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国保「都道府県化」による加入者の負担増を許さないたたかいを 日本共産党大阪府議会議員団幹事長 くち原 亮 “払いたくても払えない”、高すぎる国保料が府民を苦しめ続けています。 「年間所得200万円の4人家族で国保料は48万円」など、大阪の国民健康保険料は全国的にも高い水準です。 安倍政権が2015年5月に強行した医療保険制度改悪法は、高すぎる国保料の解決には背を向けたまま、国保運営に対する都道府県の権限を抜本的に強め、医療費を強制的に抑制することが狙いです。 大阪府では、維新府政のもとで、国の改悪に輪をかけた改悪がすすめられようとしています。 1 国と大阪府がめざす「都道府県化」の問題点 (1)国の動き−都道府県を国保財政運営の主体に 国は、これまで市町村が担ってきた国保の運営を、18年度から都道府県が市町村と共同で担う方針を示しています。 とりわけ財政運営については都道府県が「責任主体」となるとされています。 具体的には、都道府県が市町村ごとの「標準保険料率」を算定・公表し、それを参考に市町村が保険料率を決定します。 都道府県は、市町村が行った保険給付に必要な費用を全額交付するとともに、市町村が府に払う「納付金」を決定します。 加入者からの保険料の徴収も、保険証の発行など資格管理も、これまで通り市町村が行います。 また国は、新たに「毎年約3,400億円の財政支援」を行うとしています。 まず、15年度から低所得者対策として「保険者支援制度」を拡充(毎年約1,700億円。国が半分、都道府県が4分の1、市町村が4分の1を負担)し、加えて17年度以降は「毎年約1,700億円の国費を投入し、財政基盤強化をはかる」としています。 しかしその中には、医療費削減や収納率向上などをすすめた自治体への支援=「保険者努力支援制度」など、加入者いじめにつながりかねないものが含まれています。 また、各都道府県に「給付増や保険料収納不足により財源不足となった場合に備え、都道府県及び市町村に対し貸付・交付を行う」ための基金をつくる(「財政安定化基金」。当初は全額国費、補填は国・都道府県・市町村が3分の1ずつ負担)としていますが、それと引き換えに、市町村が行っている、法律で定められた国保会計への負担金とは別の保険料抑制などのための補助=法定外補助を解消していくとしています。 (2)大阪府の動き−保険料も減免も「府内統一」 大阪府は、「都道府県化」にあたって保険料率を「府内統一」し、あわせて市町村が行っている法定外補助を大幅に減らすという方針を打ち出しています。 「解消すべき法定外補助は府内市町村合計で約125億円で、15年度からの低所得者対策1,700億円のうち大阪に来るのは約135億円。だから保険料は値上げにならない」というのが府の言い分です。 しかし現在は、地域の実情に応じて各市町村が、所得や世帯人数に応じて世帯ごとの保険料を定めています。 現状で保険料率を「府内統一」し、市町村の法定外補助をなくしていけば、国による財政支援拡充がされたとしても、これまで低所得者の保険料軽減や住民の健康増進に努力してきた市町村ほど保険料が大幅に値上げされます。 実際、国も当初は18年度から全国一斉に保険料率「都道府県内統一」することを狙っていました。 しかし多くの地域で保険料の急変を招くという理由で、将来的に全国で「都道府県内統一」することは目指すものの、18年度からの全国一斉実施を強制することは見送らざるをえませんでした。 大阪府は、この国の狙いを先取りして実施しようとしている極めてまれな府県です。 さらに、減免基準も原則「統一基準」にしようとしていることは重大です。 国保の減免は、法律で定められた保険料の減免以外にも、各市町村が、所得が大幅に減少した世帯などに対し、保険料を減免する制度を独自に設けており、国保加入者が受診時に窓口で支払う一部自己負担金にも同様の減免制度があります。 この基準を「府内統一」することは、よりよい減免制度を定めている市町村ほど後退することにつながります。 府は、今年秋頃までに府の「国保運営方針」案を取りまとめるとしています。 市町村に運営方針の強制はできないとしながら、従わない市町村に対しペナルティを課すことを示唆しています。 2 国の国保改悪と大阪で維新政治が果たした役割 1984年に「医療費の45%」だった国の負担を「給付費の50%」に削減して以来、国は国保への負担割合を減らし続けてきました。 府内市町村の国保会計の中で、70年代は収入の50%以上をまかなっていた国庫支出金は2014年度には24・5%にまで下がっています。 それに輪をかけているのが加入者の所得水準の低下です。 自営業者や農林水産業者の割合は年々低下し、無職が増えています。 事業所から社会保険に加入させてもらえない若い労働者の受け皿になっていることも指摘されています。 