2010年8月31日
大阪府知事 橋下 徹 様
日本共産党大阪府議会議員団
団長 宮原 威
府独自に府民福祉充実と大阪経済振興に努力しながら、
国民の立場での経済成長戦略と地方自治・税財源の拡充を国に求めよ
−財政運営は、府民・職員の合意で−
1 「財政構造改革プラン(素案)」の撤回・再検討を求める理由
(1)予算要望でものべた、全国的にもひどい府民の「貧困と格差」の拡大、中小企業の深刻な現状の改善にとりくむ姿勢が全くみえないどころか、くらしと営業、地域経済悪化を促進するものとなっている。
(2)府の財政悪化の原因は、@借金にたよった開発優先の国からの押しつけとそれにのった府政運営の結果、借金返済が2020年代半ばまで続くことAナショナルミニマムに関わる福祉・教育の国補助金制度の廃止(一般財源化など)と、三位一体改革などによる約700億円の府財政へのマイナスB大企業独り勝ちの国の「構造改革」の結果、非正規雇用の急増、中小企業の倒産が増加、税収も増えなかったこと、などである。
こうした原因にメスを入れることこそが求められている。
@わが党がかねてから指摘してきたように、1990年代以降に国が府に押しつけ、府も独自にすすめた開発優先の負の遺産は莫大なものである。今も是正されていないこれらの事業の是正こそが急務となっている。
<表1> 関空2期工事への府の負担(2009年度まで)
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出資金
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貸付金
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起債額
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503.51億円
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498.39億円
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利息を含めた合計
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595.51億円
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598.51億円
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今後の負担見込み
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67.29億円
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90.60億円
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<表2> 府立国際会議場にかかる地方債償還状況 (単位:百万円)
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発行額
(A)
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元金償還額
(B)
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年度末残高
(前年度+A-B)
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利子支払額
(C)
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元利償還額
(B+C)
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1995年度
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673
|
|
673
|
0
|
0
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1996年度
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309
|
|
982
|
21
|
21
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1997年度
|
9,831
|
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10,813
|
29
|
29
|
1998年度
|
18,790
|
|
29,603
|
255
|
255
|
1999年度
|
36,553
|
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66,156
|
591
|
591
|
2000年度
|
0
|
|
66,156
|
1,111
|
1,111
|
2001年度
|
0
|
|
66,156
|
1,190
|
1,190
|
2002年度
|
0
|
56
|
66,100
|
1,190
|
1,247
|
2003年度
|
0
|
113
|
65,987
|
1,189
|
1,301
|
2004年度
|
0
|
113
|
65,875
|
1,187
|
1,299
|
2005年度
|
0
|
113
|
65,762
|
1,186
|
1,299
|
2006年度
|
0
|
113
|
65,650
|
1,175
|
1,287
|
2007年度
|
0
|
113
|
65,537
|
1,241
|
1,354
|
2008年度
|
0
|
5,702
|
59,836
|
1,188
|
6,890
|
2009年度
|
0
|
12,835
|
47,001
|
1,032
|
13,867
|
合 計
|
66,156
|
19,155
|
47,001
|
12,585
|
31,740
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<表3> 税収、建設事業費、国支出金+普通交付税の推移(大阪府「財政ノート」より)
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90年度
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92〜98年度平均(合計)
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平均の差(合計)
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実質税収
(収入)
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1兆3510億円
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1兆0576億円
(7兆4037億円)
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-2933億円
(-2兆0533億円)
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建設事業費
(支出)
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4327億円
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5959億円
(4兆1715億円)
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+1632億円
(+1兆1424億円)
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@国庫支出金
(収入)
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2951億円
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4081億円
(2兆8566億円)
|
+1130億円
(+7908億円)
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A普通交付税
(収入)
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0
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510億円
(3572億円)
|
+510億円
(+3572億円)
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@+A
(国からの収入)
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2951億円
