大阪府同和問題解決推進審議会「提言」
新たな装いで同和行政の継続を狙う
阿部誠行日本共産党府議団幹事長に聞く

 大阪府同和問題解決推進審議会(会長=元木健・大阪大学名誉教授)が、同和行政の継続を求めた提言「大阪府における今後の同和問題解決に向けた取り組みについて」をまとめ、2月25日に橋下徹知事に提出しました。提言の内容や問題点について、日本共産党大阪府議会議員団幹事長で、同審議会委員の阿部誠行さんに聞きました。

■ 同和行政への批判を恐れて

 ――提言を知事に提出することを決めた2月19日の審議会では、提言案に反対されましたね。

 阿部 はい。この間、大阪市の飛鳥会事件や八尾市の恐喝事件など、「部落解放同盟(解同)」幹部による不正・腐敗事件が相次ぎ、同和行政の終結を求める声や、「解同」の運動のあり方に府民の批判があらためて広がっています。

 今回の提言は初めの部分で、こうした一連の事件によって、「同和問題解決に向けた取り組みに対する府民の信頼が大きく損なわれ」ているとのべています。しかし、事件の根本原因には一切触れないまま、「これまでの取り組みの成果が覆されかねない状況」だとして、引き続き、「同和問題解決に向けた実効ある取り組みを推進していく必要がある」と強調しています。

 提言の狙いは、同和行政への府民批判が広がることを恐れ、いわば「新たな装いして同和行政を府に続けさせることにあり、到底容認できないものです。審議会で提言案に反対意見を表明したのは、民主主義と人権を守る府民連合(民権連)の東延委員長と私だけで、賛成多数で提言として府に提出することを決めてしまいました。

■ 暴力や無法はこれまでから

 ――提言の問題点について、詳しく聞かせてください。

 阿部 まず、「解同」による不正・暴力事件は、最近始まったものではありません。「窓口一本化」など、同和行政が当初から「解同」の利権の対象となってきました。吹田市や羽曳野市では、同和行政の「窓口一本化」を要求して、「解同」が市長に暴力的圧力をかける事件にまでエスカレートしました。

 19日の審議会で私は、大阪市の矢田事件(69年)や兵庫県の八鹿高校事件(74年)など大阪や全国各地で荒れ狂ってきた「解同」の暴力・無法について、具体例を挙げて指摘しました。

 私自身も、吹田市で中学校教師をしていた72年、「解同」が教育介入した吹田2中事件で、全校生徒の面前で暴行を受けました。年度途中の9月に5人もの教師が強制配転されました。

 不公正・乱脈な、ゆがんだ同和行政が、こうした事件の温床になってきたことは、私たちが繰り返し指摘してきた問題です。

■ 基本的に解決した同和問題

 ――同和行政の歴史や同和問題の現状をどうみますか。

 阿部 提言は、「同和対策事業の意義・必要性等について説明不足」「ソフト面の取り組みに様々な課題を残した」などと述べています。

 実際はどうでしょうか。69年以来、33年に及んだ同和対策事業は、府と市町村で22兆8千億円を投じて、環境改善や、就学・就労・啓発など、さまざまな施策が進められ、今日ではいわゆる「同和問題」は基本的に解決しています。

 問題は、「解同」の「窓口一本化・府間促方式」で、同和行政そのものに差別行政が持ち込まれ、公正・公平でなければない行政として当たり前のことが、大きくゆがめられてきました。これこそが「様々な課題」を生み出した原因です。

 提言は、同和行政を継続する根拠として、旧同和地区の生活保護率の高さや、児童生徒の学力や大学進学率が府全体の水準と比べて低いこと、インターネット上の差別事象などを挙げています。

 しかし、それらの実態が、部落問題に起因するかどうかについては、何一つ実証されていません。まさに予断と偏見に基づいた考えと言わざるをえません。

 ところが提言は、さらに「同和地区から出ていった人の中にも同和地区出身であることに起因する課題を抱えている状況がみられる」とまで述べ、どこまも「同和」のレッテルを張り続けようとしていますが、これこそひどい人権侵害です。

■ 貧困と格差あらゆる分野に

 ――生活困難や低学力は、特定の地域だけにみられる固有の事象ではないということですね。

 阿部 その通りです。そもそも今日、貧困と格差が広がる中、大阪府の失業率は5・7%と沖縄に次いで全国2位。生活保護需給率は25%と全国1位など、府民の暮らしは全国ワーストクラスです。年収200万円以下の労働者が400万人とも、500万人とも言われる中、経済的格差が学力格差を生み出していることも指摘されています。

 男女差別、思想差別、日雇い派遣など雇用の場における差別扱いなど、人間の尊厳を奪うものです。暮らし、労働、教育など府民のあらゆる分野で広がっている貧困と格差の根本的な解決こそ、政治に問われている課題です。

■ 今こそ必要な同和行政終結

 ――橋下知事は、「提言の内容を十分に検討し、同和問題の一日も早い解決を目指したい」と表明していますが。

 阿部 「今後の同和行政解決に向けた取り組み」について「提言」は、「コミュニティづくり」「教育啓発・相談」「関係機関との連携」など、同和行政の継続を求めています。

 府は「解同」の要求に基づいて、01年度末で国の同和対策特別法が失効した後も、一般施策の中で同和対策事業を続け、市町村に「同和問題解決に役立つ一般施策」を押し付けてきました。「人権ケースワーク事業」など特別法失効後に新たに実施した事業もあります。

 しかし府政に今求められているのは、一切の同和行政を終結し、憲法・地方自治法をはじめとする法令に基づき、府民の暮らしと基本的人権を守る施策を進めることです。

 同和行政終結こそが、同和問題を解決する最も確かな道であり、継続することは、むしろ解決を阻害することになります。橋下知事は、ただちに「同和行政終結」宣言を行い、大阪府人権協会(旧大阪府同和事業促進協議会)はじめ「解同」関係団体への多額の補助金や事業委託は廃止し、「解同」系団体が主催する研究会・研修会への府職員の公費派遣をやめるべきです。


2008年3月9日付「大阪民主新報」より