5月府議会 阿部誠行議員の代表質問(要旨)
2008年5月27日
日本共産党の阿部誠行です。日本共産党大阪府議会議員団を代表して知事並びに関係部局長に質問します。
はじめに、中国四川省・大地震とミャンマー・サイクロンで被災された方々に心から哀悼の意を表し、お見舞い申し上げます。わが党は救援募金などに取り組むと共に、日本政府が被災者救援に力を尽くすことを求めるものです。また、四川大地震は大阪にとっても警鐘です。学校・住宅などの耐震化を急ぐよう、知事に要望しておきます。
それでは質問に入ります。大阪府民の暮らしや営業は大変です。小泉「改革」で定率減税の廃止、生活保護の老齢・母子加算廃止、後期高齢者医療制度、障害者自立支援法、さらに雇用の破壊などにより「格差と貧困」はますます広がり、最近の物価上昇も加わり、府民の痛みはがまんの限界です。ワーキングプア、ネットカフェ難民、介護難民など、いわゆる「難民」の増大、中小零細業者の倒産・廃業など、事態はさらに深刻です。知事は、苦難に直面している府民の窮状がわかっていますか。知事の認識を問います。
ところが、知事が命じてつくらせたプロジェクトチーム試案は、歯を食いしばってがんばっている府民にいっそうの耐え難い痛みを強いるものです。
5月13日、障害者と家族、関係者ら3000人を超す人々が「知事に届けよう障害者の声を」と集い「ヒューマン・チェーン」で府庁を包囲して、「重度障害者への医療費助成の削減、精神障害者の通院医療費助成と権利擁護事業の廃止、グループホーム運営助成の廃止、障害者作業所運営助成の廃止と、まさに障害者の地域での暮らしと働きの場を奪い、命まで脅かす。そんなむごいことはしないでください」、「障害者の命を削ってイルミネーションですか」と訴えました。
三島救命救急医療センターをはじめ、救命センターへの運営補助の廃止に対し、救命活動の第一線でがんばる医療関係者からは、「府民の命綱まで切るのか、信じられない」の声があがっています。
35人学級廃止に対し、「少人数クラスで子どもに笑顔が増えたのに、その笑顔を奪うのか」。私学助成削減には、「私学に通う生徒の経済負担は限界、教育の機会均等の保障を奪うのか」と。
警察官削減・学校警備員の廃止にいたっては、「全国最悪の治安状況の大阪を安心・安全の街にと、府議会が全会一致で意見書を国に提出し、増員を図ってきた経緯や府民ぐるみの取り組みを否定するもの」と怒りが収まりません。
街かどデイハウス事業の廃止は、たずさわって来た人たちの長年の努力を踏みにじり、高齢者のささやかな居場所さえ取り上げるものです。
「商都大阪の灯を消すな」と全大阪小売商団体連盟や商工会議所なども声をあげています。
知事は、こうした府民の悲痛な訴えをどう受けとめていますか。あなたは「みんなが少しずつ我慢」をといいますが、少しずつの我慢どころか、激痛ではないですか。答弁を求めます。
さらにPT試案で廃止・統合の対象にされている「公の施設」の存続を求める声が、府内はもとより、国内外から上がっています。世界に2館しかない児童文学研究機関・府立国際児童文学館、国内で1館しかない弥生文化博物館などは国際的にもかけがえのない施設です。「大阪文化の再発見と情報発信」の拠点施設ワッハ上方、大相撲春場所の会場であり、アマチュアスポーツの拠点施設でもある難波の府立体育会館、スケートのメダリストを育ててきた臨海スポーツセンター、多くの青少年の演劇や音楽活動のメッカとなっている青少年会館、文化情報を総合的に発信する貴重な文化情報センターなどの存続を求める声が、また大阪が誇る大阪センチュリー交響楽団と大阪フィルハーモニー交響楽団を守れの声が、何十万の署名となって広がっています。文化・スポーツ・芸能・芸術は、府民が生きる上での心の糧になるものです。
高い専門性を持った人材やソフト、ネットワークにより、府の男女共同参画施策を推進してきた男女共同参画推進財団の廃止や、大阪大空襲などを記録し、二度と再び、戦争の惨禍を繰り返さないことを伝えるピースおおさか事業の後退は、許されません。
関西財界からは「四面楚歌に陥っても」、「痛みが伴っても改革断行を!」とエールが送られていますが、府民の願いとのギャップは、一段と大きくなっています。
もし、PT「試案」を強行すれば、お金でつぐなうことのできない貴重な文化をはじめとする財産を大阪府は失う事になります。知事は、そのことがいかに愚かなことかわかっておられるのでしょうか。答えて下さい。
「財政再建プログラム試案」は、「はじめに1千百億円ありき」で「理念なきカット」と批判されて当然です。府民のいのち、暮らし、安全をおびやかし、文化・芸術を壊して何のための「財政再建」ですか。府民から夢や希望、笑顔・元気を奪う、そんなものは「再建」ではありません。答弁を求めます。
