2019年12月26日
大阪府知事 吉村 洋文 様
日本共産党大阪府議会議員団
石 川 た え
内 海 公 仁
2020年度の予算編成並びに施策についての重点要望
はじめに
国民所得も総生産も、全国はリーマンショック以前の水準を回復したにもかかわらず、大阪は未だに下回った状態が続いています。「有効求人倍率は上がっている」といいますが、この20年間で大阪の正規労働者は37万人減少し、非正規労働者が62万人増大しました。到底「大阪経済は成長している」といえる状況ではありません。
大阪府民は、長時間で不安定な働き方、重くなる社会保障の負担、賃金・年金の減少に苦しめられています。加えて10月の消費税増税が家計と小規模事業者を直撃し、さらなる消費の落ち込みが懸念されています。
知事は4月の就任以降、こうした府民が直面している大きな困難への有効な対策を講じようとせず、カジノ誘致と「大阪都」構想に血道をあげています。
知事は、IR(カジノを含む統合型リゾート)を2026年度までに開業するとし、事業者の公募を開始、6月には決定するとしています。しかし、カジノはギャンブル依存症や家庭崩壊、犯罪の増加など大きな社会的損失を生み出し、大阪経済の健全な発展を歪めるもので、大阪府民の多数が反対しています。昨日、カジノ解禁法制定の中心にいた国会議員がギャンブル業者から収賄を行い逮捕されました。改めてカジノ利権の闇の深さを示すものであり、事業者公募はただちに中止すべきです。
また知事は、大阪市を廃止し4つの「特別区」に分割する「大阪都」の住民投票を来年11月初旬に再実施するとしています。しかし「10年間で1.1兆円の経済効果」には根拠がないことが明らかになりました。子ども医療費助成制度や敬老優待乗車証(敬老パス)など多くの住民施策は実施を「各特別区で判断」するとされているものの、そのための財源の裏付けはありません。財政調整の役割は大阪府が担うことになり、府内全体の住民サービスを低下させることさえ懸念されています。
このような、府民の困難をより深刻にするカジノ誘致と「大阪都」構想は断念し、福祉、教育、子育て、防災、中小企業・小規模事業者支援などに予算と体制を重点化することこそ、いま大阪府に求められていることです。
2020年度大阪府予算編成にあたっての私たちの要望は、8月に提出した「2020年度の予算編成並びに施策についての重点要望」の内容で述べた通りですが、その後の経過も踏まえさらに重点的に求める点について、以下を要望するものです。
最 重 点 項 目
① 国民健康保険料率と減免制度の府内“一本化”はせず、市町村が独自に設定することを基本とする。市町村が保険料抑制や減免などのために法定外繰り入れを行うことを認める。
学資保険や児童手当の差し押さえなど行き過ぎた収納対策は行わないよう、市町村および大阪府域地方税徴収機構に通知する。
② 妊産婦医療費助成制度を創設する。
③ 子ども家庭センターの児童福祉司を遅くとも4年間で国基準まで増員するとともに、研修を抜本的に強化する。保健師、看護師、臨床心理士など専門職員を増員するとともに、正規職員化をすすめる。
④ 厚労省が公表した、再編や統合の議論が必要とする公立・公的病院リスト(424病院・うち府内10病院)の撤回を国に求める。
府として、地域医療後退につながる病院の再編・統合は行わない。
⑤ 子どもと学校に混乱をもたらす中学生チャレンジテストを廃止し、小学校5・6年生への拡大をやめる。
⑥ 特別支援学校の施設設置基準を府独自に設定するとともに、国に対して設置基準を制定することを求める。
⑦ 阪神高速道路淀川左岸線延伸部の建設は中止する。淀川左岸線2期事業は厳しく再精査し事業中止も含めて見直しする。
なにわ筋線の建設は中止する。なにわ筋連絡線、中之島線延伸の検討はやめる。
⑧ 府営住宅削減計画を中止する。府営住宅敷地の売却予定空き地に、府営住宅整備基金も活用した新たな府営住宅や、保育施設、特別養護老人ホームなどを建設する。
