BSE牛肉偽装事件、松原食肉市場公社再編整備等についての浅田満容疑者やハンナングループと大阪府との関与に関する質問書
■■■■■■■■■■2004年5月7日
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日本共産党大阪府議会議員団
団 長 宮 原 威
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大阪府知事
太 田 房 江 様
大手食肉販売会社「ハンナン」グループが、BSE対策の国産牛肉買い取り事業で、輸入肉を国産と偽り、6億円余りをだましとったとして、ハンナン元会長で、大阪府同和食肉事業協同組合連合会(「府同食」)会長、大阪府食肉事業協同組合連合会(「府肉連」)副会長を務める浅田満容疑者をはじめ関係者ら12人が詐欺容疑等で逮捕された。容疑はこれにとどまらず、輸入肉や対象外の国産牛、内臓肉の買い上げをさせていたなど、政官業が癒着した一大偽装事件へと発展しつつある。
マスコミ各社も社説等で「偽装の構造に徹底メスを」(『毎日新聞』)、「疑惑の真相に迫れ」(『朝日新聞』)、「牛肉偽装事件、徹底解明を」(『大阪日日新聞』)等、徹底解明を求めているが、その際のポイントのひとつは府の関与についてである。
日本共産党府議会議員団の追及に、府はこれまで事件とのかかわりを一切否定してきた。
しかし、事件が明らかになり、「物証隠し府が関与? 焼却協力依頼」(4月22日付『大阪日日新聞』)など関係者の証言をもとに関与の疑惑が浮上している。マスコミの指摘を含め、BSE牛肉偽装事件について、太田知事と浅田容疑者との関係をはじめとする府政とハンナングループとの関係、また、松原食肉市場公社再編問題についての府民の疑問を解明するためにも、少なくとも次の諸点について府は自ら明らかにすべきである。
以下の点について5月12日までに、文書で回答するよう求める。
一、ハンナングループの牛肉偽装事件に係る大阪府の関与について
(一)BSE疑惑牛発覚に際して農水省が実施した市場隔離牛肉の処分事業について、大阪府は、わが党の府議会での質問に対し、堺市などへの働きかけは認めているが、羽曳野市への働きかけはない、としている。
羽曳野市議会及び柏羽藤環境事業組合の議事録では、牛肉の焼却に関して大阪 府から連絡があったとされている。
また、『大阪日日新聞』(2004年4月22日付)は、「関係者によると、この28日、当時柏羽藤クリーンセンター(柏原市)の組合管理者を務める羽曳 野市へ、府環境農林水産部環境整備室廃棄物対策課(当時)から計2回電話があっ た。内容は『大変だろうが、(食肉は)地場産業でもあるので…』と、焼却への協 力依頼だったという」と報道している。同市の市長は、2002年1月11日に 隔離牛肉の「試験焼き」が行われ、その後1600d以上の牛肉を焼却処分した柏 羽藤クリーンセンター(柏原市、柏羽藤環境事業組合)の管理者である。
福谷剛蔵羽曳野市長は、「平成14年当時、国と府から危険なものを少しでも早く処分してほしいとの要請を受け、(自らが管理者を務める『柏羽藤クリーンセンター』での)牛肉の焼却処分を急いだのであり…」とコメントしている(2002年4月18日付『産経新聞』)。
【質問1】 農水省の、「市場隔離牛肉の処分について」とする2001年12月28日の各都道府県宛通達を受け、府は翌2002年1月15日に同趣旨の文書を府内市町村及びごみ焼却を管理する一部事務組合宛に通知 したが、この通知以前に、府が、羽曳野市や柏羽藤環境事業組合に、市場 隔離牛肉焼却処分に関連して連絡などを行った事実はあるのか。
【質問2】 連絡・通知などを行った事実がないとすれば、羽曳野市議会、 柏羽藤環境事業組合の議事録、また、各報道は間違いなのか。
【質問3】 こうした議事録や報道により、府の態度への疑念はいっそう増 している。間違いであるならば、府として訂正の申し出等を行ったのか、 また、その考えはあるのか。申し出等をしていない、あるいはする考えが ないとするのであれば、その理由は何か。
