山本陽子議員の一般質問(要旨)
2008年7月9日
山本 陽子
日本共産党の山本陽子です。知事に質問いたします。
まず、国際児童文学館についてです。プログラム案では、中央図書館に資料や蔵書を移し、専門員と研究活動への補助金は廃止となっています。これは四半世紀にわたって、府民が育ててきた児童文学館の役割の解体につながりかねません。
子どもたちの心を豊かに育む上で、本は大きな役割を果たしています。国際児童文学館は世界に誇る児童文学や児童文化の研究と活動の拠点です。役割のひとつが、市町村や学校の図書館と連携し、子どもたちの読書活動を支援していることです。子どもたちの本離れ、読む子と読まない子の二極分化、また、「考える力」の低下が心配されている今、この仕事はますます重要になるのではないでしょうか。「教育日本一」を目指す知事は、子どもたちに、「より良い本をもっと与えたい」というお気持ちがおありだと思います。文学館はそのための重要な施設です。
全国から、8万人を超える署名やはがきが寄せられています。「児童館にはお世話になっています」とおっしゃるたくさんの「家庭文庫」「おやこ文庫」があります。「大阪府子ども文庫連絡会」加盟だけでも386人以上がボランティアで、読み聞かせ活動をされています。また、子どもの本を媒介とした国際交流も、大阪の名を高めています。このような文学館を無くすことはまさに、国内外の関係者や府民を失望させ、大阪の財産の損失になります。
(パネルを示す:子ども室の中の・おはなし室)
文学館の1階に併設され、一般図書館の児童室の業務とは異なる専門研究機関の児童室として設けられたものです。(山のような高いところもつくり、この階段に座って読みきかせをします)
1981年(昭和56年)「基本構想」には「庭に面して設け、庭での緑陰読書や遊びへスムーズに入れるよう配慮して、内と外との一体感をもたせること」としています。
ここには、年間約50団体、3000人が訪れています。「ごんぎつね」が出てくる国語の授業にあわせて、作者の新見南吉に関する発展的な学習をしたり、また「障がい」ということについて、小学校1年生でもわかるように、絵本で子どもたちに読んできかせようと、万博公園での活動と合わせ、学校行事として来られています。私が行った時は、一人のお年寄りが、「題名がわからないけど、昔読んだ、始まりはこんな、こんな話で・・・わかるでしょうか」とたずねて来ておられました。幅広いリクエストに対して、児童の本に関してならどんなことでも応じられるところです。
70万冊の蔵書は、「児童文学」という概念ができた明治初年をスタートにして、年代順に保管されています。いろんな童話や漫画、児童雑誌が、付録ごと創刊号からすべて揃っているところは他にありません。「文化財」として扱う方針から、出版されたときのままの形で残されています。
このように、児童文学館は図書館とは違う使命をもっています。
研究成果に基づいて、子どもと本をつなぐところ。児童文学を専門に研究する大学でもできないことです。中央図書館と統合という発想は、違うものを無理やりひっつけるということです。機能がこわれてしまいませんか。知事は、3月に視察され、「児童文学を子どもに広める機能は必要」と言っておられます。案を見直すべきではないでしょうか。知事のお気持ちを問います。
さて、府立中央図書館に移転するといくらかかるかという試算があります。電動書庫改修費に約3億円。建物撤去に約1億円。移転運搬に約3千万円。さらに、撤収に関わる返還金、検索システム管理費など。ざっと見積もっても5〜6億円になります。中央図書館にはスペースはあと30万冊分の余裕しかなく、またすぐに収蔵庫の増改築費用が発生します。本当に経費削減になるのでしょうか。さらに問題があります。毎年、出版社からの、9000点、お金にして2千万円相当の寄贈本や、7000万円の寄付は図書館にはもらえないものです。文学館が文化財として保存し、専門員が運用する保証があるから、続けて寄贈がされたのです。寄贈が収集の6割を占めることを踏まえるなら、プログラム案は、これからの子どもたちが文化財を享受する機会を今の大人が奪うことになります。本当に「もったいない」と思いませんか。
文学館のある吹田市の阪口市長も、1970年万博が開かれ、世界の人々が集まった万博記念公園にあるからこそ、光る存在だと述べています。実際に訪れた府民は誰でも、緑豊かな、水辺のここがふさわしい場所だと感じます。こういう申し出や、知事の「ミュージアム構想」の中に含めるなど、ぜひ、時間をかけてさらに検討すべきと思いませんか。
次にセンチュリー交響楽団です。
「センチュリー交響楽団のみなさんへ いろいろな楽器をさわらせてもらってありがとうございました。また行きたいです。私はフルートをやりました。やさしく教えてもらい、吹くことができました。曲はすごかったです。家に帰って家族にいっぱい話をしました」――これは、子どものための音楽体感コンサート「タッチ・ジ・オーケストラ」に参加した小学6年生のお礼の手紙です。音楽を通した青少年育成のこのコンサート、昨年は16回実施しています。昨年は、自主公演が44回、依頼公演が57回、文化庁委託公演が13回、計114回です。支援学校や府立病院での演奏、高い芸術性、青少年育成など一人でも多くの府民に生の演奏を聴く機会の提供に努めてこられました。