⑨ 国の防災安全交付金を活用し、住宅の耐震化や被災住宅の改修が行えるよう制度を創設する。
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1 医療、福祉、介護の充実で府民の生命と健康を守る
(1) 国民健康保険の負担軽減
2019年度の国民健康保険料は府内43市町村中38市町で前年度より値上げとなった(30代夫婦と未成年の子ども2人・年収300万円の場合)。これは全国的に見ても突出した値上げである。
この背景には、国と大阪府が国保料“府内一本化”と法定外繰り入れの解消を市町村へ押しつけていることがある。大阪の国保加入者は所得の17%もの過酷な保険料負担を強いられているが、府の計画では2040年度には現在の2倍もの負担となる。これでは加入者の生活は破たんするしかない。
府民の生活を守り国保を持続させていくためには、国保の負担の抜本的な軽減こそが必要である。
① 国民健康保険料率と減免制度の府内“一本化”はせず、市町村が独自に設定することを基本とする。市町村が保険料抑制や減免などのために法定外繰り入れを行うことを認める。【最重点項目】
② 学資保険や児童手当の差し押さえなど行き過ぎた収納対策は行わないよう、市町村および大阪府域地方税徴収機構に通知する。【最重点項目】
③ 独自に保険料率・減免基準の設定や法定外繰り入れを行う市町村に対し、「2号交付金」等を減額することはしない。
④ 府一般会計からの法定外繰り入れなど、国民健康保険への府の独自補助を大幅に拡充する。
⑤ 国に対し以下の事項を求める。
(1) 国の責任で公費を1兆円投入し、高すぎる国保料を引き下げる。
(2) 福祉医療費助成へのペナルティを全廃する。
(2)福祉医療費助成制度の拡充、患者負担増中止
妊産婦の体には様々な変化が生じるため、特別な配慮を伴う医療が切れ目なく提供されることが重要である。現在、全国的には4県が独自制度として妊産婦医療費助成制度を実施しており、大阪府においても妊産婦への対象拡大が求められている。
また、乳幼児医療費助成は、東京、京都、兵庫などは通院に県として15歳まで補助しているが、大阪は就学前までと遅れている。この制度の拡充は、子育て支援や子どもの貧困対策、少子化対策として大きな成果が期待できる。
一方で、2018年度から老人、障がい者は院外薬局でも窓口負担が必要となり、また1か月の負担上限も大幅に引き上げられた。さらに65歳以上の、1級以外の精神障害および重度以外の難病患者などは、2021年3月までで補助を打ち切るとしている。これに対し、多くの高齢の障がい者や難病患者などから反対の声が上がり、先の9月府議会でも請願が採択された。
① 妊産婦医療費助成制度を創設する。【最重点項目】
② 乳幼児医療費の通院助成を小学校卒業までに拡大し、就学前の窓口負担は無料にする。
所得制限を2014年度までの年収860万円以下に戻す。
③ 65歳以上の、精神1級以外の精神通院医療対象者・重度以外の難病患者・結核患者への助成を2021年4月以降も継続する。
④ 重度障がい者医療費助成制度の患者負担は、2017年度までの、院外調剤含め1回500円以内・1医療機関あたり月3回目から無料・複数医療機関受診時は月2500円以内に戻す。
⑤ 精神病床入院への助成を2021年4月以降も継続する。
(3)子どもの貧困打開と子育て支援の抜本的強化
大阪の“子どもの貧困”は全国的にも深刻となっている。“子どもの貧困”対策は将来の労働力確保や経済の活性化にもつながるものであり、抜本的強化が必要である。
① 新子育て支援交付金は、成果配分枠・優先配分枠ともに当面倍加する。
② 母子家庭の母親の雇用は、就業支援に関する特別措置法に基づき、自治体や地元企業での正規雇用拡大を図るなど支援を強化する。
③ 就学援助について、認定基準を生活保護の1.2倍以上にするよう、また入学準備金を入学前に支給するよう全市町村と協議する。国に2分の1補助の復活を求める。
