汚された水と緑 検証 府の浪費型開発@
箕面の滝は人工? トンネル工事で川枯れに
「衝撃の真相“箕面の滝”は人工滝だった」「巨額赤字必至 大阪の仰天ニュータウン開発」――。いくつものメディアが大きく取り上げているr水と緑の健康都市(箕面森町)」と「箕面トンネル(国道423号バイパス)」。日本共産党の堀田文一府議が何度も登場して問題点を指摘しています。改めて、両事業を検証します。
「日本の滝直選」大阪屈指の名勝
日本の滝再選にも選ばれている大阪屈指の名勝、箕面の滝。阪急箕面駅を降りて、箕面公園内の道を行くと、小一時間ほどで、箕面の滝に着きます。高さ三十三メートル。外国からの観光客もみられます。しかしその水は地下の水をポンプでくみ上げ、箕面川に戻すことで補われているのです。
原因は、総事業費813億円の「箕面トンネル」です。箕面市の坊島と下止々呂美を結ぶ6.8キロの有料道路の建設が、5月30日の供用開始にむけて進んでいます。工事中、トンネル内に湧水(ゆうすい)が発生。最も激しかったときは毎分9.4トンにもおよびました(2003年)。この結果、山々からトンネルに水が抜け、箕面を流れる4つの川の水が枯れました。
全戸が売れても赤字は750円に
大阪府は工事開始前から、トンネル内に大量の湧水の発生を見込んでいました。対策として、箕面の滝につながる箕面川については、ポンプでトンネル内湧水を川に戻す措置をとります。こうして箕面の滝は、人の手で水量を補う「人工の滝」になったのです。
どうしてトンネルを掘るのでしょう。その先に総事業費985億円のニュータウン「水と緑の健康都市(箕面森町)」を造成しているからです。2900戸、9600人が住む計画のこの街は、全戸売れたとしても、750億円の赤字となる見込み。売れなかったり、値下げなどした場合、赤字はさらに膨らみます。
自然を破壊し、膨大な赤字を残す「水と緑の健康都市」は、ムダな大型事業の典型として、注目を集めています。どうして始めたのか、推進してきたのは誰なのか…。
(2007年3月14日付「しんぶん赤旗」より)
(つづく)
汚された水と緑 検証 府の浪費型開発A
府事業化に固執 ゼネコン救う公費投入
箕面の滝を“人工の滝”にした「箕面トンネル」と「水と緑の健康都市(箕面森町)」両事業。その開発には、当初から疑惑がつきまとっていました。発端は、1970年代にさかのぼります。
当時は、60年代から続く高度経済成長と、田中角栄の「日本列島改造論」の流れのなか、全国的に大型開発が進められていました。箕面では山を削って宅地を造成し、その新住宅に飲み水を供用するためのダム(余野川ダム)建設が計画されました。
140億円余で用地を購入
70年代はじめ、横浜市のゼネコン「奈良建設」が、ダム周辺の用地350ヘクタールを105億円で買収しました。82年、府総合計画で「水と緑」の街づくりが位置付けられます。84年、住宅都市整備公団が事業主体となることを想定して、大阪府・箕面市・建設省・同公団が共同で調査検討を始めました。
一方、80年代末になると、奈良建設は資金繰りに困るようになります。国の指導もあり、売却を計画。窮状を救ったのが大阪府でした。
89年7月7日午前9時30分、知事応接室で「水と緑の健康都市」の開発方針を決める首脳部会議が開かれました。当時の岸昌知事をはじめ、中川和雄副知事(のち府知事)、総務・企画調整・土木・建築・企業の各部局長らが出席。奈良建設から用地を購入し、企業局が基盤整備をする方針を決める会議でした。
意外にもその席で、岸知事は企業局による用地購入に難色を示します。「企業局でやる意義はあるのか」「住宅都市整備公団のしりぬぐいはおかしい。積極的な意義が感じられない」「兵庫県のために(※ダムの水ほ兵庫県が9割引き取る計画)企業局が出るのはおかしい。あまりにも便宜主義的」…。
すると中川副知事が、「今の段階では(住宅供給)公社事業としてやることにして企業局がかんだほうが幅広い絵がかける。とりあえず取得したほうがよい」「公社も地域開発に乗り出すべき時期だ」などと用地購入を主張。建築部長も「宅地需要はあり、事業採算の見込めるものであれば、やっていきたい」と発言し、岸知事も了解。
そして90年、府住宅供給公社が奈良建設から140億円余で約154ヘクタールの用地を購入しました。中川氏が知事に就任した後の91年には、9月議会で府企業局の事業とされました。
奈良建設への職員天下りも
日本共産党の浅野弘樹府議(当時)は首脳部会議の議事録を入手し、93年9月の府議会で、中川知事に「ゼネコンの窮状救済ともみられる公的資金の出動がなぜ必要なのか」と迫りました。
中川知事は明確な理由を示せず、「土地転がしを未然に防ぐため」と繰り返すぱかりでした。それどころか、副知事時代に奈良建設の会長と会っていたことを認めました。さらに、浅野府議が府幹部職員の同社への天下りを指摘すると「ご本人の意思により当該会社に就職した」と認めました。
(2007年3月16日付「しんぶん赤旗」より)
(つづく)
汚された水と緑 検証 府の浪費型開発B
始めた者、進めた者 一転750億円の税金投入
日本共産党府議団が、「水と緑の健康都市」をめぐる府とゼネコンの不透明な関係を追及してきた一方で、府議会の「オール与党」勢力は、建設推進の大合唱でした。当時の議事録をめくると―。
