大阪府政と日本共産党

(「しんぶん赤旗」連載から)

1、福祉・暮らし

医療負担の軽減策を実現 制度守り拡充へ全力

 「私の国民年金は月4万2千円です。一生懸命働いてきても老後は不安と貧困の毎日です。(中略)…食事も1日2食にして切り詰めた生活をしている人間のこともお忘れなく福祉にもっと力を入れてください」

 日本共産党も参加する「明るい民主大阪府政をつくる会」作成のビラを見た府民から、切々とした訴えを書きこんだ返信ハガキが連日、同会事務所に届いています。

生活の苦しさ全国平均以上

 大阪府は完全失業率が5.7%で全国平均(4.1%)を上回り(2006年平均)、生活保護世帯は40人に1人で全国平均の2倍以上(06年3月1日現在)、就学援助を受けている児童・生徒も25.06%で全国平均13.24%の2倍近くになっています(05年度)。国保料が高くて払えず、受診時に十割負担を求められる資格証明書の発行はこの5年間で6倍以上になっています。

 ところが「全国一スリムな組織」をめざす太田府政は、「府健康福祉アクションプログラム案」(04年2月)や「行財政計画案」(04年11月)、「行財政改革プログラム案」(06年)などで府民施策の切り捨てをすすめてきました。

 「アクションプログラム」にもとづき、04年11月に府独自の老人医療費助成制度を実質廃止し、65歳−69歳の非課税世帯の医療費負担を1割から3割へ引き上げました。ひとり親、障害者、乳幼児の各福祉医療費助成制度には自己負担を導入。暮らしに追い打ちをかけました。生活保護世帯への夏冬の一時金を04年度で廃止しました。

 乳幼児医療貿の助成は、通院は2歳児まで。近畿では奈良県以外、通院は小学校入学前まで実施しています。

自己負担導入は「命を削るもの」

 04年2月定例府議会。日本共産党の黒田まさ子府議が代表質間にたちました。関西空港2期事業など無駄な公共事業には新年度予算案で576億円も計上しながら老人医療費助成制度を実質廃止することに「血も涙もない」と撤回を主張しました。障害者への自己負担導入は「命を削るもの」と告発しました。

 それ以降も党府議団は議会で、医療費助成制度改悪後の受診抑制の状況や、障警者自立支援法での負担増の影響を独自の調査も含めて指摘し、負担軽減を求めてきました。

 こうしたなかで府は、06年7月から福祉医療助成制度の一部自己負担の軽減措置を実施。障害者自立支援法では一定の軽減策を講じました。子どもの医療費助成制度の就学前までの引き上げについても「研究する」と答弁しています(今年2月府議会)。

「オール与党」は制度改悪に理解

 「オール与党」はどうか。福祉医療制度の改悪について、「方向は大変重要ですばらしい」(自民、03年9月議会)、「十分セーフティネットを」(民主、03年九9議会)と、府に「理解」を示してきました。

 6歳と5歳の子どもの母親、摂津市の森田洋子さん(35)はいいます。
 「摂津市では乳幼児医療費の通院への助成は3歳児までですが、大阪市は就学前までです。府は無料化を拡充して地域によって差がないようにしてほしい。日本共産党に期待しています」

(つづく)

2007年3月20日付「しんぶん赤旗」より


2、教育

小学1、2年で35人学級実現 毎回議会で取り上げ

 「どの子にも行き届いた教育を」「豊かな成長を」という願いは父母も教職員も同じです。ところが大阪府は「高校改革」の名で競争と選別をいっそう広げ、教育を受ける権利さえ奪っています。

 その一つが財政難を理由に1999年以来すすめてきた府立高校つぶしです。

 この計画は、10年間に23校を削減し、全日制普通科高校の4割を「特色ある学校」に改編するというもの。2006年度までで全日制普通科高校が15校なくなり、夜間定時制高校が19校から15校へ半減されました。

 大阪府立高等学校教職員組合の調べでは、廃校があった地域では進学率の低下傾向がみられ、毎年5千人近い子どもたちが後期入学試験で不合格となっています。

授業料減免率は全国平均の3倍

 こうした「高校つぶし」をすすめながら大阪府は、低所得者の就学をささえる授業料減免制度を昨年4月から改悪。「生活保護に準じる程度に困窮」から「住民税所得割非課税」にせばめ、これまでの対象者の約4割がはずされました。もともと05年度の府立高校授業料の減免率は4人に1人、全国平均の約3倍。背景には全国一高い授業料(年間14万4千円、全国水準は11万5200円)と生活保護世帯が全国平均の約2倍という府民の暮らしの大変さがあります。改悪の結果、今年度入学の1年生の減免率は18.3%に低下しました。