④ 子ども食堂を実施する市町村への財政支援とともに、朝食をとることのできない児童・生徒への朝食提供事業を大阪府として行う。また、実施検討する市町村への財政支援を行う。
⑤ 市町村と協力し、小中学校での歯科検診後の受診調査を行う。
(4)保育・学童保育の待機児解消
今年4月1日現在の府内の保育所待機児は589人と昨年より減少しているが、“隠れ待機児”は7,348人と高い水準にある。10月からは国において、消費税増税とあわせて「幼児教育・保育無償化」が実施されているが、保育料が免除されていた世帯で保育料以外の給食や延長保育の値上げ分がそのまま負担増となるといった例もある。
① 10月から独自徴収となった副食費を市町村と協力して無償化する。
② 民間社会福祉施設従事職員給与改善費補助金を再開するとともに、賃金引上げ等の保育士の処遇改善を国に強く求める。
③ 保育士確保をすすめていくために、保育士宿舎借り上げ支援事業の市町村負担の半分を府が補助する。
④ 子どもの安全と成長を保障するために、保育士の配置や施設の安易な規制緩和は行わない。
⑤ 企業主導型保育施設の実態調査を行い、適正な運営を行うよう指導する。
⑥ 学童保育に入所を希望するすべての子どもが入れるように、市町村と協力して拡充に努める。大規模化による詰め込みを解消する。
⑦ 子どもの放課後の安全を守るためにも、学童保育の安易な民間委託は行わないように市町村に働きかける。
(5)児童虐待対策の強化
府内の児童虐待相談対応件数は昨年2万件を超え全国最多であり、対策が急がれる。府の児童相談所「子ども家庭センター」の児童福祉司数は国基準の6割にも満たず、府は8年をかけて国基準まで増員するとしているが、抜本的に急ぐ必要がある。
① 子ども家庭センターの児童福祉司を遅くとも4年間で国基準まで増員するとともに、研修を抜本的に強化する。保健師、看護師、臨床心理士など専門職員を増員するとともに、正規職員化をすすめる。【最重点項目】
② 市町村窓口に複数の専門員を配置できるように補助制度を創設する。
③ 府警本部の児童虐待対策室や関係機関の連携強化を進めるために、保健師を派遣する。
(6)高齢者の医療・介護、介護予防の充実
府民の健康寿命は全国の中で低い水準となっている。また特別養護老人ホームの待機者は府内7千人以上で推移し、解消のめどはたっていない。
こうしたもとで国は後期高齢者医療制度や介護保険制度の改悪をすすめようとしている。府は2010年度から特養ホーム建設への補助を大幅に削減したが、こうした政策を改め、高齢者が住み続けられる大阪をめざすことが求められている。
① 広域型特別養護老人ホームへの建設補助金を2009年度の水準に復元(1床あたり270万円を371万円に)し、特別養護老人ホーム建設・待機者解消を計画的にすすめる。
② 介護職員の処遇改善を国に求めるとともに、府としても処遇改善制度を創設する。
③ 高齢者の介護予防、認知症予防、健康づくりを市町村と協力し抜本的に強める。公的機関への認知症診断タッチパネルの設置普及や「認知症対応人材」(認知症サポート医や看護師及び認知症サポーター等)の育成などをすすめる。
④ 高齢者住宅改造助成事業を復活する。
⑤ 国に対し以下の事項を求める。
(1) 75歳以上の医療費自己負担を2割に引き上げる計画を撤回する。
(2) 特別養護老人ホームへの入所基準を要介護1以上にするように求める。
(3) 要介護者の実際の生活状況に即していない介護認定が行われないよう市町村を指導する。
(7)地域医療、救急医療の充実で府民の命と健康を守る
国は「医療費適正化計画」にもとづき、病床や医療給付の削減を地方に押しつけている。こうした公的医療の削減・抑制政策を転換し、安全・安心の医療体制の確立へ、地域が力を合わせることが求められている。
① 厚労省が公表した、再編や統合の議論が必要とする公立・公的病院リスト(424病院・うち府内10病院)は、住民や医療現場の声を置き去りにして病院の再編統合を無理に進めるものであり、国に対し撤回を求める。
