事実隠した府庁WTC移転案
どこからみても道理なし
負担額試算・防災拠点・まちづくり
日本共産党大阪府議会議員欄(宮原威団長)は9月29日、府庁内で記者会見し、「府庁舎へのWTC移転案を、事実を府民と府議会に知らせることなく、一方的に押し付ける橋下知事の提案は撤回するよう求める」との見解を発表しました。そのポイントを紹介します。
現庁舎耐震改修が実は安く実現可能
橋下知事は、「WTC移転こそ、庁舎問題を抜本的に解決できる唯一の選択肢」などと叫び、移転案が最も府民負担が低いかのように説明。府のシミュレーションでは財政負担額を耐震補強案が512億円とし、移転案は409億円となっています。
日本共産党大阪府議会議員圃は府の財政シミュレーションの問題点を指摘しつつ、公平に試算した上で、「耐震補強案が一番府民の負担が少ない」ことを明らかにしています。
移転案は土地活用収入として、大手前の府有地が1平方b当たり97万円で売れることを前提にしています。また、移転に伴って増える職員の通勤費(単年度1.8億円)は計上していません。
現庁舎では部局が周辺の民間ビルに分散しています。今後職員数の減少が予想されるのに、耐震補強案は賃借料を現行のまま計上しています。
こうした点を基に同議員団は、土地活用収入が1平方炉当たり50万円と想定し、民間ビルの賃借料の減少を加味して計算し直したところ、耐震補強案は496億円、移転案は637億円と逆転しています。
災害時の職員参集 大手前が断然有利
府庁舎に欠かせないのが防災拠点としての役割で、その大きな決め手となる職員の参集体制。しかし、WTCは近く予想される東海、南海・東南海地震や上町地震の防災拠点にふさわしくないと見解は指摘しています。
大阪府・大阪市の「咲洲の防災機能に関する検討報告替」(ことし8月)では、災害時の液状化による影響を認めつつ、「主要幹線道路に沿って歩行や自転車が通行することは一部押しつつも可能」としています。
さらに南側からWTCに参集する「佳之江ルート」では高潮や津波の影響が指摘されているのをはじめ、安全上の問題は山積しています。
府がことし2月府議会に出した資料では、「半径5キロ以内に在住する職員」はWTCの163人に対し、現庁舎が879人と5倍以上。「徒歩2時間以内に参集できる職員」はWTCの80人に対し、現庁舎は400人と5倍。「徒歩や自転車による参集」という想定では、現庁舎の方がWTCよりはるかに容易です。
関西財界が求める無責任な湾岸開発
大阪市は「テクノポート計画」に98年までに9300億円を投入しましたが、中核プロジェクトのWTC、ATC(アジア太平洋トレードセンター)は失敗。昨年9月に平松邦夫市長は「終結宣言」を出し、ことし2月の「咲洲プロジェクト報告書」では右肩上がりの需要見通しの甘さを失敗の原因とし、今後は「新都心構想」を見直すとしました。
関西経済同友会は6月、大阪府と大阪市に咲洲のグランドデザイン計画の策定を求めましたが、そもそも「テクノポート計画」は大阪市とゼネコン、銀行が進めたもの。開発の失敗は関西財界の責任ですが、その反省や総括はありません。
見解では、「いま大阪市がやるべきことは、咲洲やその周辺の住民のための街づくりや震災対策である。そのこととWTCへの府庁移転とは何の関係もない」ときっぱり指摘しています。
大手前の街づくりなどで積極的提案
見解では、府民と府議会で今後議論を深めるべき問題として3点を提起しています。第1は、大手前地区の街づくり。太古の昔からアジアとの交流が続いてきたのが大手前地区。難波の宮跡、大阪城と緑豊かな大阪城公園があり、大阪歴史博物館も立地しています。
見解は、これらを生かして「府民・国民・アジア諸国民の安らぎと交流の拠点として、大きく発展する可能性を秘めている」と強調。現庁舎の跡地売却で高級マンションなどにすべきでないと主張しています。
第2に、WTCビルの問題。府は中央防災会議が想定する3つの地震波を想定してビルを耐震補強する方針です。これに対し見解では、府危機管理室や国も参加した「大都市大震災軽減化特別プロジェクトしの報告など、最新の研究成果を踏まえて研究を進める必要があるとしています。
また、咲洲地区の各埋め立て地域がどれくらい地盤沈下しているのかについての十分な資料もありません。咲洲トンネルの耐震対策が完了しても、地盤沈下について「継続調査が必要」(国土交通省)となっていて、今後も調査と対策が必要だと指摘しています。
さらに、住民の要望の強い救急機能のある医療機関や、図書館の建設こそ、大阪市がやるべきとしています。
第3に、移転案に盛り込まれた成人病センターの大手前への移転について、現地建て替えの可能性や移転の是非を含め、慎重に議論すること.を提案しています。
2009年10月4日付「大阪民主新報」より