がもう健議員の一般質問(要旨)
2008年10月1日
日本共産党の蒲生健です。喫緊の問題の1つである多重債務問題、雇用問題、震災対策について知事に質問します。
2007年4月、政府は多重債務対策本部が策定した「多重債務問題改善プログラム」により、県と市町村など地方自治体に相談窓口での積極的な対応などを要請しました。府も全庁的に取り組まなければならない問題だと、当時の商工労働部長は、わが党府議団の要望に答えています。
政府がやっと重い腰を上げ、上限金利の引き下げと「借りられなくなった人に対する顔の見えるセーフティネット貸付」.の提供に踏み切ったのは、.ヤミ金・サラ金の被害者が、遊興費欲しさに手をだしたのではなく、その多くが生活費の不足からであったことと共に、2003年6月大阪八尾市でヤミ金に追われた60代の夫婦が障害の兄を道連れにして、JR関西線踏切にうずくまって心中したという悲惨な事件が、契機になったものです。
府の最近の資料でも、全国の消費者金融利用者のうち多重債務者は、2008年2月、約122万人、大阪はその1割の12万人と推測されています。12万人といえば富田林や羽曳野の人口に匹敵する規模になります。2007年に経済・生活苦による自殺者は全国で7318人、このうち大阪は337人で、交通事故による死者数を上回り、健康問題に次ぐ数となっています。全国で2007年に個人の自己破産申立て件数は約14万8千件、大阪地方裁判所管内では1万4千件です。多重債務で苦しむ府民がいかに多いか、その深刻な現状を突きつけています。その根底には、大阪府民のくらしが特別に厳しい現実があると思いますが、知事の認識をお聞かせください。
政府は「多重債務問題」を解決するため、改善プログラムで、@丁寧に事情を聞いてアドバイスを行う相談窓口の整備、強化。A借りられなくなった人に対する顔の見えるセーフティネット貸し付けの提供。B多重債務者発生予防のため、高校などでの金融経済教育の強化。Cヤミ金の撲滅に向けた取り締まりの強化を打ち出しています。府も対策協議会を立ち上げ取り組んでいますが、それぞれについて取り組みの現状はどうなっていますかお答えください。
私は府民相談の現場からみて、公による低利の貸し付け・いわゆるセーフティネット貸付けが必要と考えます。このことを抜きにしては対策も不十分になります。そのために、現在府が行なっている「生活福祉資金」をセーフティネット貸付けに活用すべきだと考えます。
厚生労働省によればこの資金は1951年に社会事業法制定当時から「生計困難者に対して無利子又は低利で資金を融通する事業」と規定され、1990年に在宅福祉推進の観点から、名称も世帯更正資金を生活福祉資金貸付に変更。2007年度には、要保護世帯向け長期生活支援資金の創設及び多重債務防止のための緊急小口資金の貸付限度額を10万円に引き上げました。実施主体は都道府県社会福祉協議会であり、市町村社会福祉協議会を借入窓口としているものです。
ところが、2007年度府の貸付状況は、生活福祉資金・4つの制度を合計しても貸し付け件数は1741件で、大阪の多重債務者約12万人の70分の1にも満たない状況です。貸付け利子年3l、修学資金や療養・介護資金等は無利子なのになぜこんなに貸付けが少ないのか、はっきりとお答え下さい。同時に現時点での貸付け原資の残額、貸付け原資の府財政への返還や他への流用はないかどうかお答え下さい。
生活福祉資金を本当に必要としている府民が借りられるようにするために次の改善が必要と考えます。@大阪市等のように民生委員を通さなければ申し込めないやり方をやめ、市区町村の福祉協議会が直接受け付けるようにする。そのために必要な事務費・人件費は府が保障する。A実情にあわない制限、例えば「離職の日から2年以上経過している方」「定年退職者の方」などを対象外としているのを是正する。B他法他施策優先を徹底させるということで、責任のなすりあいを止める。C府政だよりで制度紹介を行うなど、積極的に制度を知らせる。D小口生活資金の貸付け限度額を大幅に引き上げ実際に効果あるものにすなどです。それぞれお答えください。
次に、大阪府生活福祉資金が「借金返済などのために充てる」という理由では貸せないとか、「多重債務者や多額の負債のある方」「生活福祉資金などの連帯保証人になっている方」には貸せないとしている項目を再検討するよう提案します。
さる8月24日に開かれた近畿セーフティネット貸し付け実現神戸集会に、現職の厚生労働省地域福祉課の職員が参加し次の報告をしました。「生活福祉資金の貸し付け状況は全国的にも漸減(ぜんげん)傾向にある。低所得者対策として積極的に資金の活用を図っていないと考えられる県がある。近年、自治体の財政歳入不足に伴う対応策として、社会福祉協議会に対し当該貸付原資を返還させ、貸し渋りを招き、需要に対応しきれていない都道府県が見受けられる。あくまでも低所得者への経済的支援策であり、地域福祉のツール(道具)として明確に位置付ける必要がある」とし、「今後の方向として、民生委員以外にも広く活用されるようにする。手続きの迅速・簡素化。資金種類の新設。福祉事務所と連携を強化し総合的支援機能を付加した貸付事業への転換を図る」等をあげています。
多重債務者やそこから脱出しようという人のためにでもある貸付け金が「借金にも、借金の保証人にも関係のない方にしか貸せない」というのでは自己矛盾しています。今の府の生活福祉資金貸付制度について、借金のある人にも貸せるよう、改善しなければなりません。答弁を求めます。