府として、地域医療後退につながる再編・統合は行わない。【最重点項目】
② 三次救急医療を担う救命救急センターの医師、スタッフ、病床数を増やし、必要な患者を原則受け入れられるよう体制充実をはかる。千里救命救急センターの補助金を増額する。
③ 大阪狭山市の近大病院移転跡地への病院誘致について、近大まかせにせず、300床規模・28科目の診療科を有した病院を開設するよう府として責任を持つ。
南河内二次医療圏に救命救急センターを開設する。
④ 住吉市民病院閉院にあたり、重度心身障害児の医療的ケア、レスパイト入院、短期入所など同病院が担っていた小児・周産期の医療機能が継続されるよう、大阪市とともに責任を果たす。そのさい、地元住民、医療関係者等への説明と合意形成を図りながらすすめる。
⑤ 無料低額診療の市町村の固定資産税減免分への補助制度をつくる。
(8)障がい者・難病患者支援を強化する
① 難病患者や精神障がい者を含め、障がい者の正規雇用を増やす。難病患者の府への採用制度をつくる。法定雇用率達成への小規模企業への支援を強化する。
② 放課後児童デイサービスは、事業者の指定時の立ち入り調査だけでなく開設後も定期的に調査を行い、人権侵害を防ぎ適切な支援が行われるよう指導する。
③ 難病患者の医療支援、行政窓口、交流・学習等の機能を併せ持った「難病センター」を設置する。
(9)生活保護の受給抑制は行なわず、適切かつ公正な実施をはかる
① 国に対し、生活扶助の削減中止、住宅扶助の復元を求める。
② 「扶養義務」の過大解釈による受給抑制や生活困窮者自立支援に名を借りた申請権の侵害などが無いよう、市町村及び管内福祉事務所への指導を徹底する。
③ 夏季及び年末一時金を復活する。
④ ケースワーカーの増員を国に求める。
2 一人ひとりの個性が尊重され可能性を伸ばす教育を推進する
教育は、 蓄積された文化を学び、他者との暖かい人間関係のなかで、一人ひとりが個性的に人として育つ人間形成の場でありその過程である。それを支える教員の仕事には、自らの仕事への自覚と、それと結びついた広い教養や深い専門知識・技能が求められる。そのための条件や環境整備のために最善を尽くすことが教育行政の役割である。その立場から以下を要望する。
(1)学習支援の強化
学習支援の主題は学ぶ喜びをつかむための“授業の充実”である。現場の自主性や独立性を保障し、過度の競争をあおる仕組みを改める。
① 子どもと学校に混乱をもたらす中学生チャレンジテストを廃止し、小学校5・6年生への拡大をやめる。【最重点項目】
② 35人学級を拡充している市町村に対し、府独自の少人数教育支援加配等を追加する。
③ 全小・中学校に専任の図書司書を配置する。
(2)学習環境の充実と子どもの安全
最善の学ぶ環境を提供することと安全を保障することは、教育行政の根幹であり、広域行政として府下すべての子どもたちに責任をもって推進するべきである。
① 小中学校、高等学校、支援学校、幼稚園、幼稚園型認定こども園の危険なブロック塀は2020年度中に撤去する。
② 通学路等の民間ブロック塀の撤去に対する補助を増額する。
③ 小中学校、高等学校、支援学校、幼稚園のすべての教室と体育館にエアコンを設置する。
④ 小中学校老朽校舎等の改修を促進するため、市町村による長寿命化計画作成を支援し、府独自の援助を行う。
⑤ 府内の公立、私立学校施設のアスベスト含有状況を再点検し対策を強化する。
⑥ 子どもの虐待の早期発見、いじめ、不登校などの早期解決のため、すべての小中学校に専任のスクールカウンセラーを配置する。
⑦ 中学校給食について、食育と位置づけ全校での全員喫食をすすめるために、府として補助制度を創設する。府内全市町村に給食費を就学援助の対象とするよう求める。
⑧ 私立学校経常費補助金を拡充する。その際、生徒1人当たり単価中心ではなく、実情に応じた配分とする。
⑨ 3年連続募集定員割れ高校を再編整備の対象とする府立学校条例2条2項は削除し、これ以上の高校つぶしは行わない。