(二)2001年12月28日の農水省の通達は、市場隔離牛肉を保管している 倉庫のある市町村での隔離牛肉の焼却を原則としている。大阪府の場合、事業者 の報告で把握された事業対象の保管牛肉総量2338dのうち、1762dが、堺市にある大阪食品流通センターに保管されていた。それ以外も大阪 市内と泉佐野市内の倉庫である。
ところが、実際に焼却された「隔離牛肉」(最終的には3111dに増量)は、柏原市にある柏羽藤クリーンセンターで1643dともっとも多く、大阪食 品流通センターのある堺市で焼却されたのは683dにすぎない。大阪市の 焼却場でも処分が行われたが、同市内四カ所で計784dである。
また、国の元々の通知では、「施設の規模」などで、保管場所のある市町村で焼 けない場合もあるとしている。現に、堺市には大阪府の職員が焼却依頼をし、また堺市の分を大阪市で焼却するよう依頼している。焼却炉の処分能力でみると、柏羽藤クリーンセンターが日量450dであるのに対し、堺市は2カ所だけで760d、大阪市は4カ所だけで2700dであることを考えれば、柏羽藤クリーンセンーで過半の焼却処分が行われることは極めて不自然である。
【質問4】 府内で保管されていた「隔離牛肉」の過半が、冷蔵倉庫のない柏羽藤クリーンセンターで焼却処分されていることを府は知らなかったのか。また、府は焼却状況についての調査や国への報告などは行わなかったのか。
(三)大阪府は、事業対象の市場隔離牛肉の保管量を2338dと報告し、これを固定的な数量としていた。しかし実際に府内で焼却処分された数量は3111dである。他の都道府県からの「隔離牛肉」の府内への搬入などが考えら れるが、これは農水省通達の原則から大きくはずれるものと考えられる。また、 雪印食品等による牛肉偽装の発覚後には、当然、偽装牛肉の混入が疑われたはずである。
わが党が、議会でこうした事実を取り上げたのに対し、府は、「国の事業」との立場をとり続けている。しかし、焼却処分が始まった当初の2002年1月22日の決算委員会では、わが党の質問に「(焼却については)事業の趣旨、内容等の周知徹底と、それから関係市に対する指導助言を適切に行ってまいりたいというように考えております」など、関係市、関係団体への指導助言を明言していた。牛肉偽装発覚後の、同年1月31日の農水省の焼却停止の通知も、「各都道府県においても焼却の推進にあたり、事業実施主体、焼却施設等との調整にあたっていただいている」としている。
また、一般廃棄物について、府は市町村や一部事務組合からの実情を把握する立場にあり、年度ごとの報告も府でとりまとめている。
さらに府は、中小企業等協同組合法に基づいて、「府肉連」、「府同食」等を指導、 監督する立場にあり、食品流通センター建設には36億円の府費を投入している。
【質問5】 牛肉の偽装が考えられたにもかかわらず、処分事業に関与しない態度をとり続けたのはなぜか。府は事業に対し、「責任も権限もない」としているが、たとえ焼却処分後であっても、国への報告・連絡等、なんらかの方策は採り得たはずであるが、それさえも行わなかったのか。それはなぜか。
【質問6】 焼却処分事業に関して、大阪市、堺市以外の自治体及び一部事務組合等を訪問したり、連絡したことはあるのか。
羽曳野市や柏羽藤環境事業組合とは、2002年1月15日以降も、連絡・訪問等の接触はないのか。ないとすれば同様に焼却した大阪市や堺市には連絡、訪問しながら羽曳野市及び柏羽藤環境事業組合とは何の接触も持たなかったのはなぜか。
【質問7】 雪印食品の牛肉偽装が発覚したために農水省が出した1月31日の通知以降も、柏羽藤クリーンセンターでは、焼却処分が行われたとされているが、事実か。事実とすれば通達違反である。府としてどのように対応したのか。
【質問8】 府は、市町村や一部事務組合のごみ等の焼却事業について、年度ごとに「大阪府の一般廃棄物」をとりまとめているが、2001年度は、牛肉焼却という特殊事情があったにも関わらず、これに触れられていないのはなぜか。
