、虐待通報を呼びかけ、8月281件の通報がありました。昨年の同時期と比べ、換算すれば3.3倍の通報です。広報の役割は確かに大きいと思います。同時に問題は、通報を受けて、きちんと対応できる体制があるのかどうかということです。
 府内には、6か所の子ども家庭センターがあります。しかし、対応する一時保護所は堺に、定員50人の1か所しかありません。各センターから、入所の依頼があったとき、満床のため断ったケースが、今年5月で18人、6月17人、7月29人ということです。一時保護所の増設や定員を拡大すべきだと考えますがどうですか。

 パネル4は子ども家庭センター6か所の虐待対応の専門職員数です。府は2年続け、4名、5名と増員をしましたが、なお一人当たりの平均虐待対応件数は約80件。一つ一つのケースが重篤化し、数も急増している虐待件数に、人員体制が追いついていないのではありませんか。現状にそくした児童福祉士の抜本的増員を求めますがどうですか。

 9月21日、「消えた子ども355人」〜住民票残し転居、健診受けず〜、続いて10月1日「虐待通報・安否未確認261件」と報道されました。
 行政機関が安否や所在を確認できない0歳から3歳の乳幼児が大阪は14人。通報があって安否確認できなかったケースのうち大阪は全体の3割を占めていました。行政のチェックが届かない子どもが大阪に多いのです。市町村が窓口である「こんにちは赤ちゃん事業」がきちんとおこなわれるよう支援してもらいたいのですが、知事のお考えはどうですか。

 若い子育て世代の失業率は11%を超えています。特に母子家庭のくらしはきびしく、年収150万未満の世帯が48.4%。住まいは、36.5%の世帯が家賃を月額「5万〜7万」払い、パートで働く家計を圧迫しています。
 出産、子育てで職場を離れざるをえない女性が大阪で多いというデータがあります。大阪の保育所待機児童数は1,396人。保育所に行っていれば、保育士の目を通して虐待が発見され、救えた子どもたちがいたはずです。
 母子家庭支援と保育所増設について、知事のお考えをお聞きします。







2 学校教員の配置について


 次に、学校の教育条件、特に教員の配置についてお聞きします。
 小中高の暴力行為が文部科学省調査で、約6万1千件にあがり、過去最高となりました(パネル5)。大阪は全国2番目です。
 中学校での多発と低年齢化がみてとれます(パネル6、パネル7)。いじめ、不登校数も大きな問題です。
 国連子どもの権利委員会が3度も政府に勧告したように、「貧困と格差」の広がりが家庭をこわし、過度な競争教育が、子どもにストレスを与え追い込んでいるのが原因ではないでしょうか。少人数学級で、子ども一人ひとりにきちんと向き合える、行き届いた教育がもとめられています。
 来年から、国は小中学校の学級編制基準を、40人から35人に、小学校1、2年は30人にすることを打ち出しました。知事からもぜひ、国に確実な実現をもとめてください。いかがですか。
 国がやらないもとでも、すべての都道府県で少人数学級にふみだしましたが、大阪は35人以下学級で学ぶ子どもの割合が、全国平均より、小学校で2%、中学校で15%少ない状況です。教育困難を抱える大阪でこそ、少人数学級の早い実現が求められています。特に小学3年と中学1年の35人学級の前倒し実施をもとめるものです。どうですか。
 今、学校では「教育に穴があく」という異常事態が広がっています。教員や講師が不足し、担任が長期不在になったり、免許以外の教科を担当するという異常事態がおこっています。マスコミは、「和泉市の中学校で、生徒が校長に『早く先生を見つけて』と直訴した」「堺市で、病休に入った数学教員の後任講師が見つからず、市教委は英語教員に数学を担当させた」「(政令市を除く)府内の中学で教師41人が欠員」など報道されました。
 実態はどうなっているのでしょうか。教育長の認識はいかがですか。