(3)高等教育の充実
学問の自由を最大限に保障し、公的な文化・芸術・学問の発展に寄与する高等教育の発展に必要な施策を充実させる。
① 学生、院生、教授会をはじめとする関係者の意見をよく聞かないままの府立大学と大阪市立大学の統合、キャンパス移転はしない。
② 府立大学、市立大学の授業料無償化にあたり、学生や保護者の居住要件は設けない。
③ 府立大学運営交付金は、2006年度(131億円)の水準に戻し、教員・職員数を段階的に復元する。
④ 中小企業新規就業者の奨学金返済への補助制度を創設し、中小企業への新規就労、定着をすすめる。
(4)支援教育の充実
障がいのある子どもの教育は、その子どもが成長し発達する権利を保障し、障がいのある人々の「社会への完全かつ効果的な参加」を実現するものでなければならない。今後いっそう増加する、支援を必要とする子どもたちにふさわしい施策の充実のために以下を要望する。
① 特別支援学校の施設設置基準を府独自に設定するとともに、国に対して設置基準を制定することを求める。【最重点項目】
② 特別支援学校の増設を基本とした過密解消をすすめる。
③ 特別支援学校の通学区域の変更は、子どもの身体的・精神的実情に応じた配慮を行い、長時間登校を避ける。
④ 特別支援学校の通学バスに看護師を配置するとともに、必要に応じて保護者が同乗できるようにする。
⑤ 特別支援学校の看護師は定数枠外で配置し、処遇改善と増員を行う。高度医療サポート看護師を府内で5人以上に増員する。
⑥ 支援学級在籍児童生徒を元クラスでもカウントする“ダブルカウント”を復活し、教員配置を行う。
⑦ 小中学校での、医療的ケアを必要とする児童生徒への看護師配置に対する支援を後退させず、待遇改善や総合的な支援体制確立のための支援を強化する。
3 大型開発優先を見直し、安全、安心のまちづくりをすすめる
(1)不要不急の大型開発を見直し、中止する
高齢化社会の中で“買い物難民”が生まれ、地域のコミュニティバスや買い物支援など府民の生活の足を守る交通戦略が求められている。これらの声には答えずに、大阪・関西万博等を理由に、必要がなく安全性も担保されていない大型開発を進めることは府民生活にとってマイナスとなる。
① 人口減少が進み阪神高速道路の交通量減少が続くもと、阪神高速道路淀川左 岸線延伸部の建設(税負担1,800億円以上)は中止する。
淀川左岸線2期事業は安全性に不安のある事業計画であり、厳しく再精査して事業中止も含め見直しを行う。【最重点項目】
② 所要時間のわずかな短縮にしかならず既存地下鉄路線の利用客とも競合する、なにわ筋線の建設(税負担1,950億円以上)は中止する。
なにわ筋連絡線、中之島線延伸の検討はやめる。【最重点項目】
③ 高潮の危険をはじめ、多様生物の生息を脅かし、大型開発と連動して2,800億円以上もの税金を費やす夢洲での万博開催は再検討する。
④ 安全性、環境保全、エネルギーコスト、採算性など多くの点で問題があるリニア中央新幹線建設は中止するよう国に求める。大阪への延伸の要望は撤回する。
(2)府営住宅の充実
公営住宅法の目的は「健康で文化的な生活を営むに足りる住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸し、又は転貸することにより、国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与すること」と定められている。この精神に則り住宅を整備することは府の責務である。
「申し込んでも当たらない」「倍率が高い」「空き家が目立つのに募集がない」など、府民からは府営住宅をもっと増やしてほしいという要望が強い。住まいは人権であるという立場から、府営住宅を充実させていくために以下を要望する。
① 府営住宅削減計画を中止する。
府営住宅敷地の売却予定空き地に、府営住宅整備基金も活用した新たな府営住宅や、保育施設、特別養護老人ホームなどを建設する。【最重点項目】
