WTC移転 ずさんな防災体制浮き彫り
2月府議会の大争点に
防災・府民生活置き去りか
「“城替え”をなんとしてもやりたい」―橋下徹知事がWTC(ワールドトレードセンタービルディング)への府庁移転を急いています。24日開会する2月定例府議会に、移転のための条例案と関連予算案を提案する方針。しかしこのまま、「初めに移転ありき」で突き進んでいいのか、ますます問われています。
次々に問題点が
大規模災害が発生したときの職員の参集体制を定めた府防災計画。昨年12月の府議会決算委員会での日本共産党・小松久議員の質問に、橋下知事は「防災計画は見ていない」などと答弁するなど、当時の移転案のずさんさが浮き彫りになっていました。
ことし1月の移転構想案では「防災対策確保」に言及。しかし震度6弱以上の地震など「非常3号配備」(職員全員が対象)では、徒歩で2時間以内に参集できるのは現庁舎の400人に対しWTCは80人と、わずか5分の1。その対応策も「自転車を活用した参集」「シャトルバスの確保」などにとどまり、府自身の検討結果でWTC移転案の欠陥を証明した形になっています(表1)。
地上55階建てのWTC。超高層ビルは、大地震に伴ってゆっくり揺れる「長周期振動」の被害が警告されています。東南海・南海地震を想定した府の調査結果が2日明らかになりましたが、中・低層階で、はりの変形やエレベーターが破損する恐れのあることが分かりました。
防災拠点として使用するためには改修費18億5千万円が必要で、府は「倒壊の恐れはない」などと説明。しかし、府が調査を依頼したのはWTCを設計した会社。その調査でさえ、地震に弱いことが明らかになったのです。
府の役割は放棄
橋下知事は「不便なところを便利にするのが政治」と繰り返し語っています。しかし、府民の利便性にとって現庁舎が優れていることは、府の構想案でも明らかです。
そもそも自治体庁舎の位置については、地方自治法第4条が「住民の利用に最も便利であるように、交通の事情、他の官公署との関係等について適当な考慮を払わなければならない」と規定。位置の変更について同法は出席議員の3分の2以上の同意が必要と、通常の議決(過半数)よりハードルを高くしています。
「10年後に大阪府を解体し、関西州実現」を掲げる橋下知事。その象徴がWTCへの府庁移転だと言います。
知事就任1年目の「毎日新聞」の世論調査(1月19日付)では、69%と高い支持率の一方で、「取り組みが遅れている分野」は「医療・福祉」とした回答が28%に上っています。
同じ日に開いた政治資金パーティーて橋下知事は「都道府県は解消し、より広い広域行政体である道州と、身近なサービスを提供する市町村を分ける」と改めて強調。それが福祉4医療費助成制度での自己負担増など、医療・福祉に果たす府の役割を投げ捨てていく府政運営につながっています。
財界が見え隠れ
移転構想案ではWTCに移転した場合の現庁舎の跡地活用についても「青写真」を描いています。府庁周辺の大手前地区の東側は「公的エリア」として、1926年建設の歴史的建造物である現本館などの一部を保存活用するとしています。
谷町筋に面した西側の区域は「民間活用エリア」。「民間事業者の意見」として「住宅・ホテル用地としての価値がある」「(オフィスは今後)大量供給が計画されており、積極的な誘致が必要」などとしています。
「民間活用」をめぐっては関西経済同友会が昨年4月に橋下知事に出した「提言」で、「民間の智恵と資本を最大に活用すべき」と強調。「庁舎エリアの府有地が極めて効率の悪い低未利用地として放置されてきたのは、『民間の経営感覚』からすれば大きな機会損失」とまで述べて、庁舎問題で「1年以内に結論を得るべき」などと要求していました。
「(WTCに来るのは大阪)市庁でも府庁でも構わない」(中野健二郎代表幹事)というのが関西経済同友会のスタンス。WTC移転を急ぐ橋下知事の背後には、現庁舎の跡地利用をめぐる関西財界の狙いも見え隠れしています。
2009年2月8日付「大阪民主新報」より