加入者の所得が下がっているのに、国の負担が減らされただけ保険料が値上げされ、払えない加入者が増えた分がさらに保険料値上げに転嫁される−この国保の構造的な行き詰まりは、「都道府県化」では悪化はしても改善することはありません。 維新府政はこの国の路線に一貫して追随し、「国保は相互扶助にもとづく受益と負担が原則」(橋下前知事・10年12月10日府議会本会議答弁)という立場で、国保においても悪政の先兵の役割を果たしてきました。 07年度には19億円だった大阪府の市町村国保への法定外補助を、14年度には12億円まで削減しています(図表1)。 府が不適切とみなす法定外補助をおこなう市町村にはペナルティを課し、収納率向上や医療費削減をすすめた市町村には褒賞を与える仕組みを全国に先駆けてつくりました。 累積赤字が多い市町村には「赤字解消計画」をつくらせ、保険料値上げや収納強化などで「都道府県化」までに累積赤字を解消するよう強要しています。 3 府民の生命と健康を守る国保再建を (1)府と市町村が加入者の負担増を防ぎ、保険料引き下げを まず、今回の「都道府県化」にあたって、保険料率の「府内統一」を市町村に押しつけず、各市町村が自主的に保険料率を定められるようにすることが重要です。 国の方針でも、都道府県は市町村ごとの標準保険料を算定し、それを参考に市町村が保険料率を決める、とされています。 市町村が府に納める「納付金」は、市町村ごとの所得や生活、医療の状況に応じて、市町村の意見を尊重して算定し、保険料値上げにつながる金額を押しつけないようにさせることが大事です。 減免の基準も、厚労省の担当者は「一本化については例示もしていない」「最終的には市町村が判断するものであり、市町村が条例で定めることができる」と明言しています(16年4月18日・党府委員会省庁交渉)。 府が「解消すべき」としている市町村の法定外補助は、保険料負担緩和と単年度決算補填を目的とするもので、14年度は15市町が約125億円支出しています(図表2)。 これをなくし府内加入者全体で負担するとすれば、1世帯8千6百円の負担増になります。 法定外補助については、堀内照文・日本共産党衆院議員の質問に対して厚労省が「それぞれの自治体で御判断をいただく」「制度によって禁止するというふうなことは考えていない」と答弁しています(15年4月17日・衆議院厚生労働委員会)。 保険料軽減目的の補助を含め、市町村が自らの判断でおこなう補助をやめさせる権限は府にはありません。 府の方針に従わない市町村に対するペナルティなどは言語道断です。 国による「毎年約3,400億円の財政支援」を、医療費削減・収納強化への褒賞や市町村の赤字解消・基金積み増しではなく、加入者の保険料引き下げや健康増進に結びつくよう、国・府・市町村に求めることが必要です。 (2)「都道府県化」を前提とした加入者負担増、市町村しばりはやめさせる 「都道府県化」といっても市町村の国保会計がなくなるわけではなく、累積赤字の解消や基金の解消などを市町村が強制される根拠はありません。 現在でも国や府は、赤字解消や収納率向上などを市町村と加入者に押しつけていますが、何の道理もありません。 府の交付金の交付基準から、赤字解消や収納率向上、医療費抑制、保険料増、法定外補助抑制など加入者負担増に直結するペナルティなどはなくすべきです。 学資保険や児童手当の差し押さえなど行き過ぎた収納対策、資格証乱発や短期証の「超短期化」などは、市町村と府が責任を持って改めることを厳しく求めることが重要です。 (3)国保を住民の生命と健康を守る社会保障制度として再建の軌道に乗せる 国保の構造的な行き詰まりを打開するには、何よりも国負担の回復で“払える国保料”にすることです。 日本共産党は、当面、国の責任で年間1人1万円引き下げることを提案しています。 急激な収入減に陥った人に加えて恒常的な低所得者を対象に加えるなど法定減免の拡充も必要です。 住民を医療から遠ざけて医療費削減を強制するのではなく、健診の推進など病気の早期発見・早期治療、介護予防、生涯スポーツ振興やルールある働き方で府民の健康を増進することが大事です。 これにより、結果として医療費抑制にもつながります。 非正規労働者の正規化や社会保険加入をすすめる、大阪のくらしと経済の活性化で国保加入者の所得を増やすなど、日本と大阪の政治をくらしと地域経済応援に転換させることが、国保を再建の軌道に乗せることにもつながります。 当面する参院選で共産党と市民・野党の共同を前進させ、自公・維新の社会保障改悪路線を転換しましょう。 |
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「大阪民主新報」2016年6月5日付より |
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