 全国を驚かせたのは、04年度から始まった府立高校でのクーラー使用料(年間5400円)の徴収です。減免措置はないため滞納者は退学とされます。07年度からは入学科(5500円)未納者の入学許可取り消しや、通学区域の拡大(9学区を4学区に)を実施し、競争と格差をさらに広げようとしています。

「高校つぶし」に共産党だけ反対

 日本共産党はこれらの問題をほぼ毎回、議会で取り上げるとともに、私学助成の拡充や30人以下学級の実現を求める請願、エアコン使用料徴収の撤回や府立高校つぶし反対の請願の採択を主張してきました。

 請願にことごとく反対してきた「オール与党」。自民党は、授業料減免制度について「これももらえる、この方ももらえるというふうな形になっていまの25.4%の方々が減免を受けているようなことになっているのではないかと、恐ろしいことが起こっているように思います」(05年9月議会)。35人学級についても「なぜいま急いで導入しなければならないのか」(04年2月議会)という姿勢です。

 「高校つぶし」については、民主党は「府民の理解を得ながら再編整備を進める」(04四年9月議会)よう要望し、公明党や社民党も毎回賛成しています。こうしたなかでも35人学級が06年度に小学1年生で、07年度には小学2年生まで実施されることになりました。府民の運動と日本共産党の議会での道理ある主張が一歩ずつ府政を動かしています。

(つづく)

2007年3月21日付「しんぶん赤旗」より


3、地域経済

中小企業予算はわずかに1.6% 振興条例制定求める

 ものづくりと商いの街、大阪。府内の全企業の99.6%が中小企業です。製造品出荷額の約65%を従業員300人以下の工場が占めています。

企業倒産の多く大阪府に集中

 太田房江知事は、「全国を上回る規模の景気回復」といいますが、中小企業の倒産は2005、06年と連続で増加。資本金100万円以下の企業の倒産は全国の4割近くが大阪です。大阪経済の主役の中小商工業は厳しい状況におかれています。

 一方、資本金100億円以上の大阪に本社をもつ大企業138社の内部留保は33兆5千億円で前年より8兆円以上増え、過去最高です(大阪労連「07年ビクトリーマップ」)。

 府の商工予算はどうでしょうか。中小企業対策費(金融対策費除く)は、07年度は448億6300万円で予算全体の1.6%。900近い商店街の活性化策は1億3千万円、基盤技術の高度化などの中小製造業支援は4億8千万円です。

 一方、大企業誘致のための補助金は、05年度に1社あたりの上限額を10億円から30億円に、07年度に150億円へと5倍に。わずか100人の常用雇用が条件です。

 府が10億円を補助して貝塚市に誘致した三洋電機工場では、従業員360人中210人が請負、社員の新卒採用はわずか11人です。住之江区に新工場を建設する旭硝子には府と大阪市で34億5千万円を補助。社員は40−50人、請負が200−250人となる予定で、「地元企業へ部品等を発注することはない」と地元への波及効果がないことを同社自身が認めています。

大企業優遇の「オール与党」

 こうした大企業優遇に賛成してきたのは「オール与党」各会派です。公明党は、誘致に失敗した武田薬品との交渉にさいし、「限度額を、例えば200億円にしたらその範ちゅうで大阪府が交渉していただける。…30億円という限度額を置いたままで200億円近い交渉をされるから問題になるわけであります」(06年9月議会)と提案しています。

 日本共産党は、大企業優遇でなく中小企業振興と雇用促進、消費拡大でこそ経済再生も府の財政再建も進むと指摘、具体的に提案してきました。

 先の2月府議会では代表質間で「補助金の額の多さを競うのではなく、大企業に正社員をきちんと雇うよう求めるべきだ」と主張。議会のたびに「中小企業振興条例(仮称)」制定を要求するなど奮闘し、府のものづくり応援施策に結びつきました。中小企業向け宮公需発注率65%の早期達成を求め、昨年度はようやく60%台に達しました。

 大型店出店の規制強化とともに商店街活性化のための懇談会設置では専門家や商店主、消費者らも加わるよう求め、実現。その中間報告をもとに06年度から「商店街等いきいき元気づくり事業」がスタートし、引き続き予算増を求めています。

中小企業融資枠拡大を実現

 中小企業向け融資では目標額の増額や無担保・無保証人融資の利用対象者を広げるよう要望し、8千万円までの融資を赤字でも保証人なしで申請できるようになりました(06年度)。返済期間も、資金繰り円滑化特別融資で7年が10年になるなど、一部の融資で延長されました。