② 入居者の立場に立った管理運営ができるよう、指定管理者の選定基準を見直し、入居のための改修費と維持管理費などを大阪府として負担する。
③ 空き家になっている住戸の入居募集を増やし、高い応募倍率を引き下げて入居者を増やす。
④ 地位継承の範囲を、生活保護基準に準じる低所得者にも拡大する。
⑤ 入居者の高齢化に伴う支援を行う。
(1) 中高層住宅へのエレベーター設置を急ぐ。
(2) 清掃や共用施設維持管理など府営住宅管理にかかる入居者負担を軽減する。
(3) 駐車場管理やふれあいリビングの運営など、入居者の活動を応援する。
(3)安全・安心の施策の推進
① 街頭犯罪、「振り込め詐欺」等特殊詐欺、危険ドラッグなどの対策を強化する。
② 府道に設置された歩道の段差解消を計画的に推進する。
③ 府道と市町村道が交わるところのカーブミラー等の設置は、明確な基準を設けて、責任を明確にしてすすめる。
④ 交番設置の要望が出ているところは、緊急性の高いところから設置する。
⑤ 市町村からの要望に基づき、信号機設置を急ぎ、交通弱者用信号機・高齢者等信号機を早急に増設する。
⑥ 病院や公共施設に災害時用の発電設備の設置をすすめる。
⑦ 障害者や高齢者の実態に応じた災害避難対策を具体化するとともに、福祉避難所のあり方についての具体的検討をすすめる。
⑧ 公共施設の改築、建替時のアスベスト対策を万全にする。
⑨ 老朽化した上下水道管の更新や耐震化は年次計画を定めてすすめる。
4 災害対策を強化し府民の生命と財産を守る
近年、想定を超える災害が後を絶たない。被災者の生活再建のために、人的、財政的支援の強化が今ほど求められている時はない。災害が起こってから支援の方向を決めるのではなく、すぐにでも対応できるように制度の整備拡充をすることが必要である。同時に、災害に備え、河川決壊等が起こらないように、府民の生活に根差したハード面での対策強化を求める。
(1)被災者支援の強化
① 国の防災・安全交付金を活用し、住宅の耐震化や被災住宅の改修が行えるよう制度を創設する。【最重点項目】
② 被災者生活再建支援法の抜本拡充を国に強く求めるとともに、当面府として大規模半壊以外の半壊と一部損壊も含めた恒常的な住宅被災者支援制度を設ける。
③ 木造住宅耐震改修補助制度の「1981年以前に建築された住宅」という要件を少なくとも2000年以前に緩和する。1軒当たりの補助総額が60万円以上となるよう、府の補助を増額するとともに、国に負担割合の引き上げを求める。
(2)豪雨災害などの対策
① 河川改修予算を倍加し、改修が必要な56河川について、国にも予算拡充を求めて改修テンポを速め、遅くとも10年以内に終える。
② 河川維持予算を倍加し、河川上流の森林整備や河川内の流木・土砂の撤去を強化する。
③ 市町村と協力して水害や土砂災害等の防災情報を住民に徹底するとともに、高齢者、障害者、難病患者らの避難場所確保、避難誘導、避難場所での配慮など災害時の支援を強化する。
④ 土砂災害特別警戒区域について、命と財産を守る対策をソフト、ハード両面から市町村とともに強化する。土砂災害特別警戒区域内の住宅の移転・補強補助制度の拡充を検討する。災害が発生する前に避難できる体制を強める。砂防関係予算をいっそう増やすとともに、必要な専門職員を確保する。
⑤ 雨水貯留施設の設置や下水道増補幹線の設置を市町村とともにすすめる。下水道管路の大規模化、更新など、国に対策強化を求める。府としても市町村とともに対策を強化する。
(3)南海トラフ巨大地震などの地震対策
① 南海トラフ巨大地震対策、道路・橋など既存インフラの改修など、国民の生命を守る防災・安全対策の予算の抜本拡充を国に要求する。府としても市町村や中小マンション業者への無利子融資など、補助制度を検討する。
② 長周期地震動対策について、国や専門家、民間企業と協力して対策を早急に検討する。
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