関西空港二期工事

改めて見直し求める

―推進の根拠は崩れた(中)

大阪市議 稲森豊



写真

台風23号などによる高波対策のためいたるところで高さ2bの土のうが積まれている(後方は管制塔とターミナルビル


 
おさまらない地盤沈下

定説無視した関空予測

   経営問題とあわせ、関空のもう一つの懸念が地盤沈下の問題です。私は建築学を学んだこともあって、地盤沈下について特別の関心を払い、空港島建設にかかわってきた技術者や土木の専門家の諸説を調べるなかで、関空の将来にとって命取りになりかねない問題であると考え、議会でも再三追及してきました。

 
専門家が厳しい発言


 関空会社は問題なしと主張しているが信用できるのか、地盤沈下は楽観視していいのかという点です。専門家も地盤沈下にかんして厳しい発言をしています。私が注目したのは、関空第一期工事で「空港島の土質に関する検討調査委員会委員」として埋め立てに中心的にかかわってこられた土質工学、とりわけ地盤沈下問題の権威者である大阪市立大学名誉教授、三笠正人氏の見解です。
 三笠教授は、1996年12月11日、海遊館ホールでの技術講演で次のように述べておられます。
 「埋め立て層の厚さが33b、沈下予想が11bと聞くと外国人はギョッと目をむき『オー・クレージー』といいます」
 「沖積層はサンドドレーンを打ちますから工事が済むと90%の圧密が終わっているのでそれ以上沈下する心配はまったく無いが、洪積層はそれから何十年も沈下し続ける。その見通しがなかなか立たないのです。実際に50年持てばいいというのが今の設計方針になっています。この一期あたりが常識的に見て埋め立ての限界じゃないかと思われるのですが、二期ではこれを超えてやろうという、これは驚きですね」「実測沈下が最近になって予想曲線よりも下がる傾向を見せ始めたのはいっそう不気味な不安材料です。これまでの圧密試験は長期圧密といってもせいぜい数週間程度。そういう試験結果を用いてほとんど経験のない洪積層の何年、何十年にもわたる圧密挙動を正確に予測できればむしろラッキーというべきでしょう」
 同じく同検討調査委員会委員である京都大学名誉教授の赤井浩一氏は、2000年3月10日関経連特別講演会「関西国際空港の建設と海底地盤の難問題」において次のように語っています。
 「関空のように極めて限られた施工期間に莫大(ばくだい)な土量を扱う沖合いの埋め立て工事は世界に例がない。・・・関空は第一期工事時点でも1平方bあたり45dの自重がある。第二期はさらに増す。これまで沈下していたのは洪積層の上部であり、中部以上深い層はまだ目を覚ましていない。これがいつ目を覚まし沈下を始めるのか予断を許さない」(『経済人』2000年6月号)

土木学教科書も予見困難指摘


 土木学の教科書でも「沈下の計算ではその誤差は沈下量における計算よりも圧密時間の算定において著しい」(土木学会編集『土質工学』彰国社)と、いつ沈下が収まるのかを予見することの困難さが述べられています。ちなみに建設中の中部空港は関空の教訓に学び、水深6b、海底5b程度の土壌改良で地盤沈下などまったく考慮する必要のない場所を選んでいます。
 このことから私が言いたいのは、関空が言う「沈下は予想範囲内で、沈下量は年々減少している」「第二期工事では地盤沈下のメカニズムを十分考慮している」という見解は洪積層の沈下を軽視し、土質工学の定説をも無視した科学的根拠のない主張であるということです。

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2004年10月30日付「しんぶん赤旗」より
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