 この事態は、本来、正規で雇わなければならない教員を、臨時の講師で埋めてきたことからおこってきたものです。パネル8は講師数の急増を示しています。臨時教員増加の要因は、小中学校の教職員給与の国庫負担が2分の1から3分の1に減らされたことや、「総額裁量制」で地方が給与水準や教員数を決められるようになり、例えば正規教員一人を1日4時間の非常勤講師二人に振り替えることなどが認められたことにあります。
 定数内講師に多く配置されてしまい、突発の病休や前もって対応が可能なはずの産休、育休の代替講師が配置されず、「教育に穴があく」状態ができています。定数内講師の仕事は正規教員と同じ、担任ももちます。しかし、任用は基本的に1年限りです。これでは、見通しをもった教育活動はできません。
 非常勤講師の時間単価は2,790円。仮に週15時間授業しても、月額16万8000円。年間35週が基本で、一時金無しですから、年収わずか147万円。ワーキングプアと呼ばれる年収200万以下の「官制ワーキングプア」です。
 講師の先生からこんな声が寄せられています、「非常勤だからこの時間はもう勤務時間ではないなんて言えません。講師も生徒のためにがんばっています」と。非常勤講師が安心して教育活動できるような、賃金の月額払い、時間単価引き上げ、講師経験が正当に評価されるような採用制度改善などが必要です。教育長、どうですか。
 国に総額裁量制を廃止し、国庫負担割合を2分の1にもどさせることが必要です。知事から、国にもとめてください。どうですか。
 また、府自身が「安上がり教育」「教員採用抑制」策から新規採用の大幅増へと転換することです。定数内講師の廃止、臨時及び非常勤教職員は、職種ごとの必要性を検討したうえで、総数を大幅縮小することをもとめます。教育長に答弁をもとめます。







3 府営住宅について


 最後に、府営住宅について質問します。
 私の地元、平野区は人口20万。府営、市営住宅合わせて約2万3千戸あり、伝統ある平野郷とともに、公営住宅の街でもあります。「平野区誌」によりますと、昭和30年代の神武景気をきっかけとする高度経済成長にともない、労働者が都市部に流入し大量の住宅がもとめられたとあります。(パネル9−1〜4
 10年間に4万人が流入する中、約3千戸の府営住宅が建てられました。かつて新住民と呼ばれた人々も世代交代し、団地を「ふるさと」と感じる人が確実に増えています。現在は建て替えがすすんでおり、老朽化や狭い居住の解消がはかられつつあります。

 ところが、府営住宅に住み続けることができない二つの制度改悪があります。
 一つは地位承継の問題です。府営住宅の名義変更が、2年前の平成20年4月から規則改正され、配偶者に限るとなりました。例外は、高齢者、障害者、一人親家庭、生活保護世帯です。生活保護を受けていなくても、経済的に自立困難で、親と同居していた30代、40代が、親が亡くなれば追い出されることがおこりました。こんなことのないように、制度改善してください。

 もう一つは、期限付き入居です。これは4年前平成18年度、11月募集から始まった制度です。35歳未満で、10年の期限をきり、10年後には、入居資格があっても、継続・更新は認めないという制度です。「10年でしっかり稼いで、分譲マンションでも買って出ていってください」ということでしょうが、今そんな社会状況ではありません。若い層はいつまでも、正社員になれず不安定な働き方が続いています。最近離婚したという女性から相談があり、10年は3人の子どもがまだお金のかかる時期なので、不安でしかたないということでした。基準以下の収入世帯の場合は、引き続き入居できるよう制度をあらためてください。知事のお考えはどうですか。

 私は3年前の決算委員会で、この問題を取り上げましたが、指摘したことがおきています。これらは住民「追い出し策」であって、根本原因は、府が新しく住宅を建てないことにあります。平野区では、住宅に困っておられて、府営住宅に入りたいという高いニーズがあります。(昨年度は応募倍率220倍のところがありました)
 また1代限りの居住では、自治会の望んでおられるコミュニテイも形成されません。平野区での府営住宅建設を知事に強くもとめて、私の質問を終わります。

 ご清聴ありがとうございました。








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