「この水と緑の環境都市をきたるべき高齢化社会に対応した快適で魅力あるモデルニュータウンとすべきである」(1991年、自民・上田新一議員)。「(水と緑は)21世紀の長寿社会を目指しまして、エイジレスタウンとしての位置付けを持っておりますし、地元の大きな大きな期待の.あるプロジェクト」(97年、民主・社民・府民連合・平野クニ子議員)。「だれもが住んでみたいと思える、府民の皆様に夢を与えるような街づくりを推進してまいりたい」(98年、自民・浦野靖彦議員)
どの議員も同事業を天まで持ち上げています。
工事が着工したのは98年12月。大阪府住宅供給公社から府が約112億円で用地を購入(約80ヘクタール)した後でした。
「早急」「大量」必要性は低下
しかし、着工後まもない99年、開発地で絶滅のおそれのある野生動植物に指定されているオオタカの営巣が発見されます。2001年2月、大阪府は「早急かつ大量の住宅地供給事業を府として実施する必要性は低下している」などとして、工事を一時中断・見直しするとしました。
土地の価格も下落。計画では1平方メートルあたり14万5千円で売る予定でした。しかし2000年には、開発地に近い豊能町東ときわ台の公示価格は同12万円になっていました(05年には同7万2500円)。当初計画通りの収入は見込めなくなっていたのです。
それにもかかわらず、「オール与党」勢力の箕面市議や大阪府議らは、開発再開を強力に要求しました。
開発の再開を執ように迫る
01年3月、箕面市議会に自民・公明・民主や保守系会派の各幹事長が連名で「水と緑の健康都市にかかる処理策の見直しを求める意見書」を出します。「事業の収支採算性を理由に当初計画どおり実施しないことについては認めることはできない」と強硬です。9月には再び「『大阪府行財政計画(素案)』に当初の大阪府縮小案を前提とした事業費を計上されたことは誠に遺憾」との意見書を出す念の入れようでした。
府議会でも執ように開発再開を迫ります。同年2月の府議会本会議で、民主党の中島健二議員は計画縮小に「府の財政破たんを回避せんがための処理策ではないのか」と厳しく批判。「突然の府の方針変更に怒りと不信感を抱いています」「地元では、事業廃止は到底受け入れられない」と、開発継続を訴えました。
同年の9月議会になると自民党の原田憲治府議が「一生懸命汗をかいていただいたことがムダにならないように、知事さんも努力していただきたい」と、太田房江知事に現地に来て市長らと会うよう要求。太田知事は現地を訪れ、事業を続けることを約束しました。
こうして府は、当初の5千戸・人口1万6500人から、現在の2900戸・人口9600人に計画を縮小したものの、開発そのものは継続。さらに“税金は1円も入れない”はずが、750億円も投入する計画に変更されました。
(2007年3月17日付「しんぶん赤旗」より)
(つづく)
汚された水と緑 検証 府の浪費型開発C
共産党が当初から追及 見直し、今でも遅くない
総事業費985億円、収入見込み235億円。「税金は1円も使わない」どころか、最もうまくいったとしても750億円の赤字=税金投入が約束されている「水と緑の健康都市」。「オール与党」勢力や大阪府が、ゼネコンとの不透明な関係などはらみながら強硬に進めてきました。これに対し、日本共産党府議団、同箕面市議団は、疑惑発覚以降、その解明を府に求めてきました。
「府民は納得しませんよ」
開会中の府議会で党議員団は繰り返し追及しています。和田正徳議員は5日、「水と緑」の土地購入をめぐり、横浜市のゼネコン「奈良建設」がばく大な利益を得たことを指摘しました。奈良建設は、350ヘクタールの用地を105億円で購入。府と建設省に270億円余で売却しています。「そんなことで府民は納得しますか?しませんよ!」。議場に和田議員の太い声が響きました。
くち原亮議員は同日、「完売しても750億円の赤字」について、土地が売れる保証はあるのかと質問。府は「適切な価格設定で販売が見込める」と、明確な見通しを示せませんでした。
また府議団は、工事受注にかかわる疑惑も指摘しています。府はPFI(民間資金の活用)方式で事業者を募集しました。しかし、唯一入札に参加し、工事を請け負ったのは大林組グループのみ。落札率はなんと99.8%という超高値になりました。
さらに大阪府は、北摂山系を貫き、「水と緑」につながる第二名神高速道路(高槻−神戸間40キロ)の建設(1兆2千億円余)誘致を進めています。神田隆生党箕面市議は「箕面では日々、山からトンネルに、箕面市の水道総配水量の4分の1に匹敵する水が流失しています。第二名神で第二箕面トンネルが掘られたら、水枯れはさらにひどくなり、別の水系にまで影響が出るおそれもあります。新たな開発はなんとしてもやめさせなければならない」と指摘します。
再開、公金投入現知事が決めた
一連の問題を追及してきた堀田文一府議の話 日本共産党府議団は、計画の当初から水緑開発に反対し、着工後も中止を繰り返し求めてきました。もともと、自然と府財政への重大な悪影響が予想されだからです。
現在、この開発に750億円の税金を投入することが府民から批判を浴びていますが、責任があるのは、開発に乗り出した中川元知事、着工した横山ノック元知事だけではありません。現・太田知事は、「(開発は)大阪の発展のために精査した上ですすめられてきたしとして開発を始めた責任を不問にし、「見直しは府の負担を最小限に抑える観点に立ち、行政として責任ある対応を取ったもの」として開発を再開し、税金750億円投入を決めたからです。
水緑事業の2006年度末時点での進捗(しんちょく)度は、事業費ベースで44%。今から事業を見直しても、税金のムダ遣いは大きく減らせます。
(2007年3月18日「しんぶん赤旗」より)
(おわり)