(つづく)

2007年3月23日付「しんぶん赤旗」より


4、同和行政

終結をきっぱり要求 ものいわぬ「オール与党」

「人権」の名で府は事業継続

 部落差別は基本的に解消したとして国の同和対策事業(「地域改善対策特別事業に係わる国の特別措置に関する法律(地対財特法)」)が終了(2002年3月)してから5年。大阪府はその後も「人権」の名で旧同和事業を継続しています。

 06年度は108項目、55億円を計上。そのひとつとして市町村に「同和間題解決に活用できる一般施策」として示している28事業では18億1千万円も投入しています。

 とくに重大なのは、「解同」(部落解放同盟)が事実上支配する大阪府人権協会を同和行政の協力機関と位置付けていることです。

 07年度予算では、府人権協会など「解同」関係5団体への直接の補助金・委託金4億2千万円、総合生活相談事業など相談4事業での市町村への補助金3億8千万円を計上。「解同」などが主催する人権研修や講座などに06年度は114人の職員を派遣しています。

 06年度にはさらに、小学6年生と中学3年生の全員を対象にした「学力テスト」を使って旧同和地域の子どもたちを抽出し、「一般地域の生徒・児童」との学力を比べる「同和地区」実態調査を府民や教職員の強い反対を押しきって強行しました。

 日本共産党は「すでに法的にも実態的にもなくなっている旧同和地域を特定しておこなうことは同和問題の解決に逆行する」と指摘。特定の住民を「同和地区住民」と行政が指定すること自体が重大な人権侵害だと批判し、中止を求めました。

知事との癒着疑惑も指摘

 府が同和事業継続の根拠にしているのは、01年9月、府同和対策審議会が地対財特法失効後の同和行政のあり方について出した答申や、02年10月に市町村にだした通知などです。通知では「部藩差別が現存するかぎり問題解決のために施策を進める必要がある」とし、「人権協会」を人権施策推進のための協力機関と位置付けるよう市町村に指示しています。

 同和行政のゆがみのなかで、「食肉の帝王」といわれ、牛肉偽装事件で逮捕され、「解同」役員も務めた、大手食肉企業ハンナングループの浅田満元会長と大臣知暮との癒着の疑惑も指摘されています。

 太田知事初当選直後の2000年7月、知事は自民党府議や府幹部らとともに浅田邸で酒食の接待をうけ、「解同」府連との交渉には直接出席。学力テストの実施や07年度予算で計上された「人権ケースワーカー」の養成事業も交渉の席で約束していました。

 知事だけではありません。4年前の府議選で、民主党は「解同」の組織内候補が3人、推薦議員は16人、公明は推薦議員が8人です。これらの党・会派は「解同」にものがいえない関係です。この2月府議会で日本共産党は同和行政の終結をきっぽり要求。「オール与党」各党は、同和行政のゆがみが社会問題になり、マスコミもとりあげるなかでさえ、ただちにやめるよう求めたところはありませんでした。

(つづく)

2007年3月24日付「しんぶん赤旗」より


5、ムダな大型開発

一貫して見直し主張 推進役の自民・公明・民主

 「日本の玄関口にふさわしい活力と魅力ある国際都市」。こううたって超高層ビルやホテルが林立する絵を描き、府が総事業費6954四億円で関西空港の対岸部に造成した「りんくうタウン」(泉佐野市、田尻町、泉南市にまたがる320ヘクタール)。しかし、中心部の「りんくうタウン」駅周辺は空き地があり、人通りはまばらです。

バブル崩壊で予定企業撤退

 分譲開始直後のバブル崩壊で、進出予定企業が相次いで撤退。659億円かけて建設されたゲートタワービルも経営破たんしました。いまも分譲は全体で43.3%、中核部分(商業業務ゾーン)は8.3%です。企業用に58億円をかけてつくったごみ収集の共同溝は使われないまま廃止されます。同事業は分譲代の値下げや定期借地制度の導入で3千円近い収入不足となり、みんな府民負担になりました。

 この事業については「オール与党」が、「24時間都市のモデルとすべき」だ(自民党、1988年年2月議会)などと推進を主張。計画当初から事業が過大であることを指摘し、根本的な見直しを求めてきたのは日本共産党だけです。

 8月に2本目の滑走路(2期事業)が供用開始される関西空港も、94年9月の開港以来、需要の低迷が続いています。日本共産党は「当面必要性がない」と9九年前から2期事業の凍結・中止を求めてきました。