【質問9】 「府肉連」、「府同食」に対する中小企業等協同組合法に基づく2000〜2002年度の決算報告などについて、監査、指導をどのように行っているか。
また、「府同食」の2002年度の決算報告書が提出されていないのはなぜか。府として提出するよう督促をしたのか。文書があれば示されたい。
【質問10】2001年10月18日から12月末までに、松原市、羽曳野市の処理場で解体された牛の頭数の毎日の記録を畜種ごとに示されたい。
二、松原食肉市場公社の民営化問題について
府の第三セクター・株式会社松原食肉市場公社の統合再編には巨額の府費が投入されたが、この再編は浅田容疑者が深く関与したものである。同公社に対して、府は86年の設立以来100億円を超える補助金をつぎ込みながら99年度末で34億円の負債をかかえるに至った。松原と羽曳野の両市場を一本化しておこなわ れた処理策では、貸付金の放棄、あらたな補助金、無利子貸し付けなど府の負担 は68億円に及んだ。この松原食肉市場公社の民営化をめぐって、解明されなければならない問題点は多い。
【質問11】 統合再編後の「南大阪食肉市場株式会社」の開設から現在までの経営状況はどうなっているか。集荷頭数と、その地域について明らかにされたい。
【質問12】 「南大阪食肉畜産荷受株式会社」から南大阪食肉市場株式会社への「凖営業権」の譲渡に関して
@契約書を提出されたい。また、現在までの実績、今後契約通り履行されるのかどうか。
A譲渡にあたって「南大阪食肉畜産荷受株式会社」に支払われた金額、支払者及び支払先を明確にされたい。
【質問13】 羽曳野市立と畜場は自家割と畜場として残されたが、現状の処理頭数はどうか。
【質問14】 「南大阪食肉市場株式会社」の代表取締役をはじめ、主な役員が「BSE牛肉買上げ」に関わって、詐欺容疑で逮捕される事件が起きているが、公的資金を投入し、民営化を進めてきた府の責任をどう認識しているか。
【質問15】 松原食肉市場公社の民営化に関する諸事項の検討が進められている時期の2000年7月8日、知事、副知事、府幹部が、「浅田邸」で、酒食の接待を受け、手土産をもらって帰った問題は、刑法第197条に抵触する問題であるが、今日、浅田容疑者が逮捕された時点にたって、あらためてその政治的、道義的責任を感じないか。
三、大阪府と浅田容疑者及びハンナングループとの関係について
すでに指摘したように太田知事は2000年7月8日、副知事ら府幹部職員らとともに「浅田邸」で酒食の接待を受けたのをはじめ、2000年の知事選挙の期間中、浅田容疑者が支援する相撲部屋の力士激励会、「府肉連」の新年会など、1年間で4回も浅田容疑者と会っている。浅田容疑者の親族の結婚式には知事の 夫が出席している。
また、日本共産党府議会議員団が、2002年12月、大阪食品流通センターを視察、関係者から聞き取り調査をするとともに、食肉の出入庫や焼却状況などの資料提出を要求したが、食品流通センターは提出を拒み、府はそれを容認した。 この時に資料提出がなされていれば、事態の解明は今日を待たずとも進んだと考えられる。
【質問16】 知事は2001年、「府肉連」、「府同食」の新年互礼会などに出席しているが、それ以降出席しているのか。出席したとすれば、いつ、どの団体のどのような会合か。
【質問17】 知事は2000年2月29日、八角部屋の力士激励会に出席しているが、2001年以降はないのか。また、他の相撲部屋の会合への参加はないのか。だとすれば、なぜ八角部屋だけに行ったのか。
【質問18】 黄綬褒章などの2001年の受章者は、春秋合わせて85人である。2001年から2003年の3年間に、知事もしくは副知事が出席した受章祝賀会を明らかにされたい。
【質問19】 知事は通産省時代、浅田容疑者と面識はあったのか。
【質問20】 大阪食品流通センターは、国、府の補助を得て建設されたものである。設立後の運営状況について報告を受けているのか。今回の牛肉買い上げ事業について聴取しているのか。
また、日本共産党府議会議員団が2002年12月、同センターを視察、資料提出を要求したが、食品流通センターが提出を拒み、府がそれを容認したのはなぜか。