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4590億円
(3兆2138億円)
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+1639億円
(+1兆1480億円)
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府債発行
(当年度収入だが、その後は借金。主に10年ごと元金返済で、30年完済。利払いはその年度から)
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1007億円
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4020億円
(2兆8142億円)
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+2913 億円
(2兆0394億円)
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府債残高
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91年度末
1兆3416億円
98年度末
3兆5878億円
|
+2兆2462億円
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(なお、「財政ノート」は億円以下は切り捨てになっており、端数が合わない場合がある)
A教職員、保健師の人件費などが一般財源化され、府の負担は増大した。また、三位一体改革などで府財源は削減された。この復元が重要である。
<表4> 国の三位一体「改革」などによる大阪府の財政削減
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2003年度
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2007年度
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差
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実質税収
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8333億円
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1兆1590億円
(うち税源移譲1280億円)
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+3257億円
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地方交付税等
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4525億円
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2439億円
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-2086億円
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計
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1兆2858億円
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1兆4029億円
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+1171億円
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●財源は1171億円増えたが、税源移譲にともなう大阪府の仕事は1650億円(2006年度末)増えており、
府の負担は差し引き479億円増加している。
そのうえ、2009年度からは法人事業税の偏在の「是正」の名目による減収がある(2009年度235億円)。
(3)1997年からの、消費税増税、医療・介護・障害者福祉などの連続的改悪と予算削減、労働者派遣法の改悪などの国の政策により、大阪の府内総生産は減少した。これが税収の後退をもたらした。
(4)くわえて大阪府は、1996年以来のあいつぐ「行政改革」によって、広域的役割(福祉充実と経済振興)の縮小・放棄をすすめた。これが府民の消費を冷え込ませ、中小企業の現状をいっそう深刻にした。
(5)これまでの府の財政再建計画は、以上の立場がないため、財政再建策としても繰り返し失敗してきた。その総括と反省がない。
2 国に経済政策、地方自治政策の根本的転換を求めることが必要
(1)正社員をふやす雇用改善や連続的な社会保障改悪(医療・介護・障害者福祉)を中止し、充実させるなど、内需拡大で日本経済を再生することを国に強く求める。
(2)「地域主権」の名目で、これ以上住民福祉と地方税財源を縮小しない。財源削減(三位一体「改革」での約479億円、税源偏在是正の235億円)を見直し、元に戻す。また、資本金10億円以上の大企業の法人税を、1997年当時の税率に段階的に戻す。さらに、年間所得1億円以上の高額所得者への増税など、財政危機打開の基本的解決を国に求める。
3 当面の府政運営についての日本共産党の基本的立場
(1)財政危機のもとでも、福祉と教育の充実や中小企業振興などに可能な限り最善を尽くす。福祉や教育分野などでは削減された施策の段階的回復をはかる。
(2)大型開発は、現在進行中のもの(関空2期事業、阪神高速大和川線、箕面森町、国際文化公園都市など)も含め、事業費・必要性・緊急性・環境への配慮などの面から根本的に見直す。
大企業に、社会的責任を果たさせるとともに、正社員確保や地域経済振興のために力を合わせることを求める。
(3)センチュリー交響楽団、国際児童文学館、「ワッハ上方」など文化施策の削減は、現時点でその結果を関係者参加で検証し、復元・充実を段階的にすすめる。
(4)市町村に身近なサービスの責任を押しつけることはやめる。公的責任を放棄し民間大企業などにゆだね、府民サービスの低下につながる市場化テストなどは見直す。
(5)財政再建策の策定にあたっては、原因にメスを入れ、情報を公開し府民的討論をおこない、府民生活の向上等を基本にすすめる。
4 主な事業等について
(1)「主要分析事業」などにかかわって
@市町村振興補助金については、市町村の自主性・主体性を損なわないようにする。
A私学経常費助成については復元をはかるとともに、高校授業料支援補助金の対象を拡大する。
B府立高校については、十分な調査・検証を行わず、また父母・府民、教育関係者の意見を聞かずに、拙速な再編統廃合は行わない。
C大阪府育英会による奨学金制度、とくに大学等入学資金貸付については、十分な調査・検証を行うとともに、国制度の改善を待たず改悪しない。
D福祉医療費助成制度については、国に制度化をはかるよう求めるとともに、府としても改善に努める。乳幼児医療については、小学校卒業までの対象年齢に引き上げ、所得制限の撤廃など、市町村とともに計画的に改善をすすめる。
E中小企業向け制度融資については、金利上昇を招くとともに、大阪経済と地域社会を下支えする多くの中小・零細業者を切り捨てる、大阪府による預託廃止は行わない。損失補償に対する府の負担割合縮小はおこなわない。
F小規模事業支援事業・経営力向上緊急支援事業については、十分な調査・検証を行うとともに、商工会議所・商工会など関係者との協議を尽くす。
G府営住宅のあり方については、高い応募倍率が続いている事態(2010年6月募集の一般世帯で26.1倍)を改善するため、公営住宅法の趣旨を踏まえ、管理戸数の維持・拡大をはかる。
H警察職員待機宿舎の整備を計画的にすすめ、安全・安心の確保をはかる。
I道路・河川・橋梁など都市基盤については、災害に強いまちづくりを重視し、安全・安心の確保を優先する。
(2)その他の重点事項について
@国保料の「統一化」はやめ、市町村国保会計への府独自の補助制度を拡充する。
A来年度から小学3年、中学1年を35人学級にし、2016年度までに小学1・2年の30人学級、小学3年〜中学3年の35人学級を実現する。
(3)個別点検事業、歳入確保策、出資法人や公の施設等については、十分な調査・検証を行い、景気回復をはじめ府民福祉の増進に沿った対応を行う。産業技術総合研究所、環境農林水産総合研究所の独立行政法人化は行わない。
(4)職員配置・人件費については以下を基本にすすめる。
@児童虐待対策のための専門職員、保健師など、福祉・教育をはじめ府民サービス分野については職員充実を検討する。とりわけ教育現場などでの非正規職員の待遇改善をすすめる。
A知事・副知事など特別職の給与削減は継続を検討する。
B一般職員については、復元を基本とし、労使協議をふまえながら検討する。
(5)府議会議員の報酬のさらなる削減、政務調査費の使用内容のいっそうの透明化と金額の検討をすすめる。
以 上
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