|
近く審議が始まる新年度政府予算案。注目される一つが関西国際空港二期事業の施設整備費です。「むだな公共事業」と批判が強く、財政制度等審議会が「施設整備費の計上は国民の理解は得られない」としました。にもかかわらず、谷垣禎一財務相と北側一雄国土交通相が「満額計上」で合意した経緯があります。二期工事の続行は大阪府などに新たな負担をもたらし、いっそう福祉が後退するのではと不安は強まるばかりです。
予算案に計上された施設整備費は３００億円（国費２００億円）。２本目の滑走路と誘導路などの建設費です。
両大臣が「満額回答」の条件として合意文書にかかげたのは「安定的な経常黒字の確保」です。確かに関空会社には、今年度９月の中間決算で初の黒字となりました。
しかし、内実は政府の補給金４５億円（年間９０億円）がなければ赤字なのです。
合意文書で目標にした発着回数年間１３万回も、実現の見通しは暗いものです。０３年度は約１０万回、今年は１１月までで、９万４０００回。これが好転する気配はなしです。もともと現滑走路は１６万回の発着能力があり、たとえ、目標の１３万回を達成したとしても滑走路は１本で十分です。
高まる「ムダ」批判をかわそうと、政府がひねりだしてきたのが、ことし４月からの大型機の伊丹空港乗り入れの段階的禁止です。対象になるのは、伊丹－北海道、沖縄への長距離便と一部の東京便。政府は「騒音対策」といいますが、国内線の減便が続く関空への救済策との見方がもっぱらです。しかし、これも、航空各社が０６年の神戸空港開港を見込んで神戸－札幌、沖縄便の就航を固めています。「救済策」に疑問符がついています。
「国民の理解は得られない」という財政制度等審議会の意向表明もあって、施設整備費をめぐっては、予算案計上にきびしい見通しが一般的でした。
しかし、ふたを開けてみれば満額回答。これは当初から予想されたこと。北側国交相は就任早々「２本目の滑走路についてはぜひ実現を進めていきたい」と二期工事推進の大キャンペーンをはっていた財界の願いに全面的にこたえました。
キャンペーンの推進母体は昨年２月に結成された「関西３空港懇談会」。３空港とは関空、神戸、伊丹です。同懇談会は、座長が関経連会長で、国土交通省航空局長、大阪航空局長、大阪・兵庫両知事、大阪・神戸両市長がメンバー。国、財界が一体です。「満額回答」に関西経済団体連合会は「誠に喜ばしい」とコメントまで発表し、「訪日観光客の倍増をめざす」とぶちました。
たまらないのは府民です。それでなくても府は、２期事業に今年度まで利子込みで１０４５億円、さらに来年度からの２年間に約１２５億円を負担します。５兆円近い借金をかかえ沈没寸前の大阪府財政に重くのしかかります。
日本共産党府議団の宮原たけし団長は、「国としての航空政策もなく、当面必要性のない２期事業に巨額の予算を注ぎこむ一方で、大阪府はわずか６億円の生活保護家庭（約２０万人弱）への夏・冬の一時金を廃止しました。さらに、増えても数億円の府立高校授業料の減免制度改悪を検討しています。こんな逆立ちした財政運営を進める国政と府政の転換こそ必要です」と語っています。
２００５年１月７日付「しんぶん赤旗」より