先月、日本オーケストラ連盟は全会一致で、決議文を発表しました。「世界的にも、オーケストラは公演収入だけで存在できるものではなく、日本のオーケストラも国、地方自治体、民間から支援を得て公益的な活動を続けている。プログラム案のままでは、大阪府は芸術文化不毛の、国際的にも評価されない都市になることが懸念される。補助金縮減や廃止の撤回を断固求めます」というものです。
知事のお考えをお聞かせください。
事業収入を上げながら、補助金の依存率をさげる努力もずっとされています。府民からの支援を広げるために、会費負担を軽くしたり、1口500円のワンコインサポートの取り組みも始まります。文化振興のために、府がつくった楽団です。センチュリー楽団の存続のためにプログラム案の見直しを切にお願いしておきます。
ここで、知事の答弁をお願いします。
次に、男女共同参画推進財団のあり方についてです。プログラム案では、ドーンセンターを多機能化し、財団は運営補助廃止となっています。男女共同参画社会実現のための拠点である、施設と事業の縮小だと言わねばなりません。知事は、大阪の男女共同参画は、どこまですすんでいるとお考えでしょうか。答弁を求めます。
6月23日から29日まで、「男女共同参画週間」でした。今年の標語は「わかちあう仕事も家庭も喜びも」です
大阪府における15歳以上人口に占める働く人の割合は、女性が44.8%と、全国より3ポイント低く、勤続年数も全国より1年少ない7.8年となっています。男性賃金を100とした場合、女性は64.5で、男女格差はむしろ広がっています。これは女性に非正規労働が多いためです。また、夫と一緒に、朝から晩まで一日中、汗水流して働いている、家内労働の業者婦人は、「働いていることそのもの」も認められていない状況です。
もっと男女共同参画事業に取り組む必要があるのではないでしょうか。財団の持つ、高い専門性・ネットワークなどが役割を発揮すべきときに、府が自立化を打ち出し、廃止に追い込むのは、内閣府が打ち出している「わが国の最重要課題」という考えにも反していませんか。
ドーンセンターに助けられたというたくさんの声があります。契約社員だという女性は「私は高校生の時に不登校になり、センターの無料カウンセリングを受けました。ひきこもりから脱出して、今は毎日働けるくらい元気です。講座や図書室、行くと、ほっと安心して自分を取り戻せるところです。」とおっしゃっています。また子育てに悩んだ男性からは「父親として、子育てに積極的に参加したいと思ってきた私は、センターでいろんなライフスタイルの人と出会い、自分の形で子どもに向き合えばいいと気づかされました」とおっしゃっています。
ドーンセンターは女性も、男性も、ともに前向きに生きることをサポートしてくれるところです。NPOとの共同で、財団の専門員が培ったソフト面の豊かさは他にはないものです。財団のネットワーク、ノウハウこそ、府民の税金で育てた人的な大切な財産です。知事のお考えを問います。
府の委託事業は今後「市場化テスト」実施とありますが、「自分らしく、のびやかに、生きることのできる社会をめざす」という取り組みが、果たして「市場化テスト」で保障されるものでしょうか。そもそも「市場化テスト」の目的は、コストダウンです。府として、男女共同参加社会をめざす事業は、もともと儲かる分野ではありません。人の生き方や社会のあり方に関する系統的、総合的な事業であり、カルチャー講座に矮小化される危険も感じます。
現在、相談事業だけでなく、学習・啓発、文化表現事業、情報ライブラリーなどの事業がおこなわれています。大阪市のクレオや市町村や企業の研修の拠点でもあります。裾野は広く、決して一部利用者ものではありません。行政の責任として、施設の男女共同参画推進事業の中核としての位置づけをはっきりさせ、財団の事業継続をもとめるものです。知事のお考えはいかがですか。
次に、私学助成についてです。今回の、私学助成の大幅な削減は、子どもたちの「教育を受ける権利」を脅かすものです。小・中25%、高校10%経常費助成削減によって、生徒一人当たりの助成額が、小・中は全国最低に、高校はワースト2位の水準になってしまいます。助成金削減は、授業料値上げにもつながってきます。また、家庭への授業料軽減も大幅削減で、年収540万円以上は助成が受けられないという案になっています。
今の助成制度の中でも、経済的な理由で修学旅行にいけない生徒、家計を助けるため無理なアルバイトをする生徒、中途退学に追い込まれる生徒などがうまれています。私立高校33校の調べでは、昨年度経済的理由で修学旅行不参加は124人でした。今回の改悪案で、年収288万から430万の世帯から、7万円も授業料助成が減らされたらどうなるのか。年収540万円以上の家は助成すら受けられないということをすれば、はじかれた子どもはどうなるのか。知事はそんなことが起こるのを良しと思われますか。
公立中学卒業生の、高校進学の割合は、公立7で私学3という枠があります。いくらがんばっても、全員が公立に入れないしくみがあるわけです。また、夢を実現させるため、特色のある私学に行きたい子どももいます。ともに公教育です。私学助成は、憲法が保障する「教育の機会均等」や子どもの権利条約の「子どもの最善の利益」を保障するものです。行政が果たすべき仕事だと考えますが、知事のお考えはどうですか。
ここで知事のご答弁をお願いします。