なお、この際、先週発表された府職員の人件費削減について、意見を述べます。
我が党は、一般職員の給与カットには慎重であるべきで、ましてや退職金のカットはやるべきではないと申し上げておきます。
なお、わが党は議会が議員報酬、政務調査費、費用弁償、海外視察など削減すべきと考えています。
次に、財政再建の方向と進め方について、質問します。
昨年度末で、大阪府の起債残高は4兆9930億円、今年度予定されている公債費は2910億円、小さい金額ではありません。この起債残高を減らせば、公債費も減ります。減らせた分、憲法や地方自治法などの精神に基づき、税金を福祉・医療・教育・文化の向上のためにより多く使えます。すなわち府民の暮らし向上のために、行財政改革を積極的に推進する、これが日本共産党の主張です。
そこでまず、財政再建の方向です。福祉・教育・文化予算を削って財政再建というのは、目的の削減であり、本末転倒、文字通り禁じ手です。
この間、大阪府自身が何度も行革・リストラをすすめてきたにもかかわらず、財政が悪化してきた最大の原因は、国の施策です。
例えば、2003年以来、小泉政権が三位一体改革と称して、地方交付税の削減や補助金・負担金の廃止と税源移譲をセットですすめてきましたが、大阪府の場合、2003年度と2007年度を比較すると544億円、財源が減りました。改革どころか、重大な改悪、地方自治体いじめです。
また、先月の国会で再議決され成立した法人事業税の偏在是正は、大阪府にとっては265億円の減収です。
1989年の消費税導入と1997年の5%への引き上げと引き替えで実施された法人税の減税は、大阪府では昨年度で1000億円を超える減収をもたらしていると推計されます。
これらを合計すると1800億円を超えます。いま、知事は1100億円の歳出削減に取り組もうとしていますが、それをはるかに上回る金額です。知事が府民の信託に応え、財政再建に真っ正面から取り組もうとするなら、果てしない国の地方自治体いじめに異議を申し立て、国に是正を求めるべきではないでしょうか。答弁を求めます。
大阪府の起債残高は、一般会計でみても、中川知事が就任した91年の1兆3416億円から横山・太田知事を経て2007年度末の4兆9930億円へと、3知事の16年間で3・7倍に急増しました。起債の主な原因は、90年代の数次にわたる国の景気対策による公共事業・大型プロジェクトです。大型プロジェクトが大阪の繁栄どころか、巨額の借金をもたらしたのは、天下周知の所です。
ところが、大型プロジェクトのむだ遣いは今も続いています。直ちに見直すべきです。今日は、次の事業に絞って質問します。
まず、箕面森町第3区域の開発です。第3区域はオオタカの棲む豊かな森です。この森の開発に192億円を支出する計画になっていますが、得られる収入は34億円にしか過ぎず、差引158億円の税金投入が予定されています。こんな馬鹿げた開発計画は直ちに廃止すべきです。
安威川ダムは利水は不要、治水対策では的外れという、ムダなダムの一つですが、堰堤工事はまだ未発注です。PT試案では、2009年度は本体着工を見送りと書かれていますが、見送りではなく、廃止にすれば、390億円のムダ遣いを回避できます。
安威川と紀ノ川の浄水場が計画されていますが、水余りの時代に新たな浄水場が不要であることは明白です。計画を廃止すれば76億円のムダ遣いを回避できます。
一方、赤字の国家的プロジェクトのため、本四架橋に今でも毎年8億4千万円を出資、関空連絡橋の買い取りで新たに65億円の負担など、当初予定を超える負担が大阪府に押しつけられています。大阪府は、財政状況から考えて、これらの予定外の負担を断るべきです。
それぞれ答弁を求めます。
最後に財政再建のすすめ方です。まず、現在の府の財政危機の状況を府民にわかりやすく正確に伝えるべきです。
知事は大阪府がすでに破産会社であると繰り返し発言していますが、大阪府が財政再生団体に転落する見通しは、府が発表した財政資料の中には見つかりません。何をもって破産会社というのでしょうか。根拠のない表現は止めるべきです。
そして、大阪府の実質公債費比率は、全国47都道府県中、どの位置にあるのか、大阪府の5兆円という起債残高を1年間の税収で割ればいくらになるのか、夕張市や国の場合はどのくらいか、明らかにして下さい。
次に、財政再建策の策定に当たっては、府民に情報を公開し、府民の意見を聞くことが欠かせません。市町村長をはじめ、何万、何十万という要望署名を集め、知事に提出した人たちの意見に耳を傾けることです。パブリックコメントも含め、府民の要望や意見を取り入れて計画を手直しする用意はありますか。
それぞれ、答弁を求めます。