 「オール与党」は「2期工事についてはどんなことがあってもやらねばならない」(公明党、2004年9月議会)と推進を主張してきました。

 国は、07年の年間発着予定を当初の17万8千回から何度も引き下げ、最後は13万回になることを条件に2期事業を容認。府はすでに1141億円を投入していますが、06年も12万回を大きく下回っています。

談合の疑惑がつきまとう

 総事業費985億円をかけて約2900戸の住宅地をつくる「水と緑の健康都市」。完売しても750億円にのぼる赤字は税金で穴埋めされます。この事業は01年に知事が「住宅の需要がない」といったん凍結。ところが自民、民主の地元府議、箕面市議会の自民、公明、屋主がそろって再開を主張しました。813億円かけた関連トンネルで大量の水がわき、箕面の滝が細くなっています。

 利水・治水の必要がない安威川ダム関連(総事業費約1643億円)や、通行台数が計画通り増えない阪神高速道路の延伸など、ムダな大型公共事業に07年度予算では444億円を計上。「オール与党」は賛成しました。

 重大なのは、これらの公共事業に談合の疑惑がつきまとうことです。「水と緑の健康都市」では第1期事業で入札に参加したのは元副知事が天下っていた大林組を代表とする企業グループだけ。契約金額は予定価格の99.8%という異常な高値落札です。大阪府からは100人以上の幹部OBが大手・中堅ゼネコンに天下りしています。

 日本共産党は、ムダな大型開発の見直しとともに談合の疑いを追及。落札率を80%にすれば122億円もの税金が節約できると主張しています。

(つづく)

2007年3月25日付「しんぶん赤旗」より


6、議会の改革

政調費領収書添付へ 一問一答方式で論戦活発化

 大阪府議会は、議員の政務調査費について、領収書などの証拠書類をつけて提出を義務づける条例の改正を9月定例議会で行い、10月中の実施をめざします。先の2月府議会で全会一致で確認。日本共産党が主張してきたことが実現しました。

 政務調査費は現在各議員に月49万円、各会派に議員1人当たり月10万円が支給されていますが領収書の添付は義務づけられていません。

 日本共産党府議団は12日、談話を発表。「全会派が公開することで一致できたことは歓迎する」とともに、党議員団としてこれまでも独自に使途基準をより厳格に見直して執行し、証拠書類等も公開できるよう保存をしていることものべ、来期から自主公開するとし、「府民から納得の得られる条例改正実現にむけて奮闘し、費用弁償や海外行政視察などについても引き続き抜本的に見直し、中止されるよう力を注ぐ」としています。

再質間の回数制限が廃止に

 日本共産党は毎年、新正・副議長団に「大阪府議会の民主的改革についての提案」を行い、その実現に奮闘してきました。

 この4年間をみても、議会での論戦の活発化のために2005年2月議会から代表質間に「分割・一門一答方式」が導入され、再質間の回数制限が廃止されました。06年2月議会からは一般質問にも導入されました。改革に向け、日本共産党が積極的な論戦の保障こそ必要と主張してきたことが反映されました。

 これ以外にも議会運営は少数会派にも十分配慮すること、代表質間の時間は各会派平等に最低1時間を保障すること、5月と12月定例会でも原則として常任委員会審議を行うこと、会派の構成議員数を5人以上とする規制を撤廃し、少数会派にも議会運営委員会への出席を認めることを要求しています。

 府民の切実な願いがこめられた請願については、常任委員会での請願人の趣旨説明と質疑などの実質的な審議を行い、閉会中継続審査とされた請願は関係常任委員会で審議するよう求めています。

 各会派の主張が府民にわかるように府議会各会派の代表者が出席するテレビ討論の実施を提案。テレビ大阪で「レッツ府議会」(30分)として実現しました。さらに放映時間や時間帯の改善も提案しています。本会議と委員会質間のインターネット放映も実現。府民が各委員会を直接傍聴できるよう、府民に開かれた議会を提案しています。

海外視察中止で議会経費を削れ

 府が財政危機を理由にすすめる府民施策の削減に反対するとともに、議会経費の削減を提案。その一つが、年間1千万−2千万円の議員の海外視察の中止(日本共産党は95年から不参加)です。また、総額6千万円(07年度予算)の費用弁償の廃止も含め、議員報酬のおもいきった削減など抜本的見直しを提案しています。

 多様化する住民の要求を反映し、知事や府政のチェック機能の強化という立場から、議員の総定数112は削減せず、民意が反映できるよう任意合区をすすめ、1人区、2人区などの事実上の小選挙区をなくすことなどを求めています。

(おわり)