次に雇用問題についてです。
今や3人に1人、女性と青年は2人に1人が派遣や契約社員という非正規雇用です。特に最近急増しているのが「日雇派遣」です。携帯電話にメールで集合場所と仕事先が送られ、明日の仕事だけで明後日に仕事があるかどうかもわからない、そんな働かせ方です。企業にとれば、複数の派遣会社に競わせて「買い叩く」「使い捨て」雇用のメリットを最大限に生かして利益を増やそうというものです。日雇い派遣は、倉庫での荷捌き、百円ショップのレジ打ち、ファミレスのウェイトレス、カラオケボックスのウェイター、そして製造の現場ラインなどなど、あらゆる職種に広がっています。
ある女性から話を聞きました。この夏実際にあった話です。夕方4時から深夜10時までの仕事で、翌日コンビニで売る弁当作り。ベルトコンベアーの前で6時間働きつめ、6時間労働だからと休憩は全くなし。次の所は、倉庫の中に40人程が入っての荷捌き。食品が入っているので素手で密封されたダンボールの箱のテープをはがさねばならず、手は傷だらけ。冷房もなく扇風機が熱風をかき回すなかでの作業。事前の説明もなく4時間水も飲みにいけなかったといいます。3番目は、工場での部品の組立。冷房の装置があるので安心していたら、故障しているからと最後までつけてくれなかった。2日とも黒のTシャツが塩をふいて白くなっていたそうです。こんな待遇をされながら、今日1日だけだからとじっと我慢している。こんな人間をまるで物扱いするやり方は絶対にあってはなりません。
今、大量に「ネツトカフェ難民」「ワーキングプアー」.が生み出されています。この背景には、財界の求めに応じて政府が労働者派遣法の規制を大幅に緩和してきたことにあります。この点についての知事の認識と見解を問います。併せて大阪における日雇い派遣労働の実態をどう把握しているかお答えください。.
雇用対策法第5条には「地方公共団体は、国の施策とあいまって、当該地域の実情に応じ、雇用に関する必要な施策を講ずるように努めなければならない」と明記しています。日本共産党は、貧困の根源に雇用のルールの破壊があることを告発し、人間らしく働ける労働のルールをつくるために力をそそいできました。派遣労働をめぐって、全国の労働者のたたかい、わが党の一連の国会質問などをつうじて、規制緩和から規制強化へという流れの変化が生まれています。日本共産党は、昨年12月に「労働者派遣法に新しいルールを確立し、派遣労働者の正社員化と均等待遇を実現するー労働者派遣法改正要求」を発表し、各政党、関係団体に共同して改正にとりくむことを呼びかけました。いまかって法改悪に賛成した政党もそろって、派遣法の見直し、改正を主張するように変わりました。知事、いま、労働者派遣法を抜本的に改正し、派遣対象業務を原則自由化した1999年の法改正前に戻すことが喫緊に求められていると考えますが、国に求める考えはありませんか。また、関西経済界に、日雇いや短期雇用をやめ正規雇用に切替えるよう強くもとめるべきです。答弁を求めます。
最後に震災対策についてです。プレート型の東南海・南海地震は、今後30年以内に50から70%の確立で発生すると予測されており、目前です。地震が多くの人命を奪う恐るべき災害であることは、8万人を超える死者・行方不明者をだした中国の四川大地震が改めて示しました。犠牲者の大半は住宅・建物の倒壊が原因で、耐震化は急務中の急務です。
大阪府は昨年、「住宅・建築物耐震10カ年戦略プラン」を策定し、2015年の住宅・建物の耐震化の目標を90%と定め、昨年から耐震改修補助を始めました。ところが、現時点で耐震改修補助を実施している市町村は19にすぎません。残る24市町村が急いで耐震改修補助を実施するよう、国に現在の補助率45%のアップを求めると共に、府が市町村への技術的・財政的支援を強めることが必要です。また、阪神淡路大震災で多くの犠牲者を出した老朽木造賃貸住宅の建て替えや耐震化は特に重要な課題です。現在府内に、老朽木造賃貸住宅はどれだけあり、立て替えや耐震化のため、どのような対策が実施されているのですか。それぞれお答えください。
西成区の私の家の周辺は古い木造借家が密集しています。私の家も空襲を免れた借家です。「長屋には太い梁が入っているからペシャンコにはならない」との迷信を信じてくらしています。それでも最近は不安になってきました。せめて耐震診断でもと思うのですが、家主が申請してくれるか不安です。近所の人も高齢者がほとんどで今更家主ともめたくないという思いです。そこで、現実的な問題として、耐震診断補助を借家人だけで申請できないか、耐震改修補助は家主の承諾があれば、借家人でも申請できるようにできないか、お答え下さい。
学校の耐震化も急がなくてはなりません。
府は府立高校の耐震化を2015年に完了するとしていますが、今年八月の耐震化率は40・5%にすぎません。テンポアップが急務です。公立小・中学校の耐震化は、目標設定そのものが市町村まかせで、4月1日現在の耐震化率は平均56・9%です。そのうち、10市町村は30%以下です。特に低い市町村には府の援助が必要です。これらの、耐震化の取り組みは、地元業者の仕事を増やし、大阪経済に元気を取り戻す方策でもあります。この立場からも、力を入れるべきです。それぞれ知事の見